第3話 入学式
投稿遅くてごめんなさい。
年度末も地獄でなかなか時間が……。
シャルちゃんと契約を交わした翌日、僕達は入学式に出席した。
入学式は広めのホールのようなところで行われ、前から僕達S(選抜)クラス・A(貴族・上級使用人育成)クラス・B(商人・使用人育成)クラスC(一般)クラスの順に、横2列づつに受験番号順に並び、僕達の左右には来賓として来た貴族が、後ろには一般父兄がずらりと数百人並ぶ。正面の壇上にはゴールドマン大公が教壇に立ち、その後ろに6人の現公爵家当主が座るというかたちだ。
父兄が多いのは、ゴールドマン大公が貴族を除く合格者全員の父兄全員に、『良ければ家族御一同で、お子さんのこれからを祝福してやってくれないか?』という旨の手紙を、毎年合格者の合格通知と共に送り、交通費を全額負担しているからだそうだ。逆に言うと、この手紙が届かなかった貴族の子女を除く受験生は、不合格だったということになる。
ゴールドマン大公の後に座る公爵家は、左から、体中の筋肉が隆起し髭ともみ上げが特徴的な、半袖半ズボンを着た2m近い巨漢のドラグニール公爵。
純白のドレスを着た20歳前後にしか見えない無表情な美女。アルベド様。
赤いタキシードを着て自らの娘と僕を見ながら、無反応なアルベド様に笑顔で話しかける男性、レッドリバー公爵。
細身で色白く、感情を一切感じさせない、どことなく蛇を連想させる男性。ブラックスミス公爵。
優し気な笑みを浮かべるリリーの伯父、辺境伯ことキルヒアイゼン公爵。
何故か父兄の席の最前列で、ローラの膝の上、ドヤ顔で胸を張ってお座りするリアナを凝視する、眼光が鋭い細身でインテリ風な男性。オルデリート公爵の順だ。
……リアナが父兄の席にいるのは、『私はジェリドの保護者だから!』と言い張ったためだ。
僕より年下なうえにすぐ泣きが入る甘えん坊なくせに。
式自体は来賓貴族の演説のように長いスピーチと、各公爵による祝辞。ゴールドマン大公による僕達新入生に対する激励と、僕達をここまで育ててくれた父兄に対する感謝の言葉。そして『これから卒業まで厳しいカリキュラムで生徒達を縛るが、卒業するころには今以上に有能な人間として返す。期待していてくれ』という力強い言葉で幕を閉じた。その後、会場に集まった父兄や来賓貴族を含む全員で、入学試験を行った闘技場へと向かうこととなる。
「めんどくせぇけど、先にオヤジ達のところに行ってるわ」
「観客席で見てるから、派手にやってきてよ」
「あぁ、今までで一番派手な演舞にしてやるよ」
《任せろ》
「期待してる」
「私も先に行くわね」
「リリーも結界制御、頑張ってね」
「えぇ、雄姿を見せられないのは残念だけど、裏方は慣れてるから任せなさい」
「うん。行ってらっしゃい」
これから行われるのは、四大公爵家による演舞だ。
王立学園の入学式と卒業式は、毎年僕達生徒と来てくれた父兄のために、四大公爵家が演舞を行うことになっている。
今年は四大公爵家の子女が全て集まったということで、家族での演舞が行われるらしい。その為、ギル達四大公爵家の子女達4人とリリーは、演舞の準備のため、みんなよりも先に闘技場へと向かったのだ。
……もしギルが学科試験であのまま落ちていたらどうなっていたのだろうか?
会場からの移動は、演舞の為に先に出た四大公爵家とリリーが退出した後、大公と来賓の貴族・父兄・C・B・A・Sクラスの順に行われた。僕達Sクラスの生徒も含め、何人かのグループでこの後に行われる演舞のことなどについて話しながら歩いていた。
――最後尾をポツンと歩く、僕を除く形で。
よくよく考えてみると僕、リリーやギル以外の同じクラスの子達と話したことがまだ一度もなかったような……。
ギルやリリーには入寮前に何人かの生徒達が挨拶に来たみたいだけど、僕がギルやリリーと一緒にいる時に話しかけてきた人はほとんどいなかった。
……もしかして僕、嫌われてる?
そんなことを考えていると、同じクラスのグループの一つが、僕に話しかけてきてくれた。
リリー達以外の学友を作る最初のチャンスだ!
