フライドポテトを作りました<ライラ視点>
よくママにあーんしてもらっている私は、プリンのときと同じく、ついついフライドポテトを頬張ってしまっているわ。もぐもぐ……
本当に強引よね。
でも、ポテトを食べさせているコギーの顔は、愛する者だけに向けられるであろう優しげな微笑み。
……しょうがないからもう少しだけ付き合ってあげてもいいわよ?
もぐもぐ……
もぐもぐ……
それにしても、他者が指で摘んだポテトを口に入れるなんて、私以外の貴族は絶対にやらないでしょうね。
もしかすると平民でもやらないかもしれないわ。
コギーは生まれたときからマクベイン家に出入りをしている、貴族と平民、どちらの習慣も持ち合わせた異端児。
その所為なのか、奇異に見える行動を取ることがあるわ。
だけどそれが合理的であったり、面白かったりして、我が家では受け入れられることが多いの。
フライドポテトを手掴みで食べるのも、これが一番美味しい食べ方です! と言って、フォークを使って食べていたお父様の前でいきなり実践したわ。
それを見てマネをしたお父様は、これは乙だな…… と頷き、手掴みを導入したの。
あのときは流石に驚いたわ。まさか手掴みを認めるなんて。
お父様はコギーに少し甘いのではないかしら?
私のママに対する呼び方も、趣があると許してくれてもいいじゃない……!
そんなことを思いながらもぐもぐ。
もぐも……んぐ!?
「……コギー!?」
「ん? なぁに?」
もしかして気づいてないのかしら?
いま一瞬、あなたの指が私の舌に触れたのよ……?
「……なんでもないわ。早く次を頂戴」
冷静になれ私。
さっきから唇には時々当たっていたじゃない。
舌先も誤差よ、誤差。
もぐもぐ……
もぐもぐ……
………………
もう一度だけ。
今度はしっかり味わいたいわね……
気づくとお皿のポテトは残り少し。
私は意を決して、コギーの差し出したポテトの先にある指を見つめて、狙いを定める。
一定のリズムで短くなっていくポテト。
……終盤、私は突如としてスピードを速め、ターゲットへと吸い付いた。
チュパチュパ
「うわ! ライラ!? ……指! それ指!」
知っていますわ。温かくて、塩気も相まって何時迄も舐めていたいコギーの指。
ぺろぺろ
「ライラぁ! ライラってばぁ!」
……惜しいけれど、ここは引き際が肝心ね。
「あ……ごめんね、コギー。考え事に夢中で気づかなかったわ」
口を離し、平然を装う私。
「もう……びっくりした! 無意識に指をしゃぶり出すなんて、やっぱりライラは甘えん坊さんだよ!」
怒ったコギーも偶には良いわね。
美味しかった。また一緒に食べたいわ。