第6話:プチバード
第6話です。小さいもふもふが有ります。お楽しみ頂ければ幸いです。
アイリス達が冒険者ギルドに帰ると、ユーリの仲間であるライリー達がマスターと一緒に待っていた。
「よぉユーリ。良いモンスターは手に入ったか?」
ライリーは帰ってきたユーリ達に気付くと声をかけた。
「まぁね。ホーンタンクを従魔に手来たよ」
「ホーンタンク!!マジかよ!?」
「あぁ、僕も驚いたよ。王都の従魔屋に預けて貰えるらしいから王都に帰ったら引き取ってさっさと旅にでようか」
「えらく積極的だな。何かあったか?」
「素敵な風景を見てね。旅に出たら他にも見れるかもと思ってね。ライリー達は村の店を回ったんだろう。どうだった?」
「それがよ〜、この村の店は、この村の冒険者のために有るようなもんだから、販売対象がAランク以上の冒険者なんだ。だから、値段が高くて手が出せなかった・・・」
ガックリと肩を落としユーリに答えるライリー。それを見ていたアイリスはユーリに提案をする。
「ユーリさん、アースさんから預かっているお金はホーンタンクを買っても余りますから、余ったお金は返す予定でしたし、それを使ったらどうですか?それか、もう1匹別の魔物をライリーさん達の誰かと契約させるこもできますけど・・・どうします?」
アイリスに言われ、ユーリ達4人は話し合いを始めた。
「ここは魔物だよね」
「うん魔物よね」
「そうですね。魔物ですわね」
「えっ、お金返して貰って武器か防具を買おうぜ!」
「「「はぁ〜〜」」」
ユーリ達はライリーの言葉に溜め息をつく。
「ライリー、僕はさっき聞いたばかりだけど、この村の武器屋や防具屋はAランク以上を対象に作ってあるんでしょう。それなら、本当に良い武器や防具なんだろうけど、今の僕達には使いこなす事はできないよ」
「ユーリの言う通りよ。武器に似合った実力がないと武器に振り回される事になって、結果的に最悪な事態になるわ」
「そうですわ。目の前の事にすぐに飛び付くんじゃなくて自分達の力量を考えて行動しないとAランク以上には上がれませんわよ」
ライリーは脳筋なのかも知れない。
「でも魔物にするって言ったって、どんな魔物にするんだよ・・・」
ライリーは少し拗ねながら言う。
「僕は戦えないから省くとして、ライリーは剣、ミユとネルは魔法使いだから前衛1人、後衛2人だから前衛が欲しいよね」
「そうね。でも、魔物は戦闘人員に入れるようにはしたくないわね」
「そうですわね。意思疎通が出来るのが契約者だけだとしたら、戦いにくくなる可能性もありますものね」
「そっかぁ、それもそうだね。じゃぁ戦闘に参加しない魔物の活用法で考えてみようか」
「そうですわね。前衛を入れるにしろ入れないにしろ当分の間は3人で戦うことになるでしょうし、いかに早く敵を察知して先制攻撃を取れるかが重要になると思いますわ」
「そうなると、探知系の能力を持った魔物ってことね」
「探知系か・・・ライリーもそれでいい?」
「分かった。それでいいぞ」
ユーリ達は粗方自分達で決めて、ライリーには確認だけをした。
「じゃぁ、探知系の魔物ってことで。アイリスさん戦闘に参加しない探知系の魔物っていますか?」「戦闘に参加しない探知系の魔物ですか・・・あっ、ピッタリのがいますよ。じゃぁ、皆一緒に行きましょう。トーマスさんすいません、もう1度出掛けたいんですけど大丈夫ですか?」
「あぁ、良いぞ。どこに行くんだ?」
「プチバードの所です」
「よし!じゃぁ行くか」
ホーンタンクの時とは別の部屋の転移陣にアイリス達6人は入る。転移陣の先の小屋を出ると、湖と湖を囲むように咲き乱れている色とりどりの花が目に入る。その周りには木々が鬱蒼とはえて光を遮っており、小屋から湖まで続く道と湖にだけ光があたっている。 その光は水面に反射し湖と周りの色とりどりの花がキラキラと輝いて見える。
「ここはどこだ?」
「なんて綺麗・・・」
「すごいですわ・・・」
「やっぱり早く旅をはじめたいな」
ユーリ達は各々呟いた。
アイリスとトーマスはユーリ達の呟きに気づかずに湖に向かって歩き出す。それに気付いたユーリ達もアイリス達に続く。
「ピ〜〜」
アイリスがホーンタンクの時にも使った笛を吹くと、すぐに小さい鳥が1匹飛んできた。
