2.男との邂逅
ぱちり、そのような音がつくような程にいつもならくっつく瞼がアッサリと開いた
夢にしては余りにも現実味があり、そして現実味がないという中途半端な、けれどあれは実際には現実に起こったことだと主張する何かが私の中に存在した
そのことを私は、何故かアッサリと受け止めていた
多分だが、きっとあの夢は私に関係があることだというのを理解し、そして考える
まずは、あの夢の視点であった男性のことが分からなければきっと何も分からないのだろうと思い、思い出してみることにした
「(銀髪…にしては薄い男の人、オレンジ色のサングラスによく分からない服だった…パトゥーマ?パリューマ?族らしい…それで名前はツキヒサ)」
男性の見た目は全く分からない筈なのに、何故か分かったことにふと気づく
何故だろうか?と首を傾げても答えは出ない
その後も知っている人だろうかと考えてみるが、薄い銀色の髪をした知り合いなど居ないことに気付き、夢へのヒントが絶たれたような気分になり、朝から少しだけイヤな気分になる
そういえば彼の視点からは猫の獣人とエルフといった色々な種族が居たことを思い出す
私が暮らす国では、その両方とも奴隷と言った形でなら見たことはあるが、あそこまで普通に、他の種族と一緒にお仕事をしている姿は少しばかり、眩しくもあった
まるで私が暮らす国の在り方を否定するような夢を見たことに気付き、驚きつつもそう言えば、彼は自分の種族についてもいっていたことを思い出す
「(鬼…?東の国では確かオーガを鬼って言ったはず…つまり彼は魔獣…?)」
≪魔獣って人聞きの悪い≫
「(うん…だよね…普通に人みたいだったし…?)」
今、誰か返事をしなかっただろうか?
そう思い周りを見たわしてみるも、誰も居なくて、窓からはうっすらと明るくなる空しか見えなかった
そう考えると先程のは、空耳なのだろうかと首を傾げてみたらやはり声が聞こえてきた
≪幻聴じゃないっすよー。といっても俺もたった今、意識が覚醒したばっかなんで説明とか無理なんすけどね?けど、質問になら答えられるっすよ≫
あまりにもあっけなく声自身に幻聴の類ではないと否定をされて驚く
それなら尚更、この軽そうな男の人の声は一体誰なのだろうか?
首を傾げていたら、楽しそうにケタケタ笑う声が響く
≪あっはは、そこまで唸らずにフツーに俺に聞きゃいいでしょーに≫
「(確かに…誰?)」
≪うっわ、やけにあっさり聞くっすねー、いいんですけど。っと自己紹介忘れてましたね、俺は…んー、簡単に言えばさっきの夢の男っすよ≫
「(ツキヒサ?)」
≪そうっすよ。因みに俺の種族は、パトゥーマやパリューマじゃなくてパドゥーマっす≫
「(ぱどぅーま)」
≪言いなれてない感満載っすけど、発音は合ってるっすよ!≫
そうして私とツキヒサはお互いを理解し合うために色々なことを話し合った
話すのが苦手な私にとって、いっぱいお喋りが出来るツキヒサという存在は貴重で、お喋りが楽しくて学園に付属している寮の自室から出るのがいつもの時間より遅れてしまった