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第1話 旅立ち

第二章スタートです

 僕がこの屋敷に来たのが去年の10月で、今は3月24日の夜だ。つまり、僕が来てから既に約半年が過ぎ、今年度の王立学園受験の時期となった。

 そして僕も、父さんから王立学園への推薦状を無事もらう事が出来たので、今年王立学園を受験する事となった。


 今後の予定としては、明日キルヒアイゼン辺境伯の下に挨拶に行き、そのまま辺境伯の屋敷で一泊、そして明後日の朝、辺境伯領を出発し、王立学園のあるヴァーウェンへ向かう予定だ。


 移動には父さんが馬車を用意してくれたので、既に荷物もその馬車に載せてある。


 そして現在僕は、自分の部屋でリアナを膝の上に乗せ、頭を撫でながらローラとこれからの予定についての最終確認中である。


 僕が現在手に持っているのは、王立学園から配布された資料だ。そしてその資料によると、王立学園入学試験の受験申し込みは、3月25日の9時から王立学園内にて受付を開始し、3月31日の18時をもって受付を終了。


 4月1日に筆記試験を行い、その合格者だけが4月3日に行われる実技試験を受けることが許される。

 4月5日に王立学園受験者の合格者発表を行い、合格者は4月12日の18時迄に、学園が用意する寮に入寮しなければ不合格とみなす。

 入寮時には、個人の武器と着替え以外の持ち込みは、お金を含めて原則禁止。


 尚、ペットや使い魔、テイムした魔物や魔獣等については、自分の部屋で飼える物のみ寮内で飼うことを許す。

 寮内で飼えない物については、学園が保有する専用の敷地内で飼える物のみ飼うことを許すが、それらの物が問題を起こした場合、寮管理者、又は当該敷地管理者の裁量により処分を下すものとする。と言った内容だ。


「ジェリド様、大丈夫?緊張してない?」

「あぁ、大丈夫だよローラ。ありがとう。ローラはこの領地から出るのは初めてなんだよね?ローラこそ緊張してない?」

「そこは任せてほしいの。しっかり緊張してるよ」


 今は夕食が終わった後で、僕らは明日目覚めたら辺境伯の下に向かうことになっている。

 僕だけではなく、僕らは、だ。

 僕は最初知らなかったのだが、王立学園には使用人を1人連れて行く事が許されている。その為、ソシアさんはローラに敬語やマナー、勉強等を今日までに叩き込み、学園卒業後ではなく、入学時に連れて行く事を提案した。

 僕が今まで兄さんの部屋で勉強していた時、実は僕の部屋でローラも勉強していたのだ。

 僕が勉強している時にローラがやるべき仕事は、僕の部屋の掃除と僕の指示を除き、ソシアさんとレイラが代行し、ローラは僕の部屋で勉強を頑張っていたのだ。

 僕の部屋で勉強していたのは、僕の部屋が兄さんの部屋の隣だからであり、僕に呼ばれた時すぐに来れるかららしいのだが、僕に許しを得ずに勝手に使っていた事がバレた時、ローラは久し振りにソシアさんに吊された。


「そんなに緊張しなくても良いよ?」

「リアナちゃんが居るとは言え、明日からジェリド様と2人旅だから、ジェリド様がいつ狼になるかわからないの」

「ならないよ!!」

「……ならないの?」

「なんで少し残念そうなの!?」

「そんなことないよ?でもレイラちゃんが男はみんな2人っきりになると狼になるから気を付けろって言ってたよ?」

「からかわれただけだよ」

「なんだからかわれただけなのか」

「だからなんで残念そうなの?」

「そんなことないよ?」

「それにリアナも一緒に行くんだから、2人っきりってわけでもないしね?……リアナももう寝ちゃったみたいだね。それじゃあそろそろ僕も寝ることにするよ。おやすみ、ローラ」

「はぁい。おやすみなさいジェリド様」


 パタン

  


