表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺はいったい何者だ? 記憶喪失からの成り上がり  作者: どんちゃん
第一章・現状把握とブラッドリー子爵領
6/75

第4話 ブラッドリー子爵領へ

気付けばブクマが3人に増えててとても嬉しかったです。

これから頑張りますのでよろしくお願いします。

 ブラッドリー子爵はリリーさんが泣き止むのを待ってから口を開いた。


「では君──ジェリド。これからは私の息子と言うことで良いかな?」


 正直この流れでは俺に拒否権なんて無い気がしたが、拒否しようなんて元々思っていなかったので迷うこと無く答えることが出来た。


「はい。ブラッドリー子爵と辺境伯さえよければお願いします」


「アルバートもそれで良いかな?」


 辺境伯が困ったような顔で笑いながら、先程まで座っていた椅子まで歩いていき椅子に座ると、俺の頭を優しい顔をしながら撫でた。


「私にはまだ娘しかいないから、ジェリドのことは息子のように思っていた。その息子を連れて行かれると思うと少し寂しいね。娘を嫁に行かせるのもこんな気持ちなのかな? 

 ジェリド。ここに君がいるのは明日までだ。それ以降は王立学園の推薦状を取りに来るその日まで、我が屋敷を訪れることを禁ずる」


 辺境伯は立ち上がり、そのまま扉の方へ歩いて行く。そしてセドリックさんもそれに続いた。


 辺境伯は自ら扉を開き、こちらに視線を向けることなく去って行き、セドリックさんは部屋の外で扉が閉まらないように立ち、ブラッドリー子爵に声をかけた。


「ブラッドリー子爵には客室を用意してあります。案内させて頂きますので、こちらにお越し下さい」

「わかった」


 そしてセドリックさんとブラッドリー子爵が部屋を出て行き、部屋にはリリーさんと俺だけが取り残される。リリーさんが俺の枕元まで歩いてきた。泣いて化粧の取れてしまった顔は、思っていたよりも幼い。多分1つか2つしか違わないだろう。そのようなことを考えていたら、急に彼女に布団を剥ぎとられた。


「上着を脱いで」

「……? なぜですか?」

「治癒魔法をかけるのよ。昨日は風穴を塞ぐことしか出来なかったからまだ体中痛いでしょ?」

「ありがとうございます」

「我が為にかの者の傷をいやしたまえハイヒーリング──敬語」

「……?」

「私に敬語とかやめなさいよね? なにさっきの? 『お待ち下さいリリーさん』って。これからは今まで通りにリリーって呼ぶか、昔みたいにお姉ちゃんって呼びなさい。──はい、終わったわよ。まだどこか痛い所はある?」

 

 上体を起こして体を動かしてみる。うん痛い所はどこにも無い。


「どこも痛いところは無いよ。ありがとうリリーお姉ちゃん」


 リリーさんの顔が真っ赤に染まる。……なんで? 

 リリーさんは俺を寝かせ、上から布団を掛けてくれた。

 唇をプルプル震わせながら真っ赤な顔のままで。


「安眠の魔法とおまじないをかけてあげるから、痛いところが無いなら目を閉じてさっさと寝なさい! かの者に安らかなる安息を与え給え、スリープ」


 言われたとおり目を閉じて横になった──んだけどあれ? ……全然眠くならない。即効性の魔法じゃないのかな? とか思っていると、リリーさんがベッドに腰掛けて俺の髪を撫で始めた。


「あぁもぅ! リリーお姉ちゃんなんて初めて言われたわよ!? 最近は生意気だったのにこれだけ格好良くなってからリリーお姉ちゃんって何よっ! バカっ!!」


 ヤバい!! これ絶対寝てると思ってるよね!? どういう訳かはわからないけど、眠りの魔法は効かなかったらしい。ど、どうしよう? と、色々考えながら寝たふりをしていると、リリーさんが僕の頭を撫でながら、優しい声で僕に語りかける。


「ブラッドリー子爵の所に行っても頑張りなさいよ? でも、私のいないところで怪我だけはしないでね? お休み、ジェリド」


 ──チュッ──


 俺の頬に優しく柔らかい感触を残しつつ、リリーは部屋をあとにした。

 僕はなんだか恥ずかしくなり、布団で顔を隠しつつ呟いた。


「……どうしよう。安眠のおまじないが強力すぎて、全然安眠出来そうにないよ……」




 ▽



 カーテンが勢いよく開かれ、室内に陽射しが差し込む。

 俺はあまりの眩しさで目を覚ます。

 ──眩しい。でもすっごく眠たい。結局眠れたのは少し明るくなり始めた頃だった。


「おはようございますジェリド様。昨晩はよく眠れましたか? そして傷の痛みや記憶はどうでしょうか? 現在痛みは御座いますか?」

「おはようリリー。リリーのお陰で痛みは無いしよく眠れたけど、残念ながら記憶の方は相変わらずみたい。……それより、なんで敬語なの?」

「昨日の今日で記憶が戻ることは流石にございませんでしたか……。もし痛みが出たら、遠慮無くお申し付け下さい。敬語なのは、お客様が私の同僚ではなく、ブラッドリー子爵の御子息となられたからであり、私は元々公私はわけておりますので。ジェリド様こそ、本日はリリーお姉ちゃんとは呼ばれないのですね?」


