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紫の短編集

転生したのは

作者: 紫 魔夜

 異世界転生。転生先も色々ありますよね。

 この世界において、神のいる場所から最も遠い場所に存在するニヴル冥穴(めいけつ)。その最奥には伝説の魔剣が封印されていた。岩で出来た台座に深々と刺さっており、外から見えている部分は持ち手の部分くらいしかないが、伝説の魔剣で間違いないという。

 どうやら、俺はその魔剣に転生したらしい。

 何故死んだのかは、もう忘れた。時間も何もわからないから転生して何年になるのかはわからない。でも、何年かはたったと思えるくらい長い間ここにいる。

 何故伝説の魔剣が封印されているのかは、覚えている。

 伝説の魔剣ーー正式名称は知らないがみんなそう呼んでいるーーは、魔王を殺すために必要な武器だ。だからこそ魔王は自らその魔剣を封印した。さらに、俺が転生したときには、封印だけではなく、魔剣を守る魔女がいた。

 だがある日、魔女は一人の冒険者に殺された。

 そして、その冒険者は魔剣の封印を解き、魔剣を手に入れようとした。


 俺はそれを拒んだ。


 異世界転生ものが好きだった俺は、その手の小説をいくつも読んでいた。どんな世界に行こうとも、どんな職業になろうとも、たとえ魔物に転生したってやっていく(すべ)は考えていた。

 だが、無機物(魔剣)に転生するのは予定外だった。これでは俺の理想は叶えられない。

 それでも俺は考えた。そして一つの結論に至ったのだ。


 どうせなら、美少女に使ってもらいたい。


 というわけで、魔女を倒した冒険者は男だったのでおかえり願ったわけだ。

 まあ、それも簡単にいったわけではない。封印を解かれたときの俺は、台座に無防備に刺さったただの魔剣だ。抜かれないように必死に頑張った。全身に力を込めて踏ん張っていたのだ。その結果、何とか抜かれず済んだのだ。

 台座は破壊すると呪われるという話があるらしく、狙われることはなかった。

 その冒険者は諦めて帰るまで、実に長くつらい戦いだった。

 しかし、試練は終わらない。魔女が倒されたことを知った冒険者たちは、伝説の魔剣を手に入れるために毎日ここへやってきた。休む暇もないうえに、やって来るのはむさ苦しい男ばかり。

 冒険者が来ないときには、岩を食らう魔物たちがうるさくてーー魔剣は魔よけの効果もあるらしく近づいてこないのがせめてもの救いだーーこれまた休むことが出来ない。まあ、剣に睡眠は必要ではないのだが、気分的には寝るーー剣がどういう状況になってるかはわからないーーと疲れが取れるというものだ。

 時には美少年が来ることもあったが、俺が求めているのは美少女だけだった。


 だがそれもかつての話、最近ではここまでやって来る冒険者の数も減り、魔物の数も減った。

 おかげで普段は気を休めることが出来るのだが、たまに来る冒険者は結構手ごわかったりする。中には不意をついたり、念動力を使って抜こうとする冒険者がいたり。これが実は有効な手で、柄を掴まれた感覚はないし、見えない場所からだと気づけないしで、対応が遅れて危なかった時もある。

 もう、美少年でもいいかな。と思い始めてはいるが美少女を諦めたわけではない。

 と、足音が近づいてくる。久しぶりに冒険者がおいでのようだ。


「伝説の魔剣かぁ。どんなんだろうね?」

「やっぱ、禍々しい感じじゃね?」


 この世界に来て初めて聞く、女の声だ。

 これで美少女だったら、俺は喜んで持っていかれよう。俺はそう考えて足音の主が到着するのを待った。


「これかな?」

「そうだろうな」


 目の前に現れたのは二人の美少女だった。これならどちらでも問題はない。

 俺は全身の力を抜き、とてもリラックスした状態になった。これで、この暗い場所から解放される。美少女の剣として俺は、新たな人生のスタートさせるのだ。


「抜くよ?」


 美少女がそっと柄を握る。そういえば、柄を握られても全く感覚がないのだが、体のどの部分に当たるのだろうか。


「えいっ!」


 美少女は勢いよく魔剣を抜くが、抵抗がなさ過ぎてそのまま後ろへと倒れてしまう。

 魔剣は美少女の手にしっかりと握られいた。


 俺の目の前にいる美少女の手に、魔剣は握られていた。


 あれ? どういうこと?

 呆然とする俺には目もくれずに、美少女二人は魔剣を持っていなくなってしまった。


 神のいる場所から最も遠い場所に存在するニヴル冥穴。その最奥には伝説の魔剣の(役目を)刺さっていた(終えた)台座だけが残った。

俺の転生先だけが。

 これはないんじゃないか、と思って書いてみました。伝わらなかったらごめんなさい。

 主人公かわいそうですね。

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