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俺はいったい何者だ? 記憶喪失からの成り上がり  作者: どんちゃん
第一章・現状把握とブラッドリー子爵領
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第12話 リアナ

ようやく作者が大好きなわんちゃん登場です。

 ベローン……ベローン……ベローン


 顔に湿った物を当てられる感触で目を覚ます。

 本日3度目ともなるともう驚かない……犬が顔を舐めているんだ。

 自分を舐めている犬に触れようとして手を伸ばすが、俺の腕は空を切る。そしてまた──。


 ベローン……ベローン……ベローン


 今度は腕ごと舐められた。

 諦めて重たい目蓋を開くと、思わず固まってしまった。


「──でかい……」


 周りで寝てたはずの犬達は既におらず、かわりに俺を舐めていたのは体高3mは有ろうかという巨大な犬だった。

 光を反射し銀色に輝く毛並みに鋭く尖った牙。──というかお前本当に犬なのか? 流石にこんなサイズの犬はいない気が──なんか輝いてるし。

 ブラッドリー家のペット? 


「……流石に無いわぁ」

「大丈夫ですかジェリド様!?」

「ジェリド様大丈夫!?」


 ソシアとローラが玄関から現れて尋ねてくる。


「ソシアさんにローラ。……この子って、ブラッドリー家のペット?」

「「この屋敷でペットなんて飼ってません」ないよ?」

「ならこの子は?」

「こちらが聞きたいです」

「私も聞きたいの」


 ペットじゃないなら野良犬? にしても大きいなぁ……。刺激しないようにゆっくり立ち上がると、その大きさが更によくわかった。

 立った状態の俺よりもかなりでかい。

 体の長さならまだわかるが、立った状態での高さが俺よりかなり高いのだ。

 俺は回れ右してソシアさん達の方に歩き始め──。

 気付けば背を向けたはずの巨大な犬の方を向いていた。


「うっ……」


 ソシアさんが突然膝を着いた。どうしたんだろ? 

 とにかくもう一度ソシアさん達の方を向いて歩き始め。──また巨大な犬の方を向いていた。


「くっ!? うっ……」


 ソシアさんが更に苦しそうにするが、こちらもそれどころではない。

 気付けば今度は体を向けているだけではなく、犬の両前足でガッチリ捕まれていたのだ。思わず背筋が凍る。


 クゥーン。クゥーン。と鳴きながら、頬吊りされる。

 とりあえず懐かれてはいるらしい。


「……ソシアさん。大丈夫ですか? それとこの子って何かわかりますか?」

「……私の結界を砕くほどの、強大な魔族か魔物としかわかりかねます」

「──魔族か魔物なの?」

「はい。先程何らかの魔法を発動してジェリド様を捕獲していましたし」


 ……そうだよね? 俺、後ろ向いて歩いてたのに、気付けば元の位置に元の向きで向き直ってたうえ、この犬(?)にガッチリ捕まれてるもんね? 

