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第八話 エルフ公国への進軍

 エルフ公国、長老会議事堂。

『世界樹』の御許に作られた神殿を思わせる建物の中にそれはある。

そこで、ハイエルフの長老達は魔王軍の侵攻を驚きをもって知らされた。



「馬鹿な。魔王軍の侵攻などありえん」



「ここには世界樹の加護があるのじゃ、ここまで魔王軍の手が届くこともあるまい」



「しかし、ワシらだけでも逃げるべきでは・・・・・・」



2000年の平和はこうまでも危機意識を失わせてしまう。

魔王軍20万の脅威に対して、ハイエルフの長老達はどこか現実感を失っていた。

自身の力で勝ち得た平和ではなく、環境に依存した平和を教授し続けた結果ともいえるだろう。


 そんな長老達の目に一匹の黒竜が映る。

窓から見える黒竜に長老達は驚きが隠せなかった。

竜はめったに人前に姿をあらわさない、ましてや此処は世界中の御許、そんなことは歴史上なかったことだからだ。



「竜じゃと馬鹿なっ」



「なぜ、竜が入ってこれる・・・・・・?」



「ねっ、狙いは世界樹かっ!」



「ええいっ、世界樹を守るのじゃ!」



「でも、どうやって?」



 長老達は慌てた。今になってようやく目の前の脅威に目を向けたのだ。

しかし、過ぎた時間は戻らない。もう遅い。


 咆哮が大森林に響いた。次の瞬間、黒竜の口から炎が噴出す。

放たれた炎が勢いを増し、世界樹を包む。

燃え上がる世界樹、その姿は長老達に心を砕くには十分な光景だった。

そして、その竜の背に乗っていた男が飛ぶ、手に持った光り輝くその剣を容赦なく世界樹へ向けて振り下ろす。


 世界樹に一閃。


 刻まれた斬撃により、世界樹が二つに別れ、大地に落とされた。

その日、エルフ公国を護る世界樹が失われた―――。






◇◆◇






 世界樹が切り落とされる少し前。



「なぁ、もう少し早く飛べないのか?」



「竜の姿になるのは久しぶりだからなぁ。そうせっつくな」



 黒竜に姿を変えた竜王の背に乗り、俺は世界樹へ向かっていた。

絶大な加護でエルフ公国を守る世界樹は自身も強力な結界で守られている。

通常であればその結界で傷もつけることすら難しい世界樹だが、例外もある。


 それは竜王の加護だ。

それを身に纏えば結界を素通りできる。

もちろん世界樹を切り落とすとなれば、膨大な攻撃力も必要なのだが。



「見えてきたぞ」



「あれが世界樹か、実際目で見るのは初めてだ」



「切り落とすのだろう?」



 竜王が面白いものを見るように笑う。



「ああ」



 剣に闘気を込める。あれだけ巨大な世界樹を切るんだ、今までみたいな手加減はできない。

 


「があああっ」



 竜王が咆哮と共に炎を吹く、その炎が世界樹を包んだ。

剣に込めた闘気が輝きだす。

よし、そろそろいけるか。


 竜王の背から飛んで剣を振り降ろす。



「うおおおおおおおおおおおおっ」



 闘気で何倍も長くなった剣が世界樹を両断した。

ズッズッと不気味な音が鳴り、切り口から別れた幹が大森林の木々をなぎ倒して大地へ落ちる。



「本当にやりおったか」



 竜王に拾われて、背に乗る。



「さすが、世界樹だ。だいぶ闘気を持ってかれた」



「はっははは、良いものが見れた。感謝するぞ、涙の勇者よ」



 大空には竜王の笑い声が響いていた。


 


5/31 誤字を修正しました。

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[気になる点] 誤字報告 『自身の力で勝ち得た平和ではなく、環境に依存した平和を教授し続けた結果ともいえるだろう。』 教授 → 享受
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