 敬語で話されるのは、距離を感じてなんだかちょっとやだな……。


「体は本当に大丈夫だから。それとこれからはリリーって呼ぶことにするよ。お姉ちゃんはやっぱりなんか照れくさくって」

「左様でございますか? せっかくお可愛らしかったのに残念です。

 服を着替えて食事を取られましたら、階段を降りて右の通路の突き当たりの部屋までお越しください」

「わかったよリリー。ありがとう。でも食堂でみんなで取るわけじゃ無いんだね?」

「私を含めた使用人共は、既にみな食堂で朝食を済ませております。旦那様とブラッドリー子爵は、これから食堂で朝食を取られる頃かと存じます」

「子爵や辺境伯と一緒じゃ無いのはわかるんだけど、リリー達と朝食一緒じゃないのはなんでなの?」

「あなたは今日から旦那様の使用人ではなく、ブラッドリー子爵の御子息だからです。旦那様やブラッドリー子爵と朝食が別なのは、ブラッドリー子爵が旦那様にジェリド様の事を聞きたいとおっしゃっていたからだと愚考します」


 ……なる程。俺の前では聞きにくいことも有るだろうし、俺としてもその方が有難い。


 リリーが出て行った後、服を着替えて朝食のパンとスープを食べ、リリーに言われた部屋へと向かった。

 部屋に入ると数人のメイドと10人程の騎士がいた。

 ここにいるメイド達のメイド服は、リリーのメイド服とはデザインが違い、色も少し落ち着いた色になっている。そしてそのメイド達の中で、一際きびきびと動きながら無表情で指示を出し続けている人がいるのだが、その人は俺を見るなり柔らかな表情で声をかけてくれた。


「旦那様とブラッドリー子爵はただ今会食中です。会食がお済みになり次第出立成されるとの事ですので、こちらでしばらくお待ち下さい。そしてお待ちいただく間に、キルヒアイゼン家使用人を代表して一言よろしいでしょうか?」

「はい。どうぞ」

「これからの言葉は、ブラッドリー子爵の息子のジェリド様としてではなく、キルヒアイゼン家元執事見習いとしてのジェリドに向けた言葉としてお聞きください」

「わかりました」


 たぶんこの人がリリーのお母さんで、メイド長のロッテンマイヤーさんだな。昨日のリリーの声帯模写と声が全く同じだ。ロッテンマイヤーさん(? )は、柔らかな表情でそう言うと一礼し、俺の返事を待ってから頭を上げた。

 頭があがった後の表情はいきなり無表情になっており、そのまま語り出した。


「あなたはこれからブラッドリー子爵の息子となりますが、記憶を無くしたとは言え、キルヒアイゼン家の元執事見習いでもあった事実は変わりません。あなたの行動はキルヒアイゼン家の評価を高めることにも貶すことにも繫がります。それを自覚しての行動を、キルヒアイゼン家使用人を代表して期待します」


「お母さんは相変わらず堅いんだから、ようはこれから頑張れって事よ。それと、あちらに座っているのが本日あなたとブラッドリー子爵を護衛してもらう騎士達の隊長で、エレドアさんよ。何かあれば彼に言ってもらえば良いわ」


 あれ? 公私はわけるんじゃなかったの? もちろんこっちの方が嬉しいけど。そう思っていると、顔に出ていたようでリリーがすぐに答えてくれた。


「今日は私、非番なの。ジェリドを起こしに行くのも今日が最後だから、お母さんにちょっとだけ仕事を代わってもらったの。ジェリドもお母さんに起こしてもらうより、幼なじみの美少女に起こしてもらう方が嬉しいでしょ?」


 リリーがドヤ顔でそう言う。自分で言うなよとも思ったけど、やっぱり朝の敬語より彼女はこちらの方が俺としては嬉しい。


「そうなんだ? ありがとうリリー。そしてわかりましたロッテンマイヤーさん。キルヒアイゼン家の元執事見習いとして、恥ずかしくないように向こうでは頑張りたいと思います。エレドアさんも今日は宜しくお願いします」