「初めまして。スリンガー子爵家次男の、ヒュウム=スリンガーです。スリンガーショットって聞いたことないかな? あのスリンガーなんだけど。で、こっちが――」
「フェデラー伯爵家次期当主、ユリウス=フェデラーだ」
「フェデラー伯爵家次男の、エリオス=フェデラーです。ユリウスの双子の弟で、将来的には子爵領を継ぐ予定です」
「フェデラー伯爵家、長女のレミアス=フェデラーです。先に自己紹介を行った二人の妹で、私は16歳。兄達は18歳になります」
僕は自己紹介された順に、みんなと握手を交わした。
最初に話しかけてきてくれたヒュウムさんは、茶色い髪に茶色い瞳をもつ、身長160㎝ちょっとの、人懐っこい笑顔を浮かべている。
スリンガー家は、本人が言っていたスリンガーを含む、弓やボウガンなどの武器、最近ではパチンコという玩具なども製造販売し始めた、辺境伯派閥の家だ。
次に自己紹介してくれたのは、一卵性と思われる170㎝半ばの双子の兄弟。外見はかなり似ているが、兄と名乗ったユリウスさんの方が、エリオスさんよりも目付きが鋭く、少し痩せている。
妹のレミアスさんは僕と5㎝くらいしか身長が変わらない、綺麗な顔をした女の子。僕としてはリリーやレイラの方が美人だとは思うけど、そこは好みの問題だろう。
三人の共通点としては、全員茶色い髪に青い目をしているというところか。
フェデラー家は、スリンガー家とは違い、なんらかの産業を興していると習った記憶はない。
「これはご丁寧にありがとうございます。ブラッドリー子爵家次男の、ジェリド=ブラッドリーです。残念ながら将来的に継ぐような爵位はありませんが、よろしくお願いします」
爵位が上がると言う話はあくまでも内密の話であり、正式な発表はまだされていない。伯爵家に上がると言う話は貴族会で出ているので、知る者はいるだろうが、決して触れ回るようなことではない。
「この学園にいる間は爵位など関係ない。私は君と友人になりたいと思い声をかけただけだ。それに君ならおそらく、卒業時には爵位を得ているだろう」
「兄さんの言う通りさ。それと、実はもう一つ目的があって、妹が君を一目見てからずっと気になっていたらしいんだ」
「えっ!?」
「エ、エリオス兄様っ!? そのようなストレートな言い方――」
レミアスさんがエリオスさんの袖を引っ張りながら、恥ずかしそうに頬を赤らめ、俯きながらそう言った。
えっ? 僕、もしかして可愛いという不名誉な形ではなく、ちゃんとした形でモテてる?
現金なもので、二人のその言動の後、僕はレミアスさんのことがさっきよりも少し可愛く見え、彼女がどういう子なのかなど、色々気になり始めた。そんな時、新たに声をかけてくれた人がいた。
「初めまして。私もよろしいかしら? 私はフレイヤ男爵家次女、フレイヤ=ディザイアと申しますの。以後、お見知りおき下さいな」
この子には見覚えがある。実戦試験で精霊魔法を使用し、精霊に土下座した子だ。そしてそのフレイヤさんは、レミアスさんだけを見つめ続けていた。
「……ディザイア、か」
長男のユリウスさんは、一瞬だけ羨ましそうな顔でフレイヤさんを眺め、レミアスさんは落胆したような、それでいてどこかホッとしたような顔になった。そしてなぜか観念したような感じの仕草と声で、よくわからないことを言い出した。
「やっぱり、悪いことって出来ないものなんですね?」
「え?」
「レミー?」
エリオスさんは僕と一緒に困惑しているようだったが、ユリウスさんは何かを悟ったらしい。
「……レミー、そういう事か?」
「はい。ごめんなさい、ユリウス兄さん」
「……すまないジェリド君。今日は一度これで下がらせて欲しい。そして後日、改めて謝罪させてくれないか?」
「えっ? 謝罪?」
「兄さん、どういうこと?」
「一度私もレミーに話を聞いてから君と話したいんだ」
良くは分からないけど、どうやらこの場を離れるのに、わざわざ僕の許しを得ようとしているらしい。
「え、えぇ、構いませんよ?」
ユリウスさんとレミアスさんは、僕・ヒュウムさん・フレイヤさんの順に、一度ずつ頭を下げ、その後三人一緒に先に歩いて行ってしまった。
なんだったんだろう?
