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俺はいったい何者だ? 記憶喪失からの成り上がり  作者: どんちゃん
第一章・現状把握とブラッドリー子爵領
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第7話 ブラッドリー子爵家

 自分を知るのは大切です。

 ジェリド君の羞恥に耐えながらの努力をご覧下さい。

「アハハハハハハ」


 呆然とした表情で鏡を見ながら両手で自分の胸を触り、さらに下腹部に視線を向けた俺を見て、兄さんがとても面白そうに目に涙を浮かべて笑った。


「な、なにを……フフ……なにをしているの? ……そ、そんな……そんな驚いた表情で、いきなりじぶ……自分の、胸を……ハハ、胸を触ったかと思えばクフ……次は、視線を下に」


 ……恥ずかしい。鏡の中で白い肌をした顔が赤くなっていくのが目に見えてわかる。笑うなら我慢せずに堂々と笑って下さいよ! アウラお兄さん。

 思わず体を触ったりして確認してしまったけど、仕方がないじゃないか!


「……ないことの確認とあることの確認を」

「クハ……フハハハハハハハハ……無いことの確認とあることの確認って……胸とあれを確認していたって事だよね? 言われなくても見てたらわかるけどよくそんな事言えたね? ハハ」


 ……前言撤回笑いすぎです笑わないで下さい。


「……最初、わかってて笑いましたよね? ……なら隠すだけ無駄じゃないですか?」

「そうなんだけど……フフ……久し振りにこんなに笑わせてもらったよ」

「……それは良かったですね」

「そんな拗ねないでよ?」

「拗ねてません」

「なら怒らないでよ?」

「怒ってません!」

「怒ってるじゃないか?」


 アウラお兄さんは、ひとしきり笑ってから笑顔で握手を求めてきた。


「突然現れた君には従兄弟だと言われ、さらに父さんからはこれから君を庶子として扱い、僕の弟にするなんて言われても、正直なにそれ? って感じだったけど、ようやく君に好感が持てたよ。まだ君のことは認めてないけどこれから宜しくね」


 はっきりと認めていないと言われてしまった。

 ……そりゃそうだよね? 確かに16年間存在すら知らなかった従兄弟が突然現れ、その日から弟になります。なんて言われてもすぐには認められる筈がない……。

 かえって認めていないと断言してくれた今の方が、お互いになにも知らないのに最初から無条件で認めるような握手を交わした先程よりも、嘘がなくて良い。


 それならば、と俺も兄さんの手をとりながら笑顔で応えた。


「よろしくお願いします。僕もまだ兄さんのことをなにも知らないので、好きになれるかどうかはわかりませんが、あなたに認められるように頑張りたいと思います」


 兄さんが一瞬面食らったような表情をしたが、意図を察してまた笑った。


「面白い子だね? 好いてもらえるか嫌われるかはわからないけど、君の頑張りをこれから見させてもらうから覚悟しててね? もうすぐ夕食のはずだから、夕食が出来たら声をかけるようにメイドに言っておくから、それまではここで休んでて」


「わかりました。アウラお兄様」


 兄さんが部屋を出ていったあと、俺はすかさず姿見の前で自分の身体を確認した。


 まずは顔。……うん。確かに中性的というか、女の子みたいに可愛い顔だけど、男と言われたら確かに男にも見える。

 亜麻色の髪が可愛らしくアクセントになっているから、より女の子のように見えている気がする。

 ……髪はともかく俺はまだ16歳なんだから、これから大きくなれば顔の印象も変わる……はず?

 ……? なんだか少し違和感を感じた気がするけど、どこに違和感を感じたのかがわからない。

 しばらく考えたが、結局答えは出なかった。仕方がない、次にいこう。

 この顔で一人称が私だと、女の子って感じが強くなるな……変えてみようかな? 

 次は身体の確認だ。

 服が邪魔で見えないので服を脱ごう。上着を脱いで長袖のワイシャツのボタンを外そうとして手が止まる。

 ──腕細くない?

