第8話 銀髪幼女の正体
2chread対策の為、内容を一部変更。他の作家さんのアドバイスで、念の為天安門という文字を入れていますが、この言葉に作品的意味は皆無ですので、お気になさらずお楽しみ下さい。
「ねえジェリド、その子は誰?」
「だ、誰だろ?」
僕の方が知りたいよ!
「朝早いのね? でも扉を開け――」
僕の部屋の扉が開けっ放しだっため、朝食の準備のために通りかかったオリビアさんが僕の部屋を覗き、僕は管理人室に不純異性交遊の現行犯で連行された。しかし、結果的に僕はその10分後、眠そうに目を擦りながら飛んできたリジーに無罪の裁定を受け、解放されることとなる。それは銀髪の美幼女の正体がリアナだったからだ。
リジーが言うには、オリビアさんの精霊に叩き起こされた後、僕の部屋へと向かうと、ローラに抱き着く銀髪の女の子を発見。2人の話を聞いてみると、どうやらその子はリアナだったらしい。
リアナもなぜ起きたら人間の姿になっていたのかはわからなかったらしいが、リアナは僕の使役する魔獣(雌)として学園にも寮にも登録されており、その管理場所はが僕の部屋となっていたこと。
リジーが僕の思考を読んだ結果、もしかすると彼女はリアナだったのかもしれない。と、薄々気付いてはいたものの、元々彼女がリアナであることや、リアナが人化出来ることを知らなかったということを読み取り、今回の件は不可抗力だった。ということで解放されたのだ。
その後、僕達は予定よりも軽めの朝食をとり、ギルの部屋に押し掛けた。
「――ってことがあって、朝から管理人室に連行されるし、参ったよ」
「ふあ、っあぁ。ってことは今日がそいつの誕生日だったんだろ? おめでとさん」
「そうなの?」「そうなの!?」
「わかんない。誕生日なんて教えてもらったことないもん」
「でもこれでちゃんと話せるね!」
そうなのだ。リアナは人化を覚えたことにより、人間の言葉が喋れるようになったのだ。リアナ曰く、人化も狼化も自由自在らしい。
今は話せることが嬉しくて仕方がないらしく、ローラが朝食を用意している時からローラにくっついたまま離れない。
リアナの外見は5~6歳の少女といった感じだ。身長は110㎝前後で肌は白い。髪はサラサラで肩甲骨の辺りまで伸びている。服がないから狼に戻れと言っているのに、リアナは全く言うことを聞いてくれず、今はシーツを纏っている。もちろんギルの部屋に行くまでの通路だけは狼に戻らせた。
「そうだけど、誕生日に話せるようになるんならちゃんと言っときなさいよ! この駄竜」
「おいおい、ひでぇ言いようだな?」
《確かに俺らも神獣は加齢とともに色んな能力を手に入れる。って話を聞いたことくらいはあったぜ? でもそれが何歳でどの神獣がどういう能力に目覚めるかなんて知らねぇよ。つかフェンリルが人化能力を持つことすら知らねぇよ》
「訓練と化しなくても、年取るだけで能力を手に入れるの?」
《あぁ、だから神獣は年取った奴の方が強え》
「そうなんだ? リアナ、なにか他に使えるようになった能力とかはあるの?」
「うーん。どうだろ? わかんない」
「ということは、今わかっているのは、人化が可能になったことと、人間の言葉での思念波を使えるようになったこと。それぐらいかな?」
「多分ね」
「じゃあ今日学校が終わったら、リアナの服を買いに行こうか?」
「良いの!?」
「うん。そんな恰好でうろうろコロコロされたらたまらないし」
「コロコロはすぐ馴れるから大丈夫だもん!」
コロコロというのはこけるという意味だ。
リアナは今まで4足歩行で生活してきたため、まだ上手く歩くことが出来ない。しかしそのお陰で寮の廊下を裸で歩くと言う暴挙を阻止できたのだが。
「あっ! ジェリド。もうすぐリリーさんとの約束の時間だよ!」
「本当だ! ギル、行くよ?」
「おい、ちょっと待てよ。俺まだ朝食食ってねえし!」
「時間もないし食堂でパン買って咥えて行こ? 今日はヒュウム君とフレイヤさんも一緒だし、友達になった翌日にいきなりスッポカスのは良くないよ?」
「おいコラ! 誰のせいだと思ってんだよ!?」
《早朝に叩き起こされてパン1枚かよ!》
「あっ、もちろん援助は禁止されてるから自腹でお願いね?」
「《それ一々言う必要あんのかよ!?》」
起きた時はどうなることかと思ったけど、ギルには学科試験前日に僕を寝かせなかった借りも返せたし。リアナはローラと話せるようになって嬉しそうだし。うん。良い朝になった。