「ジェリドさん。あなた少々チョロすぎまわすよ? あんな見え見えのウソに乗せられるなんて」
「えっ、ウソ?」
「えぇ、あれはレミアスさんがあなたに好意があるフリをしただけですわ」
好意を持たれているのかも? と、ちょっぴり期待していたので、僕は本のちょっとだけだけどショックを受けた。
「……なんでそんなことが断言できるのさ?」
「あら? 私の家名を聞いて、なにか気付かれません?」
「……家名? ……ディザイア。……オリビアさんと同じ?」
「えぇ、オリビアは私の姉で、私は妖精や精霊に好かれるディザイア家の人間ですの。そして私達にウソは通じませんの」
伯爵以上の爵位の家と、代表的な子爵家は憶えていたけど、男爵家たるディザイア家のことは忘れていた。
ディザイア家。重要な契約などを交わすときに立ち会い人として招かれる男爵家。キルヒアイゼン家にはシェリアがいるため、ブラッドリー家もキルヒアイゼン家も招いたことはないらしいが、貴族で最も数が多い男爵家の筆頭だ。
ディザイア家の爵位が男爵なのは、貴族が足りないテトラ王国にて唯一の宮爵。妖精のように気まぐれで、領地経営が全く出来ず、国に補佐として送られた優秀な文官にも匙を投げられ、自ら爵位と領地を国に返上させろと言い出した唯一の貴族で元伯爵。
領地の返上は認められたものの、妖精と心を通わせウソを見抜くその能力を、テトラ王国は失うわけにはいかず、領地の返上は許したが、爵位の返上は許されなかったという家だ。
本当にすっかり忘れていた。
「……王国唯一の宮爵。ディザイア家か」
「ムっ!? えぇそうですわよ! でも私がこの学園でしっかりと領地経営を学び当主となり、王に返上した領地を再び頂き、爵位も伯爵まで戻してみせますわ!」
「あっ、ごめん! そういうつもりで言ったんじゃないんだ」
「せっかく助けて差し上げたのに! もう知りません!」
フレイヤさんは頬を膨らませて腕を組み、そっぽを向いてしまう。
本当にそういうつもりで言ったわけじゃないんだけど、今のは完全に僕が悪い。そしてフレイヤさんが来てからのあの兄妹の態度は、明らかにおかしかった。
「本当にごめんね? 無神経な言い方をして。僕が悪かった。それとありがとう。フレイヤさんが来なければ、本当に好意を持たれていると思っていたかもしれない」
「……別に良いですわ。どうやら本当みたいですし。私もあなたの為に来たわけではありませんので」
僕はどこか気まずそうにしているヒュウムさんに視線を向けた。すると彼は一度頭を下げ、僕に謝罪し話し始めた。
「ごめん、ジェリド君。エリオスに君を紹介してくれと頼まれて、おかしいとは思ったんだけど、断れなくて……」
「紹介? 失礼ですが、僕はあなたと以前どこかで?」
「いや、初対面さ。ただ君はいつもリリアーナ様やギルバート様と一緒にいただろ? 僕はキルヒアイゼン公爵の派閥だけど、フェデラー家は違うから、それで仲介を頼まれたんだ」
……派閥か。兄さんは、学園在学中はあまり気にしなくても良いって言ってたけど、やっぱりそんなわけにはいかないのかな?
「僕も変だとは思ったんだ。レミアスは昔から『大きくて逞しい、皆を守ってくれそうな殿方と結婚したい』って言ってたのに、ジェリド君なんて完全に真逆だし」
あえて口に出して指摘するのは、僕が気にしているみたいに思われて嫌なので、ヒュウムさんに軽くジト目を向けて抗議する。
『完全に真逆』ってことは、僕が『小さくて貧相』ってことになるんだけど、分かってるのか? こんにゃろう!
「本当はみんな、すごく良い奴らなんだ。けど、あいつらの領地は一昨年、洪水に備えた大規模な治水工事の最中に洪水に遭っちまって、工事は失敗。川の流れまで変わってしまったらしく、収穫量はかなり落ち込んだはずだ。そのうえ治水工事までやり直さないといけない。しばらくはかなり大変だろうね」
この人、僕の抗議の視線にすら気付いてないよ。
天然か? 天然で失礼な奴なのか?
