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選ばれしもの

今回は自分でもよくわかりませんw

すみません

目を覚ますとそこはお花畑の真ん中だった。


もちろんあたり一面は花で埋め尽くされている。


見渡す限りすずらんでびっしりだった。


一面真っ白に染まった花畑はまるで天国さながらである。


純白に染まるヘルファイアのごとしであった。


見渡す限りの花畑に少し飽き飽きしながら後ろを向くと急に洋風のお城めいた建物が表れてびっくりした。


「うわぁ」


いきなり現れた城にびっくりして思わず尻もちをついてしまった。


「はぁ~。びっくりしたぁ。なんでいきなりこんな建物が生えてきたんだ」


すずらんの花畑が広がっていた場所から突如こんなにも大きな城が生えてきたら驚くのも無理はない。


 丁寧に水堀まで作られていた。その上に木製の立派な橋がかけられ、そこを渡って王城の扉の前までたどり着いた。


2,3度ノックしてみたが返事がなかったので、恐る恐る重そうな純金の引手の金具を引いた。


 一瞬後に広がるであろうとてつもなく立派で、到底一般人には想像もできないであろう内装に胸を躍らせて。



 ......



「ヒュー」



風が吹き抜けていく。ひろきは何が起こったのか理解が追い付かず一度扉を閉めた。


そしてもう一度城壁を見上げた。そしてもう一度金具を引いた。


やはり風が吹き抜けている。


その後も2、3回同じ動作を繰り返したがやはり結果は変わらなかった。


ただ、5回目だけは少し変わっていた。風が吹き抜けていた空間に舞台の大道具のような和室が出来上がっていた。


その舞台セットの上には70過ぎの老翁が煎茶を飲みながらくつろいでいた。


しかしこちらの存在に気付くなりすぐに声をかけてきた。


「ほらそこの少年こっちにきたまえ」


呼ばれて少年は戸惑いながらも老翁の近くまで行った。


「まぁまぁ。そこに座りたまえ」


そう言われて少年は円卓を挟むように向かい合わせで謎の老翁の前に座った。


「いきなりこのような世界に連れてこられて戸惑っているかもしれないが、冷静に聞いてほしい」


そういうと老翁の表情は険しいものとなった。


それにつられて少年の背筋もはち切れそうなほどに伸びる。


(そこまでかしこまらなくてもいいのだが)と少し微笑んだが緊張しきっているようだったので話をすることにした。


「君もうすうす勘付いているかもしれないが...」


そこまで言って老翁は少し言いよどんだ。


若い少年に突きつけるにはあまりに過酷なのだろうか?


やはりここは死後の世界だったのだろうか?


ここで天国と地獄、どちらへ行くことになるかジャッジが行われるのだろうか?


天国とか地獄ってホントにあるんだ


色々な考えが少年の頭をよぎっている中、老翁は覚悟を決めたようだった。


「ここは死後の世界......」


(んんんーやっぱりか)と少年の脳内を弾幕のように横切った。


「ではないんだ」


が数秒後、予想と全く違った返答がきて少年は阿呆顔をさらしていた。


しばらくの後少年の硬直が解け、質問の雨を降らした。、


「死後の世界じゃないってどういうことですか。花とかいっぱい生えてるからてっきりあの世かと思いましたよ。しかもここが死後の世界じゃなかったら一体何なんですか?ここから元の世界には帰れるんですか?もとより僕――」


鬼気迫る表情で少年が老翁に迫っている。


老翁は一つずつ彼の疑問に答えていくためとりあえず彼を落ち着けた。


「ま、まあひとまず落ち着きたまえ。1つ1つこたえよう」


そういうと老翁は一つ深呼吸をして話を始めた。


「まずはこの世界についてだね。この世界は通称中継世界と呼ばれているんだ。例えば、少年スマートフォンは持ってるかね?」


「あ、はい。ここに」


そういうと少年はポケットから自身のスマートフォンを取り出した。


「例えば、そのスマートフォンをあの城壁の一番上から落とすか君の頭の高さあたりから落とすとでは割れ方が違うと思わないかい?」


「ええ、まぁ。高いほうがより悲惨な割れ方をするのではないでしょうか?」


「そう、その通りだよ。高いほど割れがひどい。だからその間にいくつかの衝撃吸収材やらなんやらをひいて、衝撃を和らげんくちゃいけんのだ。それは高ければ高いほど多く必要とする。」


老翁が長々と説明しても少年にはあまり伝わっていなかったようだ。


「つまりその説明のさすところというのは?」


「君がスマホであの城壁の一番上が君の世界とする。そして君が今立っている場所が新たな世界と考えよう。人間もスマホと同様に急に差が生まれると壊れてしまうのだよ。それを防ぐためにあるのが、この中継世界という訳だ。ここが衝撃吸収材と同じような役割をしている。君たちは実際には落ちてくるわけではないがな。がはは」


最後に笑って老翁の長ったらしい説明は終わった。


しかし少年はまだまだ疑問を抱えていたのでそれらすべての説明を求めた。


「どうやったら前の世界には帰ることができるんだ?」


「まあそう急くな。まず、君がここに飛ばされてきた時のことを覚えているかね?」


そう言われて少年はその時のことを思い出した。


(確か峰崎高校のもんを通った瞬間闇に飲まれて地面に吸い込まれるような感覚がして、目が覚めたら花の中だった)


