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第三十話 異形の化け物2

 異形の化け物へ向けて、飛翔魔法で駆ける。

化け物は腕を振り回して俺たちを落そうとするが、その動きはひどく怠慢だった。


 目覚めたばかりで、本来の動きを取り戻せていない。そんな感じのがする。

そうであれば、早めに倒しておくほうがいいだろう。


 腕を避けながら、俺とマリア達は本体へと近づく。


 距離が近づくにつれ、化け物の身体からウネウネとした触手が生まれる。

無数の触手は、一斉に俺たち目掛けて襲い掛かってきた。


 襲い掛かってくる触手どもを、俺は剣で次々と切り落とす。

マリア、マモンは魔法を使い撃退しているようだ。


 触手自体の戦闘力はかなり低い。

一本、一本がハイオーク程度だろうか。


 B級冒険者なら単体でも充分、撃退可能だ。

そもそも、B級冒険者は飛翔魔法で、空中戦をやらかす芸当なんてムリだとは思うが。


 幾本の触手を切り払い、異形の化け物へ肉薄する。

体表には、魔力でコーティングされたように防御層があった。


 魔法と言うよりも、もっと原始的な魔力の使い方。そんな感じだ。

こんな乱暴な魔力の使い方で全体を覆うなんて、どれだけの量を溜め込んでやがる。


 薄黒い体表に向け、『三日月の刀』を打ち込む。

名前は大層だが、要は三日月形の闘気を斬撃にのせて放つ単純な技だ。


 しかし、威力は抜群で技と呼べるに相応しいだけある。

小さな山であれば、その形を変えるほどだ。


 撃ち放った『三日月の刀』は、魔力防御層を貫き体表に衝突する。


 ガクンと揺れる巨体。


 その体表を文字通り、三日月形に大きくえぐる。

えぐれた肉からは赤みが伺える。飛び散る体液は、青色だった。


 しかし、えぐられた傷口は逆再生のようにすぐさま再生し始める。


 ほんの数秒の間に元の状態に姿を戻した。

溜め込んでいる魔力は伊達じゃないらしい。


 マリアとマモンのほうの様子を伺うと、ダメージは与えているものの、俺と似た状況らしい。

『三日月の刀』を二度、高速で打ち込む。


 先ほどよりも、大きく揺れる巨体。


 十字をきるように打ち込まれた『三日月の刀』は、名を改め『十字の太刀』と呼んでいる技だ。


 単純に『三日月の刀』の二倍の威力ではなく、その倍にあたる四倍程度の威力に相当する。

それは、闘気の性質に由来するところだろう。

そもそも、感覚で闘気を扱っている俺としては、詳しい理論はわからないが。


 『三日月の刀』よりも、深く。そして、より大きくえぐる『十字の太刀』。


 化け物の肩口から、胸あたりまでその傷は広がっている。


 傷口からは黒い煙があがり、より多くの青い体液が流れ出ていた。

触手どもの動きも鈍くなったように見える。


 手応えはあった。


 『十字の太刀』は、魔眼のラミアを倒した技だ、致命傷とまではいかなくても相応のダメージは与えてるはずだ。


 だが、先ほどより遅さを感じるものの、また逆再生のように再生し始める。

完全に再生し終える頃には、触手どもの動きも以前のそれに戻っていた。


 ダメージは与えられる。しかし、決定打が足りない。

触手どもと、怠慢な動きで襲う腕の攻撃をかいくぐりながら、マリア、マモンと合流する。



「そっちはどうだ?」 



「ん―、ちょっと面倒くさい」



 どこか余裕な面持ちで答えるマリア。

それもそうか、マリアは今だ全力を出したところを見た事がない。

魔王の全力か、少し気になるな。



「大規模魔法がほしいところですね。しかし、この状況では少々むずかしそうです……」



 マモンの言う通り、この状況では大規模魔法なんてチンタラ用意している暇なんてないな。

それにこの化け物が、本格的に動き出す前に叩いておきたいところだ。



『ザッ……ザッ……』



 通信魔法特有のノイズが響く。

この魔力は、バアルか。



『魔王様、大規模魔法の準備が整いました。いつでも打てます』



 まさにグットタイミングというやつだ。

心の中でバアルにサムズアップを送る。



「わかったわ。私たちが、隙をつくるっ! 合図したら打って」



『わかりました。魔王様。ザッ……』



「いこう、マコト!」



「ああ」



 俺はマリアたちと化け物に向かって駆ける。


 触手どもを切り、魔法で焼き、本体に向かって攻撃を続けた。

先程みたいな様子見のようなものではない、本格的な攻撃に化け物が怯む。



 できた、ここが隙だ。



「今よ、バアル打って」



 マリアの言葉に即座に展開される大規模魔法。


 幾重にも重ねられた魔方陣が高出力の魔法を放つ。

直径20メートルを越える魔力の光線が化け物にぶつかった。




 ドォッゴゴゴゴゴッ。



 地響きのような轟音が戦場に響く。


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