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第3話 誓い前編

1話で終わらなかった……書く前は6500文字くらいかと思っていたのに6000超えても終わりが見えなかった。

今日中に2話目を投稿します。

 現在僕らは、ローラが昔暮らしていたという第6開拓村の近くまで馬車で来ていた。


 馬車の御者は僕だ。


 当初の予定では、ロイドさんが村長を務める村で休憩する予定だったけど、ローラの希望で、その手前にある第6開拓村に寄ることになった。

 第6開拓村でローラのお父さんのお墓参りをしつつ馬を休め、ロイドさん達には挨拶だけ済ませてそのまま通過するという事になったんだけど……


 馬車内は、異様な空間と化していた。

 どう異様かと言うと、まず僕の右隣に座るレイラだけど、レイラは非番の時には割と表情豊富で、活発と言う訳ではないが、明るい性格をしている。なのに今、そのレイラの顔には来客用の綺麗な微笑みが浮かべられており、ローラの方を何度かチラチラと見ては話し掛け、その都度その綺麗な微笑みにはヒビが入り、空気が凍る。そして、空気は凍っているのに、実際外は少し肌寒いくらいなのに、僕からは変な汗が流れる。


「ローラちゃん。無理して明るく振る舞わなくてもいいんですよ?」

「大丈夫なのレイラちゃん。レイラちゃんは今日お休みなんだから、ゆっくりしてると良いの。私もジェリド様のお部屋のお掃除とお布団干し終えて、今から休憩なの」

「……」


 そしてまたレイラの微笑みにヒビが入りレイラが固まる。

 ローラは終始ニコニコし、リアナをモフりながら応えるが……全然大丈夫そうではなかった。


 リアナはローラに終始モフられながらも、僕にこの場の空気の打開や助けを求めているのだが……僕も既にレイラのようにローラに何度か話し掛け、先程のレイラと同じ末路を辿っていた。

 なので今はリアナに任せるしかない。


(リアナ、もう少し頑張って)

《イヤよ!このローラ、さっきからずっと笑ってるけど、目だけが全く笑ってないのよ!?すっごく怖いんだからね!?》


 そうなのだ。何が一番異様なのかと言えば、先程からローラの瞳孔は開きっぱなしで、会話もまともに出来ないのにニコニコ笑い続けているのである。

 正直とても怖い。鳥肌が立ち変な汗が流れるほどに。


「ローラ、やっぱり今日のお墓参りはやめにしない?」


 ローラが首だけを90度僕の方に回し、瞳孔の開いたままの笑顔で僕を見て口を開く。


「寄る暇なくなっちゃった?」

「そういう訳じゃないけど……」

「なら出来れば寄りたいな。やっぱり一度お父さんにしっかりと挨拶をしておきたから」

「……」


 僕が何者なのか?その答えによっては、僕が二度とこのブラッドリー領に帰ってくるつもりがないという事を、ローラは知っている。そしてそれでもローラは僕について来てくれると言ってくれた。つまり、もしかしたらこれがローラにとって、お父さんのお墓を訪れる、最初で最後の機会になるかもしれない。

 それがわかっているから、ローラは今日お墓参りをする事を望んでいる。でも今のローラはとても普通の状態とは言い難く、この状態ローラを、自らのトラウマを大いに刺激するであろう場所へと連れて行くのは危険……


 ──パチン──


 レイラが突如自らの掌を叩き合わせたので、いったい何事か?と思い、僕はレイラが座る方を振り向くと、ニヤニヤと悪い笑みを浮かべるレイラの姿が、そこにはあった。


「ジェリド君。ローラちゃんのことは私に任せて下さい」

「……うん。じゃあ……お願いするね?」

「任せて下さい。ローラちゃん。ちょっと一緒に荷台の方へ来て下さいね?リアナちゃんもご一緒にどうぞ?」


 レイラが立ち上がり、リアナを抱いたままのローラの手を、問答無用で引っ張り上げ、馬車の荷台の後ろの方へと連れて行く。

 何故か僕の事を、ニヤニヤした笑みを浮かべた表情で、チラチラと見ながら……。

 何故だかとても嫌な予感がする。とても嫌な予感はするのだが、レイラは僕に、自信ありげに『任せて下さい』と言ってローラを連れて行ったので、レイラに任せることにした。


 暫くすると、2人とリアナが御者席に帰ってきた。

 レイラは万弁の笑顔で僕の右隣に腰を下ろし、ローラは顔を真っ赤にして、リアナを抱いたまま、僕の左隣に遠慮がちに腰を掛けた。


「レイラ。ローラになにをしたの?またはなにを言ったの?」

「大したことは言ってないですよ?事実を正確にローラちゃんに教えただけです」

「……ローラ。レイラになにを言われたの?」

「べべべ、別に特別なことはなにも言われてないよ!?」


 ローラが手で顔をパタパタ仰ぎ、レイラはニヤニヤ笑いながらローラと僕を交互に見る。


(リアナ。なにがあったか教えて?)

