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俺はいったい何者だ? 記憶喪失からの成り上がり  作者: どんちゃん
第一章・現状把握とブラッドリー子爵領
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第19話 祝宴

19話です。

 父さんと一緒に玄関を開き中に入ると、玄関ホールには大きな長テーブルが3つと2人がけのテーブルが3つ、ワゴンが5つ置かれていた。

 テーブルには全て白いテーブルクロスがかけられている。


 この屋敷の玄関扉は、片側約1.5m高さ2.5mの観音開きとなっており、玄関ホールには元々開いてすぐの所から、幅2.5m程の赤い絨毯が隣の部屋まで真っ直ぐ引かれている。


 長テーブルのサイズは、幅1m長さが5m程の物だ。

 赤い絨毯の縁から1.5m程離し、絨毯に平行に両側同じ位置から並べられている。

 そのテーブルの切れ目から少し離したところに、絨毯に対して垂直にもう1つ同じ長テーブルが置かれている。


 そしてそれらのテーブルの外側に、合わせて5つのワゴンが置かれており、内3つのワゴンには、恐らくワインと思われる液体がグラスに入れて置かれている。


 2人がけのテーブルは、玄関から見て一番奥の絨毯に対して垂直方向に置かれた長テーブルの向こう側に1つずつ少し離して置かれており、最後の2人がけのテーブルは、3つの長テーブルのちょうど真ん中に置かれていた。


 そのテーブルには、向かい合う形で兄さんとソシアさんの椅子が用意されており、兄さんは笑顔で座りながら、ソシアさんは真っ赤な顔で気をつけの姿勢で玄関を向きながら待っていた。

 ちなみに玄関から見て左側が兄さんで、右側がソシアさんだ。


「だ、旦那様、これはいったいなんのパーティーなのでしょうか?」


 ソシアさんがかなり狼狽えながら、ドアを開けたばかりの父さんに尋ねた。


「婚約記念パーティーだ。少々突然だったので取り合えずは内々の物だがね」

「婚約記念パーティー……ですか? 誰と誰の?」

「君とアウラしかいないだろ?」

「私とアウラ様の婚約記念パーティーですか!?」

「あぁ、そのつもりだったんだが?」

「父さん……ちょっと気が早かったかな? まだ付き合う事にしただけで、婚約は2人の夢が叶ってからにしようって約束なんだ」

「……一緒になる気はあるのだろ?」

「もちろんさ。ソシアは誰にも渡さないよ?」

「……ならまぁ付き合い始めた記念ということでも良いが、なるべく早く結婚してくれることを願っているからな?」

「わかりました」

「では父さんも席についてください」

「わかった」


 そして父さんが、向かって右奥の2人がけのテーブルに腰掛けた。

 さて、僕は父さんの隣に座るべきか? それとももう片方の席か? 

 数秒そんなことを考えていると、ラムサスさんが先に父さんの左後ろに付き、父さんから隣に座るように言われて座った為、僕はもう一つのテーブルに用意された椅子に座った。

 そしてこの並びなら僕の横にはローラが……いなかった。

 皿を配る用意をして待っているメイドから、取り皿を貰おうと必死に交渉中だ。

 恐らく父さんからの一言の後に乾杯。

 僕らのテーブルには料理が運ばれ、残りの人達は立食パーティーを楽しむ形になるのだろう。

 ローラ以外の全員の用意は整っている。

 ……つまり皿を貰って先に食べようと交渉しているローラ待ちだ。

 専属メイドの失態はいつもの事だけど……隣の空席が恥ずかしい。

 いつもならソシアさんがなんとかするのだが、ソシアさんは流石に動けない。

 僕がなんとかしなければ……と思い立ち上がりかけた所で、兄さんがローラに声をかけた。


「ねぇローラさん。座って待つか、皆の食事が終わるまで吊されるか選ばせてあげる。ご飯を食べたいならジェリドの隣に座って少し待っててね? それが出来ないなら主賓のソシアには悪いけど、一度君を吊しに行ってもらうよ?」


 ローラが慌てて僕の隣に座ったのを確認し、父さんが立ち上がる。


「皆それぞれ別に仕事がある者や、休みのところを突然の呼びかけに応え、このパーティーに駆けつけてくれた者達も多数いることに、まずは感謝の言葉を述べさせて貰いたい。ありがとう。そして今日のパーティーを、私としては2人の婚約記念パーティーのつもりで企画したのだが、将来的に結婚はしたいが、それは2人の夢が叶ってからだとアウラが言っているため、今日のパーティーは2人が付き合い始めたことに対する記念パーティーということにさせてもらおうと思う。ここにいる者は皆知っていると思うが、ソシアは10歳の時私に『アウラは私が貰う』と宣言しており、そのための努力を欠かさずに今の能力と、私を含めた皆からの信頼を得ており、交際についてはアウラから申し込んだそうだ。そして2人の交際を私は当然認めている。2人の交際を認めない者が居れば、この場で前に出てきてくれ。………………………そして認めてくれている者達はグラスを手に掲げてくれたまえ。……掲げていない者はいないな? では2人の今後を祈り、乾杯!!」


