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庭の池の人魚  作者: 八千
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出会い

私は目を出ますと見慣れない天井や布団があった。隣には姉と弟が寝ており、ひいじいちゃんの家に泊まっていることを思い出した。

遊びに来たのではなくひいじいちゃんの葬式に出るために私達家族は、遠く離れた町から参加しに来た。

そして、今日、親戚やひいじいちゃんの友人達は別れを悲しんでいた。姉や弟、いとこたちは悲しんで泣いたが、私は泣かなかった。泣けなかった。

そんな私を母と父は困った目で見て、親戚やひいじいちゃんの友人達から、優しくない子や冷たい子と言われた。寝る前に姉から無理してでも泣けばよかったのにって言われた。それでもあの時、泣けはしなかった。

どうして、泣けないのだろうかと、そう考えてるうちに眠ってしまったが、夜中に目を覚ましてしまった。

壁の時計を見ると夜中の2時で、光は窓から差し込み月の光だけだった。

私は目を閉じて眠ろうとしたが日中の言葉や姉の言葉を思い出し、眠れなかった。気分転換に水を飲もうと部屋を出た。

ひいじいちゃんの家は映画にも出てきそうな日本家屋である。しかも、部屋数が多く敷地や家自体も広かった。昔、地主の他に商売もしていて、裕福だったと葬式で話している親戚の人達の話を盗み聞きした。

寝ている人を起こさないように足音を立てずに廊下を進み、居間を通り、台所に入った。蛇口をひねり、水を出して、飲んだ。その際、水の音と夏の虫の音しか聞こえなかった。私は蛇口を閉めて、水が出ないか確認し、部屋に戻ろうとした時、まだ、水の音と虫の音が聞こえた。

「あれ、閉めたよね」

もう一度確認したが、蛇口から一滴も水は出ていなかった。もう一度耳をすますと音は外から聞こえた。

「庭の池から聞こえるのかな」

カエルかなと思い、私は少しの好奇心で庭の池が見える縁側まで来た時と同じように足音を立てずに向かった。

庭の池は大きく、深かったがいつも綺麗で、葉っぱや白い花が浮いている。何もいないがひいじいちゃんが大切にしてる池で、ひいじいちゃんが子供の頃からあるとお父さんが話してくれたことがある。

縁側に近づくにつれ庭の池に誰かがいるのが見えた。一歩近づくとその人は庭の池の石に座っていた。また、一歩近づくと月の光でその人が赤い和服と赤髪の人だ。そして縁側に着くとその人は振り返った。白い肌で黒い瞳の美しい人だったが、その人の顔や手に所々鱗があり、足の代わりに尾びれがついていた。その人は人間ではなく、人魚だった。だけど、私はそれよりも、その人が涙を一雫流す悲しそうな顔が胸をさした。


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