 するとこの犬(?)は、ガッチリ俺を捕んだままの前足を上げ、自分の背に乗せると、回れ右して森の方へと走り始めた。


「ジェリド様!? お逃げ下さいジェリド様!!」

「ジェリド様どこ行くの?」


 逃げれるものなら逃げたいけど、下手に動けば落ちそうだし、なにより今は危害を加える気は無さそうだけど、下手に動けば気が変わるかもしれない。


 走り始めて数十秒くらいたった頃、俺は徐々に冷静になり始め、風圧を感じないことに気がついた。

 景色は物凄い勢いで流れているのに、体に当たる風はとても穏やかだ。目を開けていても風が全然気にならない。

 乗り心地は……馬より快適そうだ。俺は辺りを見渡そうと頭をあげ──


 ──ゴンッ! ドサッ


 頭をあげた瞬間、目の前にとても太い木の枝があり、それにぶつかり落ちてしまった。

 背中から落ちたので背中がとても痛い。

 落ちるときに引っかけたらしく、腕に切り傷があったが、ぶつけた顔は全く痛くなかった。

 俺を乗せて走っていた巨大な犬(?)は、俺が落ちたことに気づいて直ぐに戻ってきて傷口を舐めてくれた。

 大丈夫だよ。と、鼻の辺りを撫でていると、腕の傷から痛みが消えていくのを感じて腕を見る。

 小さな切り傷だったとはいえ、確かにあった傷が消えていた。


《ごめんね。痛かったよね? ごめんね。一緒に走りたかっただけなのに、痛い思いをさせちゃってごめんね》


 どこからともなく頭の中に女の子らしき声が響いてきた。


「……これは、君の声?」


 巨大な犬(?)が辺りを見渡しまた俺を見る。


《……この人間、もしかして私に言ったの?》

「そのつもりだけど?」

《……なんで私の思念波がわかるの?》

「なにそれ?」

《私達の言葉だよ。声じゃなくて心で会話するの》

「へぇ……そうなんだ? 便利だね。ところで君は魔族なの? それとも魔物?」

《……失礼な。私は神獣。人間からはフェンリルって呼ばれてるよ?》

「……そうなんだ? 名前はなんて言うの」

 顎を撫でると気持ちよかったようで、もっと撫でてと言わんばかりに頭をおろしながら答えてくれた。

《だからフェンリルよ……あっ首の後ろもお願いね》


 フェンリルか……聞いたことがないけど、これはきっと種族名だよね?


「名前はなんていうの?」


 目がトロンとしてきてた。本当に気持ちよさそうだ。


《だからフェンリルよ》

「それ種族名だよね? 君の名前は?」

《私達は産まれて直ぐに独り立ちするし区別する必要なんてないから名前なんて無いわよ?》

「それ、寂しくない?」

《……寂しい?》

「例えばこれから俺が君のことを呼ぶとしたらフェンリルって呼ぶ事になるんだよね?」

《それがどうして寂しいの?》

「俺が仮に今日一緒に寝てた4頭の犬を呼ぶとして、名前を付けないなら全員犬としか呼べない訳だけど、これって種族名であって特定の犬を呼んでるわけじゃないから、誰を呼んでるかわからないよね?」

《私と同じ種族なんてまず会えないから区別する必要なんて無いと思うよ?》

「そうかもしれないけど、俺はこれからあの犬達にクロとかシロとかタマとかジジとか名付けるかもしれないよ?」

《付けたら良いんじゃないの? それとさっき周りにいたのは犬と言えば犬だけど、人間の区分でいくと狼だと思うわよ?》


 ……あの子達、犬じゃなかったんだ……。


「俺がその狼達に名前を付けて呼ぶのに、自分だけ種族名って寂しくない? 名前って欲しくないの?」

《……ならつけてよ。》

「俺が付けて良いの?」

《……欲しくなったから責任取ってつけてよ》

「名前ってどうやって付けるの?」

《知らないけど可愛いのをお願いね》


 ブラッドリー家はレッドリバー家から名前を取られていて、アウラ兄さんはアウル様から名前を頂き名付けられている。

 その娘のステラさんは、アウラ様から名前を取って付けられている。

 名前というのは誰かから取って付けるのが主流なのかな? 

 ならこの子は俺から取って──ジェリー? 

 悪くはない気がするけど、余りにもそのまんまだよね? 


「うーん。ジェリ……ジェナ……リナ……リリア……リアナ……ジェリアーナ……ジェリアナ……」


 ……なんで俺とリリーの名前をくっつけたんだろ? 恥ずかしい。この子も傷を癒してくれたから、思わずリリーを連想してしまい【リリアーナ】→【リリアナ】→【リリアとリアナ】と考えてしまった。


《それにするわ》

「それってどれ?」

《ジェリアーナよ♪これから私はジェリアーナね♪》


 俺は愕然としてしまった!

 どう考えても俺とリリーから付けられているのはバレバレだ!

 ……これがリリーや辺境泊にバレたら、とても恥ずかしいことになる。

 いや他のだれにバレても恥ずかしい。


「なんでそれなの!?」

《リリアとリアナの時もとても暖かそうな顔してたけど、ジェリアーナの時にはとても幸せそうな顔してて愛情がすごく伝わってきたからだよ。愛情の籠もったその名前を頂くわん♪》


 その後、リリーの話もして名前を変えてもらえるように交渉し、なんとかリアナで落ち着いた。


《私はこれからリアナね。よろしくぅ》

「うん。これからよろしくな! リアナ」


 ──ドクン──


 直後心臓が大きな音をたて、何かが繋がる感じがした。リアナも同じらしく、驚いている。


 なんだ今のは?


《……さぁ? なんなんだろうね?》


 ……あれ? 俺今声に出してたっけ?


《……口は動いてないわね》


 だからなんでわかるの!?


《なんでもなにも、逆になんで思念話で話してるの?》

 そんなの使ってないし、そもそも使い方もわからないんだけど? 

《でも間違い無く思念波よ? 龍と話す時と同じ感じだし》


 考えたことがすべて伝わるの?


《思念波は喋ろうと思ったことがダイレクトに伝わるだけで、考えたこと全てが伝わる訳じゃないわよ?》


 そうか、なら試しに別のことを考えてみよう。喋ろうとせずに考えてみるだけだ。

 ……なにを考えようかな? ……目の前にはリアナがいる。リアナ……リリーは元気かな? 