 そう言うとロッテンマイヤーさんは満足そうにうなずき、再びもの凄い勢いで指示を出し始めた。そして俺とエレドアさんは互いに頭を下げ合う。

 

 ……護衛は10人か。先日は30人いて襲われたらしいけど、その程度の数で大丈夫なのかな? ……イヤ、つけて貰えるだけでも有り難いと思わないといけないよね。

 そんなことを考えていると、こちらの様子を見ていたエレドアさんが、何かを察したらしく声をかけてきた。


「私達はどちらかと言えば帰りの馬車の護衛のような者です。行きは馬車にブラッドリー子爵の旗を立てた上で私達が同行しますので、襲ってくるとしても狼や魔物くらいの物でしょうから」

「ブラッドリー子爵の旗が立っていて、キルヒアイゼン家の家紋が入った甲冑を着た騎士が護衛している馬車と言うことは、中にいるのはブラッドリー子爵だと容易に想像がつくから誰も襲ってこようとする人間はいないって事よ」


 ……? 子爵が居ることがバレているなら、尚更警護を固めるべきじゃないのかな? と考えていると、隣の部屋からメイドが入ってきた。


「間もなく会食がお済みになりますので、エレドアさん達は馬と馬車の準備を。ジェリド様はホールでお待ち下さい」

「わかりました。リリー、それに皆さん、今までありがとうございました。行って来ます」


 メイドに言われたとおりホールで待っていると、ブラッドリー子爵がセドリックさんと共に現れたが辺境伯はいない。


「おはようございますブラッドリー子爵」

「おはよう。待たせたね、では行こうか」

「ブラッドリー子爵。すみませんが出立の前に辺境伯にご挨拶をしたいのですが……」

「アルバートなら『挨拶は昨晩済ませた。次に合う日を楽しみにしている』と言っていたよ」

「……そうですか」


 なら今会うわけにはいかないな。


「では行こうか」

「はい」


 ブラッドリー子爵と同じ馬車に乗り出発した。馬車の中では2人っきりだ。

 ……道中終始無言だったりしたらどうしよう? 



 ▽



 馬車は広い石畳の上を走り、街の中を行く。

 馬車が走った道は、狭いところでも道幅は10m以上有り、その中央の6m程が石畳で、その両サイドは普通の地面ではあるが綺麗に整地されていた。道の両サイドには店舗型の住宅が並んでいて活気がある。


 広い道を抜けて街門を通り、馬車は街道を走る。街道も終始広く、道が狭くなることはなかった。


 僕達の馬車を守る騎士は、馬車の前に4人と、馬車の両サイドに1人ずつ。後方には4人という隊列で、全員が馬に乗っている。

 馬車の中の空気は、俺が不安に思っていたようなことは無く、終始明るい雰囲気での会話が続いていた。


 俺には記憶が無いため、基本的にはブラッドリー子爵が話し、それについて俺が質問する形だ。


 俺には6つ年上のアウラという従兄弟がいて、その従兄弟がブラッドリー子爵家を継ぐ予定だが、武の才能は全くなかったらしい。その代わり人一倍勉強したため、とても頭が良いと教えて貰った。


 子爵の夫人、つまりは従兄弟の母に当たる人物は、俺の母と同じで従兄弟が産まれたときに出産に耐えきれずに亡くなったが、とても綺麗な方だったらしい。


 アーノルド=ブラッドリー子爵は、元は平民であり、先代のキルヒアイゼン辺境伯の推薦により王立学園に入学し、卒業と共に男爵位を得て、数年前の戦争でたてた戦功により子爵の位を頂いたということ。


 先代のキルヒアイゼン辺境伯に推薦されたのは、当時のアルバート様に見出された為であり、彼には感謝しても仕切れない思いを抱えているということなどを話してくれた。


 そこまで話し終えると、ブラッドリー子爵はなにかに気付いたらしく、窓を開けて外を見渡し、エレドアさんに止まるように指示を出す。

 護衛の人数は先日襲われた時よりかなり少ない。

 ……やはり賊が現れたのか? 


「ちょっと待っててくれるかな?」

 初予約投稿

 ブクマ頂いた方ありがとうございます。

 これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

 これからは休みに書いてだいたい3~5日おきに更新していこうと思います。


 次回は半分馬車の旅です。

 馬車の中で語られるブラッドリー家の名前の由来。

 そしてブラッドリー家長男の名前の由来も教えてもらいブラッドリー家の長男登場です。



次回投稿は1/11の01:00「ブラッドリー子爵領」を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『嫁がダメなら娘になるわ! 最強親子の物語』下記のリンクから読めます。自信作ですのでこちらもぜひお願いします

https://t.co/OdPYRvFC5n

上のリンクをクリックすると読むことができます。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