 ワイシャツ越しに見える腕が、気のせいかもしれないけどかなり細く見える。

 右手で自分の左腕の二の腕部分を握ってみると、やはり気のせいなどではなくかなり細かった。

 シャツを脱いで身体を確認……しようとした手が鏡を見たことによってまた止まる。

 白い肌にワイシャツの上からでもわかるくらいに細く華奢な身体、そして亜麻色の髪に可愛い顔……兄さんが言ってたようにそこらの女の子より可愛いかも……

 ……俺は今から服を脱ぐ。

 ……つまり鏡の中のこの子を脱がすということか? 


「…………………………」


 この子は俺だ! 俺は男だ!

 確かに可愛いけど、これは俺なんだから恥ずかしがることなんてなにもない!

 もう一度ワイシャツに手をかける。……そんなに恥ずかしそうな顔をするなよ俺……。

 俺まで恥ずかしくなるじゃないか……。


「………………………………………………」


 恥ずかしさのあまり、心の中で一人芝居をしてしまった。

 意を決してボタンを外していく……絶対に鏡なんて見ない。

 今見たらボタンを外せない。

 全てのボタンを外してワイシャツを脱いだ。

 恐る恐る目を開区くと、当然だが肌着を着た俺がいた。

 顔を真っ赤にして、瞳を潤ませてモジモジしながら立っている。

 肌着から伸びる腕は、想像通り細くて白かった。だがあくまでも想像通りだったので、恥ずかしさはかなり薄れた。

 よし肌着を脱ごう!

 ……今日はここまででよくないかな? 俺、頑張ったよね? ……いやダメだ……お風呂に入るときにどうせ脱ぐんだ。その時どれだけ時間がかけられるのかがわからないじゃないか。それに傷の確認をしておきたい。

 そうだ! 傷の確認をしないといけないから脱ぐんだ。そして肌着を脱ぐと細く綺麗なお腹や白い肌とそこに浮かぶ二つのピンクの突起が目に入る。

 ……良かった。突起の周辺に膨らみはない。そして次に目がいったのは、鳩尾とおへその間にある赤黒い直径15cmくらいの痣だ。


「風穴っていうのはこれのことか……」


 目が覚めたときには全身痛くてどこが痛いかもわからなかったけど、痣を見てようやく胸に空いていたという風穴の存在を実感する。


「……こんな大きな穴が空いていよく助かったな」


 どう考えてもリリーのおかげだな……馬車の中で父さんに教えてもらったリリーのメイド服の事実。

 リリーのメイド服が他のメイドと違うことを、リリーは見習いとして服で区別されていると思い込んでいるが……実は辺境泊による完全オーダーメイドでリリーが可愛くみえることだけを優先させて作らせた服であり、一着あたりの金額は他のメイド服の3倍の値段がかけられていることは……そして辺境泊がメイド服を作る時、リリーのスリーサイズを含む詳細なサイズを知っていることやそれどころか……。という話をして赤面させようと思っていたけど、これに対する礼として言うのは控えよう。


 傷跡を触ってみたが痛みはなかった……というか感覚が薄い……いや、感覚が無いんだ。

 触っている指はともかく、触られている側のお腹は触られている感じがしない……それどころかかなり強く抓っても痛みを感じない。

 ……俺は薬などを飲んだ記憶はないから薬による鎮痛は恐らく無い。

 なら魔法による感覚遮断? でもそんな魔法ってあるのかな? 俺がかけてもらったのを見聞きしている魔法は、2日前に傷の修復……昨日はハイヒーリングと、効かなかった眠りの魔法。

 ……今考えてもわからないんだから、考えるのはやめて後で誰かに相談する事にしよう。


 僕は足を確認する。

 ズボンとの葛藤? したくないからさっき傷のこととか色々考えている間にさっさと脱いだよ!


 足は予想通り白くて細かったが、所詮は予想通りさ。

 鏡の中の俺が顔真っ赤なのも今更さ! よし、一通り必要な確認は終わった。そして最初に保留にしたこの女顔だが……表情を変えてみたらどうだろう? 実際に鏡の前でやってみよう。


 まずば無表情! なんだか眠そうだな。

 怒った表情! ちくしょう可愛いな!

 怒っているのを隠したような表情! 拗ねてる? 

 さげすむような表情! ただただムカつくな! おい!