天然でも、僕はきっとしばらくは憶えているからね? 気にしているわけじゃないけど!
「家や民、なにより兄のことを思って、レミアスは君にハニートラップを仕掛けようとしたんじゃないかな?」
「ハニートラップって……」
「その通りですわよ? 昨夜リジーが『すうっごく罪悪感を感じながらよからぬことを考えている人がいるんだけど、どうしよっか?』と言って、オリビアに相談に来まして、私もその場にいましたから。本当はもう少し前に止めようと思ったのですが、予想以上に行動が早かったので」
「いやいや、だからなんで僕にハニートラップ?」
伯爵家の長女が、なんで継ぐ領地すらない子爵家の次男にハニートラップなんて仕掛けるのさ? もしやるとしても逆じゃないの?
「税制改革以降、ユリウスのフェデラー家みたいに、広大な領地を持つけど、主だった産業がなくて貧乏になった貴族もいれば、僕の家や君の家のように、色んな産業を興して他の貴族の数倍の利益を生む家も多いからね。最近じゃあ最も自由な恋愛が出来たはずの貴族が、利益を上げている貴族と政略結婚。なんてことも珍しくなくなってきた。標的としては君の家なんて筆頭も良いところなんだからね?」
……………………筆頭云々は一旦置いておこう。
税には人頭税(民一人一人に対する税)や、産業税(工場などに対する税)、通行税に所得税など、他にもいくつかあるが、ヒュウムさんが今言った税制改革というのは、9年前に行われた農業と人頭税に関する改革のことだ。
農地の納税方法が、麦や穀物等の生産量に対する比率から、農地面積に対する比率に。人頭税は領民負担から領主負担に変更された。さらに領主から国への納税は、一部地域を除き貨幣での納税のみへと変わったのだ。
今もではあるが、この改革が行われるまで、なんらかの産業を興した領地と、農業のみを行う領地とで、支払う税金にかなりの差があったのだ。
実際、ブラッドリー領が去年払った税金は、農業のみを行う平均的な伯爵領の10倍以上。農業自給率は低いが、所得は高く、領民の生活は豊かだ。
それに引き換え領地を持つ一部の貴族には、その領地から得られる収入に胡坐をかき、豪遊するだけの者も少なくなかった。その為、その領地に住まう民には還元されず、領地による民の貧富の差が出始めた。これは、それを解消するために、ゴールドマン大公が先陣を切って行った政策の一つだ。
――とはいえ。
「僕、もらえる領地すらないんだけど?」
「ブラッドリーと血縁関係になる。というだけでも十分なのではないかしら? それを抜きに考えましても、フェデラー家からすればあなたとは関係を持ちたいはずですわ」
「あぁ、治水工事。兄さんか」
「えぇ、様々な物を発明し、革新的な方法で治水工事を成功させた天才アウラ=ブラッドリー様。私も一度はお会いしてみたいものですわ。ジェリドさん。学園を卒業しましたら、一度ご紹介いただけません?」
「……多分卒業しなくてもすぐ会えると思うよ?」
「? どういうことですの?」
「僕の兄さん、今年からしばらくはこの学園の教師だよ?」
「「えっ!?」」
「でも兄さんにはちゃんと婚約者がいて、妾は取らないから狙っても無駄だからね?」
兄さんが父さんの前で誓ったあの婚約の儀式には、不貞を働けば首を落とす。という意味で行われる者で、共に伴侶が生きている限り、生涯他のものを娶らない。という誓いの儀式。つまり、もし兄さんがハニートラップに掛かったら、兄さんの首は――。
「狙いませんわよ!」
「そうそう。フレイヤが好きなのは僕だから」
「ちょっ!? な、なにをおっしゃってますの!? 私はあなたのことなんてなんとも――」
「えっ? 領地を貰えない俺の代わりにディザイア家の領地を国からもう一度もらって、僕と一緒に暮らしてくれるんだろ?」
――スパーン! ――
「お黙りなさいっ! ぶちますわよ!?」
「そういうのはスリッパで叩く前に言ってくれよっ!?」
「文句があるなら精霊に言いつけますわよ!?」
「すいませんでした。毎晩枕もとで精霊に文句を言わせるのは勘弁してください」
「なら二度と恥ずかしいことを人前で堂々と言うのはおよしなさい!」
「……まぁそれは置いておくとして」
「勝手に置いておかないでくれますの!?」
「迷惑かけてごめんな? ジェリド君」
「良いよ。元々ヒュウムさんにはなんの責任もないんですし。でも代わりにひとつお願いしても良いですか?」
「出来ることなんてほとんどないぜ?」
「僕と友達になってよ? 僕、まだこの学園にリリー達以外の友達って、まだ誰もいないんだ」
僕のその願いに、ヒュウム君は笑顔で応えてくれた。
「もちろん。じゃあこれからはジェリドって呼び捨てにさせてもらうかわりに、僕のこともヒュウムって呼び捨てにしてくれ。それと、僕と一緒にフレイヤの風呂を覗くのは許すけど、フレイヤを好きにな――」
――ドカーン!
