7.二重人格説をゴリ押す(月久視点)
少女、リジーの声で俺はやっと今何が起こっているのかを把握した
というのも、俺は本当にただ単にあの杖、挙動がおかしいなー、ヤバそうだなーと感じてあっこれヤバいぞーと思った時には何故かヒツキちゃんの左腕で魔法杖を誰も居ない茂みの中へと投げ捨てていた
その後、爆破による爆音に耳をやったら後々動くのに不便になると思い、思うままに動いて居たらいつの間にかヒツキちゃんの身体を動かしていた
いや、なにを言っているのか俺自身も理解できていないというか理解し難い
まさか俺はヒツキちゃんの身体の主導権奪っちゃった感じっすかねー??と冷や汗を掻いていたらリジーちゃんが俺…いや、ヒツキちゃんの肩を掴んで揺さぶり始めた
「ヒツキ!あんた一体何したの?というか何してるの?答えて!」
「お、お、お、落ち着けリジーちゃんんn喋りづらい喋りづらい」
(確かに…この状況じゃ、喋れない)
おおう、ヒツキちゃんの声が聞こえてきた
アッこれ本格的に身体の主導権奪っちゃってませんかね?大丈夫なの??と若干不安になりつつもリジーちゃんを落ち着かせることに専念する
因みに王子らしい方は何が起こっているか理解できずに阿呆面を曝して、黒髪の方は俺がさっき投げた魔法杖の確認へと向かっている
「あっ、ごめんヒツキ…あんたアタシより小さいのに揺さぶっちゃって」
「いやいや大丈夫っすよ。というか俺、ヒツキちゃんじゃないっすから」
「…はい?」
怪訝そうに、理解できない様子で首を傾げるリジーちゃんにどう説明すべきかと悩みつつヒツキちゃんに話題を振ることにした
「(ヒツキちゃん、良い誤魔化し方ってないっすかね?)」
≪…≫
「(あっ、やっぱり無い感じっすかね?)」
≪ある、けど…≫
「(…けど?)」
≪私の魔力量じゃありえない、から…≫
「(んん?というと?)」
≪二重人格、魔力が多い人がなりやすい病気≫
「(えっ、なんすかそれ…俺の知ってる二重人格じゃないっす)」
≪魔力が多すぎると一人で管理することは出来ない、だから副人格を作り出して魔力の管理を補助させている…って前に読んだ本に書いてあった≫
「(はー…成程、だからヒツキちゃんの魔力量じゃ普通はあり得ないってことっすか)」
≪そ、だから二重人格説はムリ≫
「(魔力が多い人がなりやすいだけで別にヒツキちゃんでもなる可能性はあるっすよね、説明聞いてる限り)」
≪…?≫
「(魔力が多い人がなりやすいってだけで、魔力が多い人"だけ”がなる病気とは断定されてないっすから)」
≪理解…≫
「(という訳で二重人格説でゴリ押しするっすよー)」
この間約1分そこら、曖昧な笑みを浮かべていた俺はにこやかな笑みに変えてにリジーちゃんを見ながら告げた
「俺はヒツキちゃんの副人格の月久っす」