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第四話 王族の嘘2

  血に染まった王座の間でロスティニア三世は切り落とされた腕の傷口を押さえ苦痛にもがき苦しむ。

放っておいてもあと半刻も経たないうちに、血を失い死ぬだろう。

だが、死ぬのはまだ早い。お前にはまだやってもらう役割が残っている。


「まだ殺さないから安心しろ。今はな」


 ロスティニア三世の頭を踏みつけ、見下ろす。


「ぐうぅ……かぁはっはぁはぁ……」


「治癒魔法もかけてやろう」


 俺の言葉に少し安堵の表情が浮かぶ。


「ただし、血を止めるだけだ。その上で傷口に魔法無効の呪いをかける。聖級治癒魔法もってしてもお前の腕を元に戻すことはできないだろう」


 ロスティニア三世は絶望の色に染まる。


「やめ……やめてくれ。ぐぅ」


 震えるロスティニア三世の腕に治癒魔法で血を止め、魔法無効の呪いをかける。

これで宮廷魔術師がいくら魔法を施そうが全て無駄に終わる。

この呪いを解くには大賢者レベルの術士が必要だ。



「王国を敵に回して生き残れると思うな……」


 まだ、そんな威勢をはれる気力が残っていたか。

だが、それでいい。今はまだ始まったばかりだ。

せいぜい踊ってもらおう。



「王よ、ご無事か!」


「おお、ゼルファンか。この者を殺せ……っ!」


 王の守護者ゼルファンか。

相変わらず無駄な筋肉を纏っているな。

それが自身の足枷になっているのがまるで理解できていないらしい。


 ゼルファンは剣を抜き、向かってくる。

直線的なその剣筋は王の守護者に相応しいが、実戦になると話は別だ。

バカ正直な剣は詰まるところ予測し易い。

騙しあいのできない剣など、止まった的と同じだ。


 ゼルファンの剣が床を捉えたときには、すでにゼルファンの背後を取っていた。

床に当たる剣を見てゼルファンは驚愕する。


「退けば良し、退かないというなら」


 剣に力を込めて首筋に当てる。


「くっ、俺は王の守護者! 退くことはない」


 ならば、お望み通り死んでもらおう。

止めていた剣を振り切る。


 ゼルファンの頭と体が離れる。

頭が床に落ちたとき王の顔には絶望が支配していた。


 俺は剣を振り、血を落とす。


「なにが……一体、何が目的なんだ……」


 宰相が絞りだすように口を開いた。


「宰相喋れるのか。てっきり口を無くしかと思ったぞ」


 口角をあげて見下すように話す。


「狸もここにできたら立派だな」


 軽く手を叩いてあざ笑う。

ビクッと宰相が体を震わした。 


「目的か……しいて言うならば、そう復讐だ。お前たちが築いてきた物を全て壊してやるよ」


 そう、全てを壊してやる。何もかもな。


「お、お前は正気か……?」


 血を流しすぎたのか王の顔色が悪い。

ここからでも脂汗を浮かべているのが見てとれる。


「勇者召喚をお前たちが続けている理由。つまるところ勇者が魔王を討伐することが重要なのではなく、勇者を召喚すること(・・・・・・・・・)が本来の目的なんだろ?」


「くっ、なぜそれを……!?」


 そう、これこそ王国が長年ひた隠しにしてきたものだ。

これが民衆の知れれば、王国存続の根幹に関わる問題になる。

ゆえに、絶対に隠さねばならない王族の秘密……。


「お前がしようとしてる事の意味を理解しているのか?」


 王が口から泡を飛ばし、無様に吼える。


 アモンが用意した転移扉を発動させる。

多重魔方陣が展開され、禍々しい扉が現われた。


「今までお前達(・・・)以外の犠牲の上に作った栄華を今まで味わってきたんだろ?」


 剣を下へ振り降ろす、剣先から放たれた斬撃が天井から壁を抉る。

天井が崩れ、落ちた瓦礫が砂埃をあげた。


「まだ、始まったばかりだ。楽しもうじゃないか」


 

 そして、俺はアモンの転移扉の中へと消えた。


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