 ~ローラ視点~


 私、実は本当に緊張してるの。

 収穫祭の日から変なの。ジェリドといるとすっごくドキドキするの。


 レイラちゃんにその事を相談したら、根掘り葉掘り聞かれた後、『ローラを診察してあげるから3つの指示を遂行しなさい』って言われたの。


 ①ジェリド様に頭を撫でてもらう。

 これは簡単だったの。お願いしたらやってくれたし、お願いするのもちょっと恥ずかしくかったけど問題なかったの。撫でられてる時はとても幸せだったな


 ②ジェリド様の目を長時間見続ける

 とても簡単だと思ったのに、これが意外と難しかったの。数秒間見てると恥ずかしくなって勝手に目がそれちゃうの。

 我慢して見てると口元が勝手にニヤケ出して、顔が熱くなるし、そうするとジェリド様が笑っちゃって何度も中断されたの。


 ③レイラちゃんが非番の日、ジェリド様に収穫祭前日のお仕事の報酬を貰うから、それを横で見ていなさいって言われたの。

 報酬はジェリド様がレイラちゃんの指定するドレスに着替えて、【小悪魔ポーズのおねだり笑顔】をやる事なの。

 ドレス迄は知らないってジェリド様は言ってたけど、私の伝言に不備があったらしくて、結局ドレスも着る事になったの。

 ごめんねジェリド様。

 ジェリド様が【小悪魔ポーズのおねだり笑顔】をしたら、レイラちゃんが「可愛い」って言ってジェリド様に抱きついてほっぺにキスしちゃった。

 それを見てたらなんだかモヤモヤしてきて2人を突き飛ばしちゃったの。

 なんであんなことしたんだろ?


 あれから余計にジェリド様のことが気になるようになっちゃった。

 レイラちゃんにお仕事以外でジェリド様関連の話をすると、仕事中は真面目に働きなさいって怒られるし、非番の日ならメイド長のところにわざわざ行って、なにかを報告した後、2人で一緒にニヤニヤしながらこっちを見てるの。

 診察の結果を教えてって言っても『診察するとは言いましたが、結果を教えるとは言っておりません』って言って教えてくれないし。


 リアナちゃんがいるとはいえ、明日から私とジェリド様の2人っきりで王立学園に行くのに、本当に色々大丈夫かな?



 ~ローラ視点終了~



 コンコンコン


「おはようローラ。入って良いよ」

「おはようジェリド様よく眠れた?」


 ローラがいつものようにワゴンを押して入ってくる。


「なんとかね。ローラは?」

「私はいつでもグッスリだよ」

「吊られたままでも寝れる子だし、愚問だったね」

「もう最近は吊されてないよ?」

「知ってるよ。リアナのお皿だけ水貰うね」

「ジェリド様は良いの?」

「僕はさっき飲んだから。お皿は後で食堂に持って行くね。じゃあ着替えるから、また食堂で」

「はぁい。じゃあまた後でね」


 僕は着替えをすませ、リアナを起こして水をあげた後。いつもより少し早いけど、リアナと一緒に歩いて食堂に向かった。

 この屋敷での食事は、少なくとも当分の間はこれが最後となる。


 食堂に着くと、すでに兄さんが席について待っていた。

 各専属使用人も既に全員来ていて、あとは父さんが来たら全員が揃う。


「おはようジェリド。リアナ」

「おはようございます兄さん。今日は本当に早いですね?絶対僕が一番だと思っていたのに」


 最近はいつも僕が最初に席につき、父さんと兄さんを待っていたのに、いつもより早く来た今日、僕より早く兄さんや使用人の皆が既にいるとは思っていなかった。

 ちなみにリアナはあの収穫祭の後、兄さんが自作したリアナ専用の櫛をお礼としてプレゼントされ、その櫛を大層気に入ったらしく、それから兄さんにもかなり懐いている。

 現在も兄さんの膝に乗り、可愛らしく「わん」と鳴いて頭を撫でて貰ってからローラの所に歩いていった。


「ジェリドとはこれから当分会えなくなると思うと少し寂しくてね。いつもより早く目が覚めちゃったよ。おはようございます父さん。父さんも今朝は早いですね?」

「おはようアウラ。ジェリド。私もアウラと似たようなものだ。あぁリアナもおはよう」


 最後に父さんが食堂に姿を見せた。


「おはようございます父さん。兄さんも、そう言って頂けると嬉しいです」


 リアナも父さんに、お座りをした状態で前脚を振るという器用な挨拶を返している。

 各専属使用人は既に食堂に居たので、いつもより早くに全員揃い、王立学園の入学試験前最後の朝食は、いつもより早い時間に始まった。


「今日は辺境伯の所に泊まるとして、そこから王立学園があるヴァーウェンまでは馬車で3日かかるけど、道順と泊まる宿の名前はちゃんと覚えてる?」

「大丈夫ですよ兄さん。地図も頂きましたし道順自体もしっかりと頭に入っていますから。それよりは入学試験やクラス分けの方が心配です」

「勉強もしっかりとしてきたし、試験もクラス分けもきっと問題ないよ」


 確かに僕は試験勉強はしっかりとやってきた。

 そして二次の実技試験についても、僕はあの収穫祭の翌日から毎日朝食後、三時間程ラムサスさんに武術の稽古をつけてもらってきた。

 散歩の時間が減り、リアナからは不評だったけど、リアナもなんとか納得してくた。


 王立学園は試験結果によってクラス分けがされるらしく、貴族を目指す僕としてはやはり、一番上のクラスに入りたい。


「あとは友達作りですかね?やはり良い友達が出来ないと、学園生活も味気ない物になってしまうかもしれませんから」

「友達か……ジェリドならおそらくすぐに友達も出来るだろうから心配ないと思うが、今年はアウルの一人娘でレッドリバー家次期当主のステラ殿も王立学園を受験されるそうだ」

