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『暗黒時代』

これは

まだ私が今までの私として

ことばを探し彷徨っていた頃の

ちょっと恥ずかしい記録である

彼が言った

「ピリオドを打ってみようと思う」

私は部屋の中にふおっと浮いた埃を目で追って

「どこに」とだけ尋ねてみた


ほんとはね 知ってたよ

ピリオドを打とうとしているのは

この場所 この瞬間 この気持ち


だけどほら 寂しくてさ

プライドを砕いていくのはやっぱ

痛そうで 躊躇うし 手も震える


アイスピックで打つピリオドは

どのくらい血を流させるのかな

鮮やかな赤に染まる両手を

想像するだけで胸が苦しい


糸切りハサミで示すピリオドに

半返し縫いで近付いてく針と糸

上手く玉結びできるといいな

できなかったらカッコ悪いし



私は聞いた

「このピリオドの先は何になるの」

彼は残り一個のベーコンアスパラをかじってから

「おんなじ」とだけ答え微笑んだ


ほんとなら 信じたいな

何度も打ってきた黒いマルだから

始まりと 終わりの 目印なだけ


握りしめていたアイスピックを

奪ってキスしてペンに替えるの

清らかな白に似てる世界で

黒いマルだけが彼のシルシ


「おんなじだ」

「おんなじだろ」

「何が変わったの」

「何だと思う」

「わかんない」

「そうさ」

「つまり」

「変わらないよ」



ピリオドを打ったところで



ほんとだね 途切れない

これは今まで 

此処までずっと

長く織り成してきた



あたしだけの コンテクスト



ペンに持ち替えたアイスピックの弱さが襲う

彼の熱に溶かされた氷を見て要らないと気付く

もう一度 もう一度だけ 黒いマルを打って


続きのことばは もう決まったよ

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