第二十話 決戦前夜
4日目の朝、魔王軍はセレイン国を立った。
これだけの大軍の進軍だ、最後尾が国を出る頃には昼をまわっていた。
ロスティニア王国に向けて進軍する。
大したトラブルにも見舞われることもなく、順調に進んだ。
途中、大きな黒猫と呼ばれる街で食料や消耗品などを補給し、進む。
セレイン国を直進できたことで無理のない速度で進めれるおかげか、多少の疲労はあるものの、予想の範囲を超えてはいない。
一ヶ月ほど進んだあたりで、おぼろげに王都が見えてきた。
ここまで ロスティニア王国からの攻撃を一切受けていない。
向こうも王都で決戦をする覚悟が出来ているらしい。
魔眼で様子を確認すると王都を囲う外壁周辺に対戦争用の大型ゴーレムが各所に配置されている。
その数は20と多い。その他にも見慣れない種族も参加しているみたいだ。
大柄な体躯に特徴的な角を有する姿は、あれは鬼族か?
名前だけは聞いたことがあるが、実際に目にするのは初めてだ。
1万くらいだろうか、能力が未知数な分少しやっかいだな。
王国側も十分な準備が出来ているようだ。
これで心置きなく潰すことができる。
偵察の話では、新勇者のパーティもこの決戦に参加しているらしい。
そのほうが色々と都合が良い。
時刻は夕刻、王都から数キロ離れた場所に魔王軍は陣を張る。
日が落ち、夜が明ければ決戦だ。
飛翔魔法で空中に浮かび、王都を眺める。
崩す前の完成された積み木を見る心境だ。
「・・・・・・待ってろよ」
つい、口から言葉が漏れる。
俺も少し胸が躍っているらしい。
体から溢れるでる魔力が蒸気のようにあがった。
あがった魔力が霧散する際、キラキラと淡く輝いて消える。
セレイン国の一件で暴れ足りない魔王軍のやつらも明日は存分に暴れれるだろう。
マリア含む4帝達も高揚に胸を躍らせていみたいだ。
ここからでも魔力の踊りが感じさせる。
一つの優しい魔力が近づいてきた。マリアだ。
俺のすぐ傍で止まる、お互い言葉は発しない。
空から王都をただ眺めているだけだ、それだけなのに心が安らぐ。
自然とマリアと俺の指が絡む。
この夜が明ければ、いよいよロスティニア王国との決戦が始まる――――。