《ダーメ。私達は今、乙女同盟を結成したの。そして乙女同盟の会議の内容はジェリドにも秘密よ》

「リアナちゃんに聞いても無駄ですよ?」


 僕がリアナを見ていたことから、リアナに聞こうとした事がレイラにバレたらしい。


「もう聞いて断られた後だよ。それより乙女同盟ってなんなの?」

「リアナちゃん!?」

「まぁまぁ、ローラちゃんも落ち着いて下さい。内緒にしてくれたんだから良いじゃないですか?ジェリド君。乙女には色々あるんですよ?乙女同盟は私達乙女の絆なんです」


 言っている意味は全然わからないけど、ローラの顔が真っ赤なことを除けば、普段通りに戻って良かった。


 念の為ローラの顔を両手で掴み、僕に向けて表情。特に目を確認する。

 瞳孔はちゃんと閉じているし、焦点も合っている、もう大丈夫そうだ。


「ジェ、ジェリド様?ここんな所でキスなんてされたら困るよ!?」

「いやしないから!」

「……しないの?」

「しないよ!」


 うん。いつもの元気で少しおかしなローラだ。何はともあれレイラに任せて良かった。


 ローラのお父さんのお墓は、村から少し離れた森の中にあり、ローラがお墓の場所を知っていたため、村の人に会わずにローラのお父さんのお墓に来る事が出来た。


 ローラのお父さんのお墓は、白く綺麗な長方形の墓石だ。

 サイズの概算は、高さ80㎝横50㎝で、厚みが20㎝くらい。墓石の正面には名前が彫られていた。

 お墓の周りは綺麗に草が刈られていたので、誰かが定期的に手入れをしてくれているのかもしれない。


 ローラはお墓の正面に行くと振り返り、真後ろにある木を眺め始めた。


「ローラ?」

「お墓の正面にある木だって聞いたから、きっとこの木なの」

「ローラちゃん。なにがその木なんですか?」

「きっとこの木が、あの時私が登った木なの」


 ローラはその木の方へ歩いていくと、飛び跳ねながら木の幹の部分に手を伸ばすが、幹の部分は地面から3m程の高さが有るため、いくら飛び跳ねても届かない。


「ローラちゃんのお父さんは凄い人だったんですね。

 今にも熊に襲われそうなときに、そんな高いところまでローラちゃんを命懸けで逃がしてくれたんですから」

「そうなの。パパは凄く力持ちで優しくて、とっても自慢のパパなんだよ?私が今生きているのもパパのお陰なの。なのに今まで一度もお礼を言いに来れなかったから、今日はどうしてもパパにお礼を言いたかたったの」


 そう言うとローラは、墓石の方へと歩いて行き、墓石の前にしゃがみこみ、墓石を撫でながら話し始めた。


「ありがとうパパ。パパのお陰で私は元気だよ?友達が一人もいなかった私にも、たくさんお友達が出来たんだよ?それにこんなに美人な親友まで出来たんだよ?」


 ローラがレイラの方を振り向き、レイラを呼んでお父さんに紹介する。


「あとね、私ブラッドリー子爵の息子のジェリド様の専属になったんだよ?凄いでしょ!ジェリド様はスッゴく優しい人なんだよ?最初は小さいし女顔だから、女の子かと思っちゃったけど、最近いきなり背も伸び始めたんだよ?」


 名前を呼ばれてすぐにローラの後ろに立ち、ローラのお父さんに頭を下げながら心の中で挨拶したけど、ローラ。その紹介はひどいよね?いくらお父さんの前とは言え怒っちゃうよ?


「リアナちゃんリアナちゃん」


 ローラがリアナを手招きして呼び寄せ、リアナの前脚の付け根、人間で言うなら脇に当たる部分を持ち、ブラーンとなった常態のリアナを墓石の前に翳した。


「この子がリアナちゃんって言って、伝説の神獣のフェンリルちゃんなんの。パパが一度は会ってみたいって言ってた神獣の端くれなんだよ?」

《端くれ!?》


 伝説の神獣の辺りから、おそらくドヤ顔になっていたと思われるリアナは、端くれ発言を聞き、凄い勢いで体ごとローラの方を振り向き思念波で突っこみを入れた。リアナ、残念だけどきっと僕にしか聞こえてないよ?


「私、あれからたくさんお勉強して字だって読めるようになったんだよ?でもやっぱり、パパの方が凄いよね」


 ローラはリアナを右脇に下ろし、墓石に書かれた文字を読み始めた。


「『己の娘を守る為 熊へと立ち向かい 娘を助けた英雄ローレン ここに眠る』英雄ローレンだって、凄いね……パパ」

《ジェリド。人間が1人来たわよ》

(嫌なタイミングで……村の人かな?)

《そんなことまではわからないけど、走ってきてるわね。もうすぐ後ろから出て来るわ》


 村長は代わったはずだけど、ローラやローラのお父さんに辛い想いをさせたのが村長だけとは思えない。わざわざ走ってくると言うことは、おそらく僕らが居ることを知った上で来ているハズだ。ならローラか僕に用がある人だろう。

 もしローラを傷付けてしまうような相手だったら?……いや、おそらく大丈夫だ。そういう人物ならわざわざ僕らの前に姿を見せるとは思えない。

 ローラのお父さんの事件の後、当時の村長は本国に送還され、その後炭坑送りになり、生きていればまだ炭坑で働いているはずだし家族もいなかったらしいから、逆恨みの可能性も薄いだろう。

 それ以外の人なら、ブラッドリー家の使用人であるローラを、わざわざ僕の前で傷つけるとも思えない。

 もちろん実際にローラを傷つけようとすれば、僕は黙っている気は無いしね。


 ──ガサガサ──


 四角い箱を持ち、息を切らせた男が現れた。


「ローラちゃんかい?」


 ローラが振り返り、現れた男を見た。


「ジムおじさん?」

今日中に2話目を投稿します。

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