チョコを作れませんでした
この世界にはチョコレートが既に存在する。
しかし、チョコと言ってもざらざらドロッとした飲み物であり、たまに物珍しさから飲まれている程度だ。
そんな哀れなチョコ事情を改善すべく、私はココアと固形チョコレートの開発に乗り出した!
◇◆◇◆◇
「コギー、最近いつも眠たそうね。どうしたの?」
夜な夜な料理長と研究していて寝不足の私に気づき、心配そうに問い掛けるライラ。
あまり心配させるといけないし、ここは正直に話そう。
「料理長と毎晩2人で盛り上がってさぁ、なかなか寝かせてくれなくて寝不足なんだよねー」
前回のプリンを高く評価した料理長は、私が新しいチョコを作りたいと言ったら非常に協力的で、発起人の私よりも熱心に研究している。
ただ、私の魔法が便利だからと夜遅くまで付き合わせるのは止めてほしい。ワタシ9歳! 成長期なの!
「はぁ!? あんた私というものがありながら何してるのよ!」
「何って、弄くり回したり、舌で味を確かめ合ったり……?」
正直、チョコを舐めていた。適当に砕いたり、脂肪分を抽出したりすれば出来るだろうと思っていた。
それなのに1ヶ月掛けてもまだまだ未完成。作業も試食も繰り返した。
一から作るのって楽しいけれど難しい……私、プリンで調子に乗っていたよ……
そしてその間、ライラからのお泊まりのお誘いをずっと断っていた。
いまライラが怒鳴っているのはきっとコレの所為だろう。
自分のお誘いは断られたのに、研究とはいえ私が料理長と一緒に盛り上がっていたのだ。怒る理由には十分だ。ごめんね、ライラ……
「なんですって……! あの行き遅れぇ……!」
待って、料理長はまだピチピチの20歳だよ!?
確かにこの世界では行き遅れ気味だけど、まだまだチャンスあるからね!
「コギー! 今夜は私と寝なさい。絶対だからね!」
怒り心頭に発するライラ。
こうなってしまっては、私はこう返すしかない。
「い、イエッサー!」
◇◆◇◆◇
はぁ……なんだか眠気も後押ししてドッと疲れてしまった。
ライラとのお泊まりですぐに寝落ちしないよう気をつけなくちゃ。
……それにしてもどうしてライラはいつも料理長に厳しく当たるのだろうか。