ギルを連れて待ち合わせ場所であるエントランスに行くと、すでに全員揃っていた。
「はよ」
「おはよう」
「「おはようございます。ギルバートさん。ジェリド」」
「おはよう。あら? 今日はちゃんと来ギルバート達も来たのね」
「あぁ、パンだけ買ってくるから、わりいけどちょっとだけ待っててくれ。行くぞ、ジェリド」
僕は首を傾げながら2人に答える。
「僕はもう朝食食べてるからいらないよ?」
「《はっ?》俺の部屋に来た時、まだ6時過ぎだったじゃねぇか? 食堂で食ってからじゃああ時間に来れねぇだろ?」
「うん。ローラに作ってもらったから。それに僕は食べてないなんて一言も言ってないよ?」
「《嵌めやがったな!?》」
「あ、そうだ。学科試験前日に僕を寝かせなかったことについては、もう恨んでいないから安心してね?」
と、僕は笑顔で二人にそう告げた。
「うわっ。可愛い顔して平気で公爵子息を嵌めるなんて……」
「……意外と根に持つタイプなのかな?」
「あの素直で可愛かったジェリドが……」
▽
本日の授業は、午前中に病や疫病の歴史を。
午後からはを一般的な治癒系ポーションの作成方法と、なぜその製法でポーションが出来るのかという理論について。そしてマルコ先生独自配合の治癒系ポーションの作成方法とその理論を習った。
マルコ先生曰く、マルコ先生の治癒系ポーションは一般的な治癒系ポーションよりも効果が高いという。しかしギルドにポーションを買い取ってもらう場合、その成分を解析してもらわなくてはならず、解析してもらった場合登録されていない配合の為、少なくともこの【ヴァ―ウェン】で購入してもらえる店はないらしい。
『なぜこの配合を君たちに教えたのか? それは製造方法や理論を知ることで、今回のポーションに限らず、俺達の周りにあるほとんどのもの。お前たちが教わる魔法や武術、戦術、他の物についても大抵なんらかの改良が可能だと知ってもらうためだ。ここにいるお前たちに無能はいない。唯々諾々と無為に過ごすな。教わる時にはその理を覚えろ』
という言葉で授業は終了した。
授業終了と共に、僕はステラさんに声を掛けられた。
「勝負は明後日10時、待ち合わせ場所は天安門の前で良い?」
「天安門?」
「ゴブリンの森の前にある慰霊碑を兼ねた門の事よ」
「門? あぁ、あの古い門のこと?」
「そう。あそこに10時で、良いわね?」
「うん。わかった。じゃあ明日の10時にあそこで」
「……ステラ、楽しそう。デートに行くみたい」
「な、なに言ってんのよアルベド! そんなわけないでしょ!」
そんなこんなで僕達はリリーとギル、ヒュウム君とフレイヤさんと一緒に寮へと帰った。
リリーによると、天安門というのは昔圧政を敷く魔族とそれを倒しに来た魔族が戦った跡地であり、その時に残った門に碑文を書き込み慰霊碑にしたのだとか。相変わらずリリーは物知りである。
寮に帰った後、僕はリリーとレイラに一緒に来てもらえるように頼み込み、リアナとローラを連れてリアナの人間状態の時用の服と、ついでにローラの服を買いに行った。
リリーとレイラに来てもらったのは、2人はファッションモデルもしており、服やファッションにとても詳しいからだ。
どうせ買うなら2人に似合う服を買ってあげたいし。
本当はお礼として、2人にも何か買ってあげたいと思ったんだけど、ポイントのやり取りが禁止されているため、お礼についてはまたなんらかの形で返すことを約束した。
ポイントについては正直痛かったけど、リアナもローラも喜んでくれたようで本当に良かった。
残りポイント【2530】ポイント。
せ、節約しなければ……。
――3日後、学園始業前――
教壇の前に僕・ステラさん・アルベドさんが順に並んで正座し、その正面には同じSクラスの生徒が立っていた。
「「ごめんなさい」」
僕とステラさんは両手を地に着き頭を下げて謝り、アルベドさんは視線を逸らした。
ほとんどの生徒は困惑したような表情を浮かべ、ライとギルは呆れたような表情で僕達を見ている。リリーは『しょうがないなぁ』という感じの表情でこんなことを言い出した。
「終わったことを言っても仕方がないわ。そのかわり、この3人にはちゃんと責任をとってらう。それで良しにしましょ?」
そしてその後、僕にとって屈辱的な案が可決されることとなるのであった。