 

 ▽



 思いつくだけ色々試してみたけど、これは男らしいぞ! という表情はなかった……。


 やるかどうか迷ったが、最後に右手を腰の後ろに回し左手の人差し指を唇に当てて上目遣いから思いつく最高の笑顔を作ってみた。


 ──バタン!!──


「し、しし、失礼します。ブラッ──」

「……………………………………………」

「……え、えぇっと……へ、部屋を間違えましたなのてす! し、失礼しますです!」


 ──パッタン──


 ……メイドが出て行った。

 ……俺はなんて恥ずかしい姿を見られてしまったんだ……!


 しばらくすると、ノックの音が聞こえてきた。


 ──コンコンコンコン──


 ……そうだ。ノックさえあればこんな思い──。

 とにかくまずは服を着なければ……。


「はい……少しお待ちください」


 着替え終わったので入室の許可を出すと、先程のメイドが入ってきた。

 金に近い茶髪のショートカットで、割と素朴な美人というよりは可愛いという感じの顔立ちをしている。

 メイド服は青と白を基調としたリリーのメイド服と比べると若干大人しめな色合いだ。


「し、失礼致しますです。メイドで当家をさせていただいておりますですローラでメイドです」


 なんかテンパってる? 今二回メイドって言ったよね? メイドで当家? って多分言ったよね……


「……当家でメイドをされているローラさん。で良いのかな?」

「はいです」

「いつからされてるの?」

「37日前の朝からです」

「そうなんだ? ローラさんよろしくね。僕はジェリド=ブラッドリーだ」

「よろしくお願いしますです」

「そんなに緊張しなくてもいいよ?」

「覗いてはいけない秘密の花園を覗いてしまったです」

「……………ノックはしようね」

「自己紹介を考えていたら忘れちゃいましたです」

「……それで要件はなにかな?」

「そうです。これからは私がジェリド様にお世話をされていただくことになリマしたジェリド様付きのメイドのローラと申しますです。うっかり物ですがよろしくお願いしますです」

「……そこ『ジェリド様“の”お世話をさせていただくことになった』で良いんだよね?」

「はい、もちろんです。言葉遣いに関してはメイド長に教えている最中ですのでもう少しお待ちくださいとのことです」

「……わかりました」


 自覚があるなら大丈夫か? でもこれは言葉遣い以前の問題な気がするんだけど……。

 それにしても若いな。背は俺より少し高いくらいだけど、顔が幼い感じがする。もしかしたら歳が近いのかも知れない。


「それでローラさんは何歳なんですか? 僕は今年16歳になりました」

「なら一緒だね? 私も今年16だよ?」


 違和感の正体は僕の背の低さか!


「なにしてたの?」

「……いきなり敬語がなくなりましたね」

「敬語は目上の人に使う物だってメイド長に習ったよ?」

「……なら僕も敬語はやめる。ローラに聞きたいんだけどこの家でのルールとかあれば教えてくれるかな?」

「旦那様とアウラ様のお部屋、後は書斎とアウラ様の作業部屋に入るときにはノックを4回して許しを得てから入ること。お手洗いはいきなりドアノブに手をかけずノックを2回して誰もいないことを確認してから開けること。お風呂は旦那様とアウラ様が入った後に役職とか関係なく手の空いた女性から先に入っている人がいてもお風呂は広いのでどんどん入りその後男性がどんどん入るです」


 特殊なルール等は無さそうだな。


「わかったありがとうローラ。ただその中に僕の部屋に入る時にもノックするを加えてね」

「はぁい」

「それと屋敷の間取りを確認したいから夕食の後手が空いてたら案内してくれないかな?」

「はい。夕食はもう出来てるので食べたら案内するね」

「……………………出来てるの?」

「……………………出来てる……よ? 旦那様とアウラ様がお待ちです」

「それを先に言ってよ!?」

 次回予告

 次回はおっちょこちょいのローラが私達の空想の世界ではお馴染みのあの方法でお仕置きされます。

 私にとってお仕置きと言えばやはり◯トンハンマーかこれでした。


 次回【ソシアとローラ】をお楽しみください。



 次回更新は1/20の07:00に【ソシアとローラ】を予定しています。

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『嫁がダメなら娘になるわ! 最強親子の物語』下記のリンクから読めます。自信作ですのでこちらもぜひお願いします

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