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ア太郎出立す

だらだら



 ア太郎は息を吹き返していた。死の間際を乗り越えた彼の目に疲れはあるものの、生きる活力が垣間見える。


「おっけ……整理しよう」


 暗い瞳でじっと地を見つめ、ぶつぶつと呟き始めるア太郎。どうやら言葉の通じる生き物がいる事から、村や、集団などは存在している事を推測したようだ。

そして、考えがまとまったのか、身体にきれいな泥を塗り始めた。おそらく血の臭いを落とそうと言う考えなのだろう。また、森に紛れる為か。


「あんのトカゲ、ギャハだっけ、はこの辺りにいるって言ってたな」


 ギャハの言葉を覚えていた。ア太郎は右手に目をやる。キノコの茎があり、一見すれば手首がないだけにも見える。そして、その断面からは小さくキノコの傘が生えていた。


「なるほど……逃げるか」


 キノコが育てばまたギャハが来るのであろう。会いに行くのはあまり得策ではないかもしれないと考えた様だ。


「武器……カミソリ」


 自分が落としたカミソリを探し、拾う。汚れていたが、使えない事はない。



「川を探すのが、定石。ギャハはこの辺り。まずは離れて川。ばけもんは……覚悟しよう」


 とほほ、と項垂れるも、彼は歩き始めた。ギャハが去っていった方と、ゲバラが去っていった方ではない所。ギャハを北、東をゲバラとしたら、西だ。


 歩くア太郎。音を極力出さない様に。歩みはゆっくりだが、辺りの音やにおいを確認しながら歩いていく。


 しかし、と私はここで書きたい、なんて思ったら。


 ビュッと高速で飛んでくるものがあった。ア太郎はその音に反応し、身を翻す。も、左肩にぶっ刺さり、ボっという音とともに左肩から矢じりが飛び出す。


「あがっ!」


 ここに落ちてきたばかりのア太郎であれば、心臓に突き刺さっていただろう。しかし、なぜかア太郎はそこまで驚いていなかった。


「~っ、くっっそお! 五体満足なんてもういらねーんだよ! いてぇのはもう許容範囲だボケ!」


 だそうだ。意外とやるものだ。今回結局負けるのは問題はないが、生き残ってくれる分には構わない。生きて居られるなら、生きて損はない。


がさり、がさり。


「はっはっは」


 音はもう気にしない。木が多い方へと走るア太郎。

 ア太郎の行動は正しい。向こうはこちらを見えている。木々で射線を限定するのはいい。また近接は悪手。なぜならア太郎には戦闘経験がない。それに武器はカミソリ。弓を持つ相手ならば小型でも近接用の武器だって持っているはずだ。


 但し。それは逃げる先に、避難する場所や、策を弄している場合に限るが。



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