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ヌキの矢
「あ~らよっと」
ビシュッ。天に矢を放つヌキ。
「ふんふんふーん。あ~、おらあの矢は百発百中~にげられなあい~」
お気楽な野郎だぜ。まったく。まあ俺の担当にふさわしいぜ。俺は運がいい。
「おー。逃げ~る小鹿は頭がいい~けど~」
また、最後のフレーズに行きつく。もっと歌のバリエーションねーのか。
遠くでぎゃっ、と言う声が聞こえる。小鹿が流石に止まると思ったら止まらない。がさがさと再び聞こえた。可哀そうに。逃げられる訳ない事を知らない事は罪とも言え、笑えるが。これは狩りではなく、必然的な死を与える行為だ。
「たっのし~。元気な元気な小鹿ちゃん~おらあは元気になるのだあ」
矢を番えて、再び天に放つ。
ヌキはしばらく耳を向こうに向けた。おや、叫び声は聞こえない。
「おもしろい~、おらあはラッキーだあ」
歌いながらも、ヌキの目はらんらんとしていた。
狩りになった。