第十五話 枢機卿スターウィン
ルフィア教、枢機卿スターウィンと対峙する。
淡い紫色の髪で凛々しく整った顔立ちの知性派美人。年齢は、17、8っていったところか。
その年でルフィア教ナンバー2まで上り詰めたのだから、かなりの実力者と考えていいだろう。
だが、それは所詮、常識の範囲内でのことだ。
常識の範囲外にいる俺やマリア達の敵ではない。
この敵も味方も入り乱れた戦場で、一直線に俺に向かってきたようだ。
よほど憎いのか強い意志が宿った青色の瞳が俺を睨む。
周りには戦場らしい光景が広がり、怒号、悲鳴などがけたたましい。
その中、俺とスターウィンの間合いには空白が生まれていた。
剣を揺らし誘う。
案の定、見え見えな誘いに乗って切り掛ってきた。
まだまだだなと思いつつ、軽く剣で往なす。
往なされたスターウィンはバランス崩した。
そこを足技で掬い転倒さる。
「くっ」
地面に転げたスターウィンは屈辱と憎悪の篭った目で睨みつけてくる。
それを薄い笑いで返す。
もう一度、剣で誘う。
またも誘いに乗って切りつけてくるのをワザとスレスレで避けて切りつけた。
俺の剣撃がスターウィンの鎧を剥ぐ。
何度か切りつけるうちに全ての鎧が剥がれ落ちた。
「まだやるか?」
肩で息をするスターウィンに剣先を向ける。
スターウィンは顔に険を浮かべる。
「どういうつもりだ・・・・・・? 愚弄する気か」
「まだ実力差がわからないのか?」
「っ・・・・・・」
「お前らの神は助けてくれないのか?」
ニヤリと笑みでスターウィンを煽る。
「教えの尊さもわからぬ屑めが」
「ふっ。その臭い教えとやらに群がる、お前達はさしずめドブネズミか?」
「やめろおおおおおおっっ!」
激昂したスターウィンが剣を振り上げ、その剣に魔力が宿り剣速をあげる。
避けることは容易いが、これがスターウィンの渾身の攻撃ならば―――。
剣を地面に突き刺し、スターウィンの剣を手で受け止めた。
剣に宿った魔力の圧が襲う。地面を抉り、激しく砂煙があがった。
砂煙が晴れ、無傷の俺を見て、スターウィンが目を見開く。
「そ、そんな・・・・・・」
地面に刺さった剣を抜き、スターウィンに向けて振るう。
闘気が衝撃波となりスターウィンの体を突き抜ける。
全ての装備が剥ぎ取られ、下着のみ残る姿になった。
屈辱と恥辱を混ぜたような表情を浮かべスターウィンは震える。
「お前達の尊い教えなどこんなものだ」
もう一度、ニヤリと笑みでスターウィンを煽る。
「くっ」
スターウィンは下を向きプルプルと震える。
屈辱と恥辱で肌は赤く紅潮していた。
「見ろ。お前達の軍が逃げていくぞ」
そう、ルフィア教国軍が敗走している。
魔王軍の圧倒的な戦力に怯え、司令官を置いて無様に逃げているのだ。
それを見たスターウィンは地面に伏して声をあげた。