 「乾杯!!」×約30人


 そして立食パーティーが始まった。ただし、立って食べているのは使用人達だけで、僕と父さんと兄さん、それと各専属使用人達は席に着いて食べる形だ。


 兄さんとソシアさんの分は、メイドが着いて席を運んでいた。

 流石に主賓を働かせる訳にはいかないよね? 


 僕と父さんの分は、隣に座る専属従者が主の意見を聞き、食事を持ってきて一緒の席に着いて食べる形だ。

 使用人と席を共にするなど普通は有り得ないことらしいが、恐らくこれは少しでもソシアさんに気を使わせないための配慮だと思う。


 事前に2人の事を祝う様なことがあるなら、この形にしろと父さんが指示を出していたのかもしれない。

 ただ僕の使用人はその……自由なので、見かねたラムサスさんが僕の分の料理も持ってきてくれている。


 テーブルを見れば、多種多様な料理がずらりと並び、同じ者は1つとしてない。


「……リド……ジェリド」

「失礼しました父さん。なんでしょうか?」

「リアナも呼んであげなさい」

「良ろしいのですか?」

「あぁ。元々普段の食事も私は一緒にしても構わないつもりだったが、最初はアウラが少しリアナを怖がっていたからな。マナーには反するが、これからは家の者だけの時は連れてきて一緒に食べても良い」

「ありがとうございます」


 僕は玄関付近にいたメイドに声をかけ、リアナを呼んで貰った。

 そのメイドが玄関から出て数秒すると、玄関から本来のサイズに戻ったリアナが顔を覗かせた。


《食事中に入って良いの?》


 こう見えてリアナは、意外と僕以外には気を使う。

 僕の立場をリアナなりに考えてくれてるようだ。

 僕が頷き、手でおいでっとすると、リアナが主賓を迂回して邪魔にならないように近付き僕の膝に乗る。

 遅れて戻ってきたメイドに、ありがとうと手を振ると、そのメイドは笑顔で一礼してから仲間のメイドの所に行き話し始めた。


『ジェリド様ってすっごく可愛いよね? 私笑顔で手を振られちゃった』

『良いなぁ思わずギュッてしたくなる時有るよね?』

『あっ、それ凄くわかる。私もローラが言ってたあのお顔見てみたいな』

『あぁジェリド様の入浴中に突撃して、メイド長に怒られてた時にローラが言ってた【小悪魔ポーズのおねだり笑顔】ね? 私も見たいなぁ、今度みんなでお願いしてみる?』


 ……ローラ? なに言っちゃったの? 

 しかも【小悪魔ポーズのおねだり笑顔】ってなに? 

 身に覚えはあるけど、そのネーミングは……。

 どうやら僕は、耳も割と良いようだ。

 もしかするとリアナの影響かもしれないけど、リアナをティム? したのは記憶が戻ってすぐだから、その前と比べるにしてもよくわからない。


《私も前は知らないけど、ジェリド耳はかなり良い方だよ?》

「父さんありがとうございます」

(なにその犬耳みたいな名前)

「今日は皆で祝いたいからな、それにアウラ達の祝いの席に、神獣に参加して貰えばなにか良いことがあるかもしれんからな」

《まぁ良いじゃない? それよりそこの熊肉頂戴》

「リアナにそんな力があるかは別として、凄い人数ですね?」

(一口サイズに切ってあげるからちょっと待って)

「あぁ、急な呼びかけなのにみんな来てくれたからな」

《そのままのサイズでも良いよ? 自分で千切って食べるから》

「そういえば、使用人は全部で何人いるんですか?」

「29人だ」

(そんな事したら僕の膝が汚れるだろ?)

「そんなにいるんですか?」

「あぁ、我が領地は今後発展する事は間違いないが、今はまだ人口も少なくて開拓地に注ぐ金もかかる。だからなるべく人数は抑えているんだが、どうしてもな」

《そこにナプキンがあるし膝掛けにしたら大丈夫よ》

(いいから言うこと聞いて!)

