プリンを作りました<ライラ視点>
私のチョップを受けたコギーが痛そうに頭をさすっている。やり過ぎたかな?
だけどいきなり愛なんて言い出したコギーが悪い。恥ずかしいじゃない。
◇◆◇◆◇
まあ、言葉にせずとも私とコギーが両思いなのは分かりきったことよね。
物心つく前から御飯もお風呂も一緒で、ときどき私の部屋でお泊まりすることもある。そのとき私がベットで抱きつくと、甘えん坊さんだねぇって抱き返して寝てくれるの。もはや夫婦同然だわ。
近年、発展した魔法によって同性でも子どもが作れるようになった中で、コギーが魔法にのめり込んでいるのは、きっと私との結婚を見越した上ね。
私だってどこぞの偉い魔法使いの魔法よりもコギー自身の魔法で授かりたいもの。
そんなことをママに話したらコギーがメイド見習いになったわ。
本当はコギーの両親を手伝わせる予定だったらしい。でも、私と結婚するなら貴族としての勉強が必要だからと、これまで通り一緒に学ぶことになったの。
お父様とコギーの両親も了承済みよ。どうやら私たちに内緒で婚約も結んだみたいね。雰囲気で察したわ。
◇◆◇◆◇
「はあ……もうコギーも早く食べなさいよ」
私はチョップからの照れ隠しでコギーもプリンを食べるように勧めた。
「そうだね。イタダキマース!」
口を開けて食べようとするコギー。
しかし、私は気づいてしまった。
そのスプーンはさっき私にあーんしたスプーンだ……と!
「やっぱり待ちなさいコギー! その前に庭の草むしりよ」
焦った私はなんとかメイドの仕事をひねり出す。
「なんでさ!? どこの悪徳令嬢だよ! せめて先にプリン食べさせてよ!」
そりゃそうだ。だけど私は譲る訳にはいかないの。
……ん?
……食べさせて……だ……と?
「いいわ! 私のスプーンで食べさせてあげるわ! はい、口開けてコギー。あーん」
ナイスガッツ私!
これでコギーのスプーンは使われず、私はコギーの唾液付きスプーンを手に入れられるわ!
「いや、面倒だし自分で食べるよ」
パクり。パクパク。
「んー! やっぱり美味しい!」
コギぃ!
私の唾液をそんな美味しそうに食べないで!
「あー美味しかった! じゃあ確かに草伸びてるし、いっちょ魔法で草抜いてくるね」
そう言って立ち去るコギー。
私は恥ずかしさのあまり茫然と無言で見送った。
その後、私はプリンを食べていたコギーを思い出して真っ赤になってジタバタ。
「私と間接キスぅ……コギーったら!コギーったらァ!」
恥ずかしい……いや、それよりもコギーとの間接キスを逃したことが悔しいわ!
どうにかして……あれ? もしかして容器片付けてない……?
テーブルを見るとそこには私とコギーが食べたプリン容器とスプーンがそのまま置いてあった。
………………
「まったく……コギーったら片付けもしないなんてメイド見習い失格ね……」
コギーったら仕方ないんだから。私が代わりに厨房まで持って行ってあげるわね。
………………
……キョロキョロ
………………
……ぺろぺろ。