《この子が私の名前の元になったリリアーナね? 私と同じで可愛いじゃない♪》


 ダメじゃんっ!? むしろなんでリリーの姿がわかるの?


《……さぁ? 思念波じゃ頭に映像見せるなんて出来ないわよ?》


 ならどうやって話してるの?

 

《………………………………》


 今なにか考えてる?


《ちゃんと色々考えてるもん!!》


 そっちの考えてる事はなにも伝わってこないんだけど?


《……》


 犬の表情はよくわからないけど、今リアナがニヤリと笑ったのだけはわかった。


《犬ってなによ!? 私はフェンリルよ!! まぁ別にジェリドの考えがわかっても問題ないから良いんじゃない?》

「いやっ! 全然良くないよ!? 不公平だからね!?」

《女の子の心を覗こうなんてセクハラだぁ》


 はぁ、もう良いよ。口にしなくても伝わるのは楽だし……。

 俺は頭を撫でるのをやめ、背中や腰などに痛みがないことを確認しながら腕や首を回し、リアナに心の中で話しかける。


(悪いけどソシアさん達が心配していると思うから、そろそろ乗せて帰ってくれないかな?)


 リアナは先程とは違い、全く反応してくれない。試しにリアナに触れてもう一度話しかけてみる。


《仕方ないか……突然連れていったから心配してるかもしれないもんね》


 手を離して心の中で話しかけてみる。……やはり反応はない。


 手を触れて心の中で(ありがとう)と言ってみる。


《連れ去ったのは私だからお礼は良いよ。それよりさっきからなにしてるの?》

 触れずに話しかけると声は届かないみたいだったからその確認。


《へぇーそうなんだ? 残念》

(男の心を覗こうなんてセクハラだよ?)

《私は良いのよ♪獣とはいえ神にも近い存在だからね♪》

(そういえばどこに住んでるの?)

《今まではこの先の山で適当に寝てたよ?》

(家というか住処は決まってないの?)

《もう決まったよ》


 ……変な言い回しだな? どう言うことだろ? 


《ジェリドの家に住む事がもう決まってるよ♪》


 なに勝手なことを言ってるんだろ? 俺にそんな決定権なんてないんだけど。


《なら誰が決定権持ってるの? ……このおっさん?》

(人の心を勝手に読んだ上に父さんをおっさん呼ばわりするな!!)

《まぁ良いじゃない? このおっさんを説得してくれるんでしょ?》


 今まで存在すら知らなかった甥がいることが発覚し、その甥を養子にする事になりました。するとその甥は、家に来て2日で犬を拾ってきました。

 体高3mくらいで、体長4m以上。尻尾を入れたら6m近くあります。

 僕を誘拐した獣です。

 自称神獣のフェンリルというらしいのですが、父さん飼っても良いですか? 


《……なんのシュミュレーション?》


(……ちょっと難しいかな?)

《なら帰さないわよ?》

「誘拐!?」

《山の生活も楽しいと思うよ?》

「……帰りたいんだけど?」

《なら説得してね♪?》

「……出来る限りね」


 そして背中に乗せてもらい、首元に抱きつき屋敷に送ってもらった。

 武装した父さんと、ラムサスさんと、ソシアさんの3人が、森から少し離れた所で何かを話していて、その後ろには兄さんと数人のメイドと執事の姿も見える。



「ふぉあぁぁぁぁぁぁえぇぇぁぁぁぁ!!」


 ……今森から出た瞬間にローラのような何かが飛んでいった気がするけど、風で飛ばされただけだし宙に浮くのはなれてそうだから大丈夫だよね? 


「「「………………………………」」」


 突如暴風と共に現れた俺とリアナを前にして、驚愕に目を見開き絶句する、ブラッドリー家関係者の皆様。

 ソシアさんはさっき見てたのに……でもまぁいきなり出て来たら驚くか。

 さてなんて言おう……。


「……ただいま帰りました。ご心配をおかけしたみたいですみません。えぇっと……先に紹介するね? この子はフェンリルのリアナって言うんだけど……父さん、いきなりなんだけどこの子屋敷で飼ったらダメかな?」

 次回予告

 次回は1話まるまるお父さんの視点です。

 さらわれた義理の息子を助けるために、武闘派の仲間を引き連れて森に突撃……

 と思った所にジェリドが魔獣に乗って帰って来た。

 聞けば神獣だというではないか?

 いったいなにがどうしてこうなった?



 次回【神獣が来た】をお楽しみください。

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