「そんなに多くの使用人が必要なんですか?」

「今は必要ないが、将来を見越して育てているんだ。今はまだ小さな村がいくつかあるだけだが、我が領地は広大なうえに海に面している。船を着けられる海岸まで開拓が進めば、交易も始めるつもりだ。それを管理するには、私やアウラだけではどう考えても管理しきれない。だから代わりを任せられる人材を育てる必要がある。そんな訳で、今は人数を増やしているんだ」

「なるほど」


 リアナの口に肉を入れながら、ふと気になったので聞いてみた。


「ちなみに辺境伯は、どれくらい使用人を雇っているんですか?」

「この間話した時に、正確な数はわからないが800人まではいかないと思うと言っていたな」

「800人ですか!?」

《ジェリドおかわり♪あと声に出さずに話すのやめたんじゃなかったの?》

「あぁ、最もこの数はアルバートの全領地の使用人の数で、直営店の職人や販売スタッフ等も含めての数らしいが、辺境伯の屋敷にいる使用人の数は、護衛も含めて250人前後だと聞いている。彼は他に公爵を含む4つの領地を持っているからな、公爵領の純粋な使用人の数もかなりいるしい」

(この状況で声に出して話すわけにいかないだろ?)


 リアナにお肉をあげながら、疑問に思ったので聞いてみた。


「そんなに雇う必要が有るんですか?」

「自分達の生活のためなら必要ないな。だが領地の人間を雇用することにより、その領民の生活を守るのが目的だ。私も見習いたいのだが、今はまだ開拓と人材育成に金がかかってしまっていてな、ほとんど手が回せないのが現状なんだ」


 自分達の為ではなく、領民の生活のために領民を大量に雇い入れ、その生活を守る。

 ノブレスオブリージュ……貴族の義務か……


「立派な考えだと思います」

「ローラはどうだね?」

「どうというと?」

「……すまんな。この話は今するようなことでは無かった。もしよければ、また明日にでも聞いてくれないか?」

《あっ、次それ頂戴》


 言われた通り串焼き肉を手に持ち、リアナの口の前に持って行き食べさせてあげる。


「……わかりました。ですがそんな中でこんなに盛大にパーティーなんてして大丈夫なんですか?」

「……本当はこのパーティーもかなり厳しいんだが、まぁなんとかするさ。アルバートが気を使ってくれていて、優先的に熊などの動物の毛皮を、彼に利益が出るギリギリの金額で買い取ってくれる約束までしてくれているからな。もしもの場合は私とラムサスで熊狩りでもするさ。なんせ私の領地の大半はまだ手付かずの森だからな」

「その時は僕も手伝います。その代わり僕が同行すると狼は狩れなくなりますが」

「本当に狼が好きなんだな?」

「だって可愛いじゃないですか? 現にこのリアナも、言うことを聞いておとなしく座りながら食べてくれています」

《ジェリド、間に挟まってる玉ねぎ食べて? 私玉ねぎ嫌いなの》

「今も肉を食べるのに玉ねぎが邪魔だから食べてどかしてくれと、図々しいこと言ってますけど、玉ねぎを捨てたりせずに僕が食べるのを待ってます。そう言うところが可愛いんです」

「……神獣は知らんが、もし犬が玉ねぎを食べたらお腹を壊すから、本当に食べれないのかもしれないぞ? 食べ物は考えて与えてあげなさい」

《私もお腹を壊したことあるから、多分犬や狼は食べられないのは本当だと思うわ》


 へぇそうなんだ。

 以後気をつけよう。

 その後父さんと僕で、兄さんとソシアさんにお祝いの言葉を言いに行った。そしてその後、使用人が順に祝辞を述べる。

 兄さんには皆、あくまで礼儀正しく挨拶していたが、ソシアさんには耳元でなにかをヒソヒソ伝えて赤面させたり割とやりたい放題されていた。


 しばらく食事を楽しみ、その後お開きとなった。

 ソシアさんは本当に幸せそうだった。

 ただ僕が兄さんに挨拶に行ったときの、僕を見る兄さんの目が少し気になった。

 今回は今後への布石や繋ぎのような回の為、同日投稿で次話も投稿致します。


 次回予告

 次回はこの国の時代背景や父さんの過去のミスと、それにより生じたローラの悲惨な過去やソシアさんとローラとの関係が明らかになります。


 この作品では現在3話ほど悲しかったり残虐だったりする話を予定しており、2話は書くことがすでに決まっていて、次回がその内の1話となります。




 次回【父さんの懺悔】

 次回投稿は本日の18:00【父さんの懺悔】を予定しております。

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『嫁がダメなら娘になるわ! 最強親子の物語』下記のリンクから読めます。自信作ですのでこちらもぜひお願いします

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