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第六話 魔王四帝

「「「魔王さま、おめでとうございます!!」」」


 魔王城王座の間、そこに魔王4帝のうち3帝が揃っていた。

そのうち1名は俺が倒してしまったのだが、皆余り気にしていないようだ。

魔族は強者を好む性質だからだろうか、それとも魔族の命が軽いかなのかはわからないが一同に歓迎されている。

今回は最高幹部だけを集めての報告会のようだ。


 魔王4帝といえば魔王軍の雄。

その名前は大陸全土に響き渡っている。

一帝が万軍に匹敵するとまでいわれている強者達である。

一度、戦場にその姿を現せば、戦局を覆してしまうほどのめちゃくちゃな存在である。


「いやーめでたい。魔王様の願いが成就されて我輩も嬉しいですわい」


 祝辞を述べたのが、魔王4帝が破滅のパイモン。

見た目も剛力と呼ぶに相応しい巨大な体躯で前世でいうところの鬼を想像させる姿だ。

たくわえたヒゲがまたその姿を凶悪にしている。

『破滅』の名が表すようにパイモンの一撃は凄まじく、コール平原戦役ではその一撃で王国軍を半壊させた話はあまりにも有名だ。


「魔王様の幸せそうな顔を見ているだけで、我々も幸せになります」


 暴食のバアル。彼もまた魔王4帝一人だ。

貴族のような出で立ちと優男の容姿とは裏腹に我儘な暴力を持つ。


 そして、不滅のアモンもまたにこやかに祝福していた。


「みんなありがとう!」


 魔王マリアの声に集まっていた4帝から拍手が送られる。


「盛大にお披露目式を用意しなくては、魔王様」


 アモンの提案にパイモンが乗る。


「ですな、魔王様。ここはドカンとやらねばなりませんな。ガハハッ」


「貴方がやる気をだすと式を壊してしまわないか心配です」


 バアルが額に手をあてて小さいため息をつく。

その様子からパイモンが過去に何かやらかしたであろうことが見てとれる。


「それはそうと魔王様と勇者様が結ばれたということは、人族との戦争は一時、休戦って事になりますかね」


「それは残念だが、仕方ないのぉガハハッ」


「そのことなんだが――――」







「勇者様はおもしろい事をお考えになりますね」


 俺の提案が気に入ったのか、アモンが口角をあげて答える。

マリアに至ってはヤル気十分という面持ちでストレッチを始めている。

いますぐじゃないから少し落ち着いてほしい。


「ガッハハハ。これは腕が鳴るわい」


「エルフ族に真正面から戦争を仕掛けようとは、勇者様も随分と戦闘狂だ」


 バアルが嬉しそうな笑みを浮かべた。

皆、概ね乗り気なようだ。


「よし、みんな。エルフ公国への進撃準備よろしく!」


「「「はっ」」」


 マリアの号令に魔王軍最高幹部たちが応える。

その声は魔王城に響き渡った。


 その日、魔王軍全軍へエルフ公国進撃の準備の命令が下された。



 エルフ公国、大陸の最西部に位置し、大森林に囲まれたその国は、2000年の歴史を持つ。

王を持たないその国は長老会が実権を握り、それに続いて各氏族が権力を持つ。


 エルフ公国は歴史上、大規模な進軍は受けたことがない。

大森林が自然の要塞として役割を果たしているのが大きな原因だろう。


 そして、もう一つ進軍を拒む理由がある、それはその深き森の中心にある『世界樹』の存在だ。

その『世界樹』が与える加護により、エルフ族は大森林では無類の強さを誇る。


 だからこそ、エルフ族は慢心する。

エルフ公国は今まで一度(・・)も大規模な進軍を受けたことがないと。






 夜の魔王城、庭園。俺はそこで月を眺めていた。

前世ではあまりしない行為だが、元の世界より大きな月を眺めると不思議と落ち着いた。

後ろから近づく気配がある。マリアだろうか。


「マコト」


 マリアが声をかけると、俺の背中にそっとその頭をうずめる。


「マコトを苦しめるものは全て、私が消してあげるからね……」


 マリアの優しく紡がれる言葉が胸に染み渡った。


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