「レッドリバー家のステラ様ですか?」

「あぁそうだ。おそらくジェリドと同じクラスになるはずだ。アウルからもジェリドにステラ殿をよろしくという内容の手紙を貰っている」

「ソシア。確かアルベド様も確か16歳だったよね?」

「はい。今年ご入学されると伺っております」

「ブラックスミス家の次期当主候補も、今年で18になるはずだけど、まだ王立学園に入学していないらしいから、おそらく今年入学するんだろうね。

 今年はかなり豪華な顔触れになりそうだね?」

「ではまずはその人達と同じクラスになれるように試験を頑張ります。

 父さん、兄さん。そろそろ行きますね」

「そうか。では外まで見送ろう」

「そうだね。僕も行くよ」

「ありがとうございます。父さん、兄さん」


 僕達は皆で玄関ホールへ向かった。一緒に行くローラはもちろん、父さんや兄さん。ラムサスさんやソシアさんも、僕達を見送るためについてきてくれている。この屋敷や皆とも、これでしばらく……もしかしたら最後のお別れだ。


 玄関扉を開くと、そこにはほとんど全ての使用人達が外で待っていてくれた。

 全部で30人近くいるので、本日非番の人も中にはいるはずなのに、それでもこんなに集まってくれたことがとても嬉しかった。

 昨日リアナが思念波でシロ・クロ・タマ・ジジ達狼四頭にも、僕達の旅立ちを伝えてくれていたので、この四頭も僕達を見送りに来てくれている。

 でも、その中にレイラの姿が見当たらなかったのが少し残念だった。


 玄関前には既に、僕達が乗り込む予定の馬車が街道の方を向いて停まっていた。

 馬車は昨日、馬小屋の前に停めておいたので、本来ならこれから馬を馬車に繋いで出て行くつもりだったけど、使用人の誰かが気を利かせて先に用意してくれていたらしい。


 ブラッドリー家は馬車を3台所有しているが、僕達が乗る予定のこの馬車は、馬車の壁や天井は木でできており、御者席の部分も壁で覆われる一体型となっていて、外側の両側面にはブラッドリー家の家紋が入っている。


 他の2つは2頭だての馬車であり、こちらは1頭で引くタイプの馬車だけど、荷物も少ないし馬車の運転もほとんど初めてなので、僕としてもこの馬車が一番ありがたい。


「では父さん、兄さん。行ってきます」

「あぁ、頑張ってきなさい」

「長期の休みには、ちゃんと戻って来るんだよ?」

「……まだ先のことなのでわかりませんが、なるべく帰ってきたいと思います。それじゃあみんな、見送りありがとう。行ってくるね」

「行って参ります。旦那様。アウラ様」


 ローラが最初の頃とは別人のようにしっかりとした敬語で父さんと兄さんに挨拶を終えると、今度はソシアさんや使用人仲間に向かって手を振りながら挨拶した。


「メイド長。みんな。行ってくるねぇ」


 僕とローラはみんなに挨拶を終えると、馬車の荷台から乗り込んだ。

 これが最後の別れにならないように、まずは今日。辺境伯に自分の事を聞こうと思う。


 僕は自分の中の何者かについてリアナに指摘されたあの時から、僕の中にいるという存在は、いったい何者なのか?それをずっと考えてきた。

 現在ある一番の手掛かりとなるのは、やはり辺境伯だ。

 そして僕の考えが正しければ、真相はどうあれ辺境伯はなにかを知っているはずだ。


 その辺境伯と今日、ようやく会えるんだ。


「じゃあジェリド様、ローラ。出発するよ?ハイヤー」

「「……え?」」


 僕の思考を、とても聞き覚えのある声が御者席からぶった切り、馬車が走り始めた。

 僕とローラとリアナの二人と一匹の旅のはずなのに……何でレイラがそこにいるの?

第二章 王立学園編がスタートです。


年度末で忙しくて現在ストックはまだ無いので、暫くはまったり更新予定です。


ようやくこれから第二章がスタートです。

久し振りの更新ですが、これからまた頑張りますので応援頂けると嬉しいです。

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