あれ、正確に思い出せない、。ついさっきの出来事だというのに。


まるで少年の心を読み取ったかのように、回想を終えたとたん老翁は話し出した。


「そう、君は前の世界の記憶を徐々になくしていく。新たな世界で生きるために。仮に君が元の世界に帰れたとしても君は記憶を失い何もわからない。そんな状況か、新たな地で生活を始めるか。どちらが幸せかというものだよ」


そして老翁は一息吸って最も重要な部分について語りだした。


それは紛れもなく少年がどうしてここにいるかという話だ。


「そして君が一番知りたいのはおそらく、どうしてこんなところに飛ばされてきたのか?ということだろう。私も教えることのできる限りは教えたいのだが、あいにくとまだ詳しい原因は判明していないんだ。今一番の有力説として推されているのが、クラドゥドリ説というものなんだ」


 クラドゥドリ説とは、今から50年程前、当時この業界の最高権威が提唱した説だ。


少年たちの住む世界すなわち地球を下界と考え、下界にいるにはふさわしくない、いわば選ばれた者だけが通ることのできる門である。


下界とは別の世界、すなわち天界である。


選ばれた者だけが通ることのできる門には、もちろん通るための条件が設けられているわけだが...


その条件がわからないために世の研究者たちは頭を悩ませているのだった。


 一通り説明を受け終えた少年は姿勢を正して、老翁に向き合った。


「それで、僕はいったいどうなるんですか?このままこの世界に留まるのですか?」


説明を受けてなお、不安そうな少年を前に老翁はあきらめ交じりにため息をついた。


(これ以上の説明は逆に不安をあおるだけか)


そう思い老翁は思い切って口を切った。


「君にはこの世界で一度死んでもらう」


突然の告白に弱冠15歳の若き少年が戸惑う。


いきなり死ね、と言われたら誰でも同じ反応をしてしまうだろうが。


「し、死ぬってどういうことですか。ここは通過点でいわばクッション材のような役割ではないのですか」


少年は自分でも何が言いたいのかよくわからないながらも懸命に舌を回した。


人間はいつか死ぬ。そんなことは幼き15歳の少年にもわかりきっているのだ。


ただ、それにも長い年月をかけて心の準備が必要というものだ。


それをまだ世に生を授かって15年余りの少年に突きつけるというのはあまりに酷というものであろう。


「そうだったんじゃが、君がここに降り立った時からどうも時空の調子がおかしくてのぅ。

そこでしぶしぶ死去転送を行うことにしたんじゃ。多少の痛みはあるかもしれんが我慢しておくれ。この中継世界では死人という扱いになるが、天界に行けば君は普通に生を授かって生きている」


そこまで言うと老翁は一つ大きく深呼吸して、深刻な面持ちになった。


少年もそれにつられて再び深刻な面持ちになる。


老翁は、少年が自分の話を聞きいる準備ができたことを確認すると、重い口を開けた。


「ここからは、すべて君の選択に任せるものとする。話す前に一つ。これは君の人生の中でも最大級の人生の選択であろう。決して決断を間違えないように。生半可な気持ちで選択すると後で後悔するのはほかならぬ自分自身だということを忘れるなよ」


空気までもが張り裂けそうな緊張感に少年は思わず悲鳴を上げたくなったが何とか阻止して老翁の話の続きを待った。


「ここで死去転生を行えば、君は一生下界に帰ることはできない。その覚悟が君にはあるかね」


「ごくり」


と少年の喉が鳴る音が聞こえた。


それほどまでにあたりは静寂に包まれていたのだ。


しばらくの後、少年は意を決したかのように老翁のほうに向いた。


「僕、その死去転生ってやつ、します」


燃え盛るような瞳を見て老翁は聞き返す必要はない、と判断し...



「グシャッ」



そのまま刀を伴って少年へと切りかかった。


少年は見るも無残に首が跳ねとんだ。


これで少年が下界へ戻ることは決してできなくなった。


少年はまだ見ぬ新たな地で新たな生活を送っていくのだ。


そしてそれと時を同じくして少年:虹宮ひろきは消滅した。


彼は誰にも死んだと理解してもらうこともなく、ひとりでに死んでいく。


見送るのはただ一人。切りかかった老翁だけだった。




永遠と暗闇が続く世界。


しかし足元はひどく冷たい。


永遠と続く湖とそれを覆うようにひたすらに暗闇が続く。


そこに取り残されたように座り込む少年はどこか悲しそうな表情をしていた。

  

「ここは、いったいどこだ?」


少年は、誰もいない闇の空間で一人つぶやいた。


もちろん分かっていたことだが返答は、ない。


「しかし、困ったものだな。今日は怒涛の一日だった」


1人でぼそぼそつぶやきながら、少年は気を紛らわせた。


そうでもしていないと頭がヒートアップしてしまいそうだった。


新たに学校生活が始まると思いきやいきなり異世界に飛ばされ、そこで殺され、この様である。


(まるで王道ラノベの主人公になったようだ)などと全くどうでもいいことを考えていた。


まるで危機感を持っていない様子であった。


それからしばらくの時間が過ぎ、さすがに疲れて少年は眠りについた。


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