プリンを作りました
授業が終わり厨房へ。
仕事の邪魔をしなければ自由に使っていいと料理長から許可をもらった。因みに料理長と言っても料理人はひとりだけだ。
御屋敷の使用人は実務を手伝う私の両親、料理長、メイド長、メイド、そしてメイド見習いの私の合わせて6人。執事は私の父が兼任している。
対して雇用主であるマクベイン家は旦那様、奥様、ライラの3人。辺境で慎ましく暮らすなら使用人の数は十分だ。
「よーし、作りますかプリンちゃん!」
◇◆◇◆◇
「ライラ! お菓子できたよ。食べて食べて!」
私がプリンを差し出すとライラは目を丸くして驚いた。
「本当に作れたの!? まさか料理長から貰ってきたんじゃないわよね?」
「ちゃんと作ったよ。なんでそんなこと言うのさ!」
「だってコギー、魔法しか取り柄ないじゃない。いつもダラダラしてるし」
「料理に魔法を使ったんだよ。てか私への認識が酷くない!?」
この世界には魔法がある。私は才能があったので必死に練習した。主に生活が楽になりそうなやつを。楽するためなら努力するのさ!
ダラダラしていたのは……まあそんなことイイジャナイカ!
「魔法でどうやったのよ」
「いい感じに混ぜたり濾したり冷やしたり、まあ色々とね」
一般的に料理で使われている魔法は、誰でも使える簡単な火と水くらいだ。
魔法は才能に加えてイメージ力が重要で、前世の知識と経験がある私はかなりのアドバンテージを持つ。旦那様曰く、夏場に部屋や飲み物を冷やすために魔法を使うのは王都の一握りと私だけらしい。
「説明がいい加減過ぎて不安なんだけど! 魔法で濾すって何よ! 濾すって!」
「網目状に魔力を具現化してすっごく細かいザルにしたんだよ。もうそんなのいいから早く食べてって。はい、あーん」
なかなか食べようとしないライラに、私はスプーンでプリンを掬ってあーんする。
すると甘えん坊ライラは普段もあーんされ慣れているので反射で口を開けてしまうのだ!
ぱくりっ!
もぐもぐ……
ごっくんちょ……
「あれ? 美味しい……トロッとしていて柔らかな甘み……」
「そうでしょ、そうでしょう!」
「何でデキてるのこれ?」
「ライラへの愛情に決まってホゲェ……!」
ライラに頭をチョップされた。赤面してるけどそんなに怒らなくてもいいじゃない……!