「勝手にそんなこと許すな馬鹿! 精霊に殴らせんぞ!?」
「も、もう殴られてるし、地が出て――」
――スパーん!
「お黙りっ!」
その後、観客席でローラとリアナに合流し、皆で一緒にギル達の演舞を見たのだが、すごいなぁとは思ったものの、心が躍るようなことはなかった。
色々言い合いながらも、こっそり手を握り合っているヒュウムとフレイヤさんの姿を見て、先程のレミアスさんやハニートラップのことを思い出す。
僕はなぜか好意どころか名前すらも知らなかった彼女に振られたような気分になり、派手な演舞に大熱狂の観客席の中。僕は一人、新たな友達が出来たことに喜びつつも、ちょっぴり落ち込んでしまうのであった。
中世ヨーロッパの貴族は自由な恋愛が出来なかった。と、お考えの方は多いと思いますが、どうやらそれは正しくも有り、間違ってもいるようです。
まず、中世ヨーロッパというのは、時代的な意味でも土地的な意味でもかなり広いのです。
一般的に中世とは、西ローマ帝国が滅亡した西暦476年から、東ローマ帝国が滅亡した1453年までの約1000年の事をさし、ほとんどの人がイメージする中世ヨーロッパは、近世と呼ばれる時代なのだそうです。
大航海時代や産業革命、フランス革命もこの頃ですね。
ヨーロッパのほとんどの国の貴族が本格的に政略結婚に縛られ始めたのは、産業革命やフランス革命の少し前。中世後期から近世だそうです。それ以前からもありましたが、本格的にほとんどの場所でそうなったのはその頃と言うことです。
もちろん。場所によっては古くからずーっと政略結婚をしていた。と言うところもあるでしょう。しかし、多くの貴族にとっては政略結婚なんて、必要に迫られでもしない限り、わざわざ好き好んでやるような物でもないのです。
貴族と言うのは大雑把に言ってしまえば、自分の領地をしっかり納めて国に税を納めていれば、他の貴族との交流をそこまで強く持つ必要はなく、自分の領地だけでだいたいのことは事足りたのです。
もちろん、戦いを繰り返すような場所なら話は別ですし、時流によっては必要にせまられます。
しかし、日本とは違い主な敵は国内の貴族ではなく、地続きの国外なのです。
国内で紛争を起こせば、その隙に攻められる可能性が高まります。その為、日本のように攻められなくするために、人質として政略結婚で娘を──等と言うことはあまりなかったようです。
ただし、辺境の貴族が隣国に攻められた時に備え、周辺の貴族とのパイプ作りに政略結婚。と言うことはあったみたいです。
他にも有力貴族が権力争いの為に政略結婚を行う。と言うこともやはりあったそうですが、それ以外の大多数。有力ではない貴族からすると、あまり関係がなかったようです。
フランス革命や産業革命の頃には、自分の領地を守る為。又は利益を得るため、他の貴族とのパイプが必要不可欠となり、政略結婚が必要となった。と言うことだそうです。
つまり政略結婚は、時流やその領地の場所によっては必要だったが、その領地の場所や時流によっては不要だった。ということみたいです。
これは数年前、たまたま釣りで知り合ったエストニア人に教えて貰った話であり、大学の先生に聞いたわけでも、私が頑張って調べた。という訳でもないので責任は取りませんが、個人的には納得出来たので、そう言う物だったのだろうと思い、この話を書きました。
まぁ間違っていても、この話はフィクションなので問題はないのですが(笑