「チチチッ」
アイリスが手のひらを前に出すと、その上に止まる。
その鳥は体長10㎝程で横幅も10㎝程の丸い鳥だった。アイリスの手のひらに乗ると足までも体毛に埋まり、顔だけがちょこんと出ている。その姿は全身を体毛に覆われたふさふさなボールのようだった。
アイリスはその鳥を頬に押し当てて頬擦りをしている。ひとしきり頬擦りしたり撫でまわしたりして満足したのか、ユーリ達の方に歩いてきて、手のひらに乗っている鳥について説明しだした。
「この鳥はプチバードと言って、めったに人前には現れない鳥なんですよ。プチバードは見てわかるように丸いので早く飛べないんですよ。だから、警戒心が強くて、できるだけ敵に発見される前に逃げて隠れるんです。他の魔物が近づいてきたり、近くで争っている気配がしたら鳴いて教えてくれるので凄く役にたつと思いますよ。ユーリさん以外で誰か契約しますか?」
「僕以外だとミユかネルがいいかな。ライリーは世話をちゃんと出来なさそうだし」
「まぁ、そうだな。俺は、世話とかは面倒くさいからミユかネルに任せるわ」
「ネル、どうする?ユーリ達はああ言ってるけど・・・」
「・・・」
「ネル?どうしたの?」
「・・・」
「ネル!?ネル!?」
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ネルside
(なっ、なんですのあの鳥は、もふもふじゃありませんか。何て可愛いんでしょう。あのボールのように丸い身体に、顔だけがちょこんと出ている様子がたまりませんわ。あぁ、アイリスさんが羨ましい。あんなもふもふに顔を押し当てて、私もしたいですわ。あの柔らかそうな身体を満遍なく触りたい。触りたいですわ〜〜。あらっ、ミユが何か言ってますわ。なんでしょうか。)
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「ネル!ちょっと大丈夫!?」
「えっ、えぇ〜大丈夫ですわ。少し考え事をしていましたの。それでなんですの?」「本当に大丈夫なの?」
「本当に大丈夫ですわ。だから心配しないで下さいな」
「まぁ、それならいいけど。それでユーリ達が私かネルのどっちかにプチバードと契約して欲しいんだってさ。どうする?」
「私がします!私に契約させて下さいな!!(あのもふもふが私の物に!絶対私が契約しますわ)」「うわっ、びっくりした!ネルがそういうならネルが契約していいよ」
こんなにネルが興奮しているのは珍しいなと思いつつミユは答えた。
「それじゃ、ネルさんと契約してもいい子を呼んで貰いますね」
アイリスは手のひらから頭に移動して休憩していたプチバードにお願いした。するとプチバードはアイリスの頭の上で鳴いた。
「チチッ、チチチッ、チッチ」
暫くすると1匹のプチバードがふよふよと飛んできて、アイリスの頭の上に止まる。アイリスの頭の上には2匹のプチバードが止まる事になった。
「チッ、チチチッ」
「チチッチ、チチ」
アイリスの頭の上で会話をしていたプチバード2匹の1匹がアイリスの顔の前で飛び始めた。アイリスが手のひらを出すとその上にのる。
「君がネルさんと契約してくれるの?」
「チチッ」
「そっか。分かった」
アイリスはネルの所に向かい手を差し出す。
「この子がネルさんと契約してくれるそうです」
「まぁ、何て可愛らしいんでしょう」
「この子の種族であるプチバードは危険察知は得意ですが戦うのは苦手なので戦闘には参加させないで下さいね」
「勿論ですわ。こんなに可愛いいのに戦闘に参加なんてさせませんわ」
「よかったです。それじゃぁ契約するので手のひらを出してください」
ネルはアイリスの手のひらにプチバードを乗せると左手を肩に、右手の人差し指をプチバードの頭にのせ、ホーンタンクの時に使ったスキルを使った。
「はい、これで終わりです」
「ありがとうございます。これからよろしくお願いしますね」
そう言ってネルはもふもふを堪能する。
「よっし、それじゃ帰るぞ」
トーマスの号令でそれぞれが転移陣に入る。誰も居なくなった湖に波紋がいくつも現れては消えた。
最後が少し駆け足になりました。また、アイリスの魔物との契約の時に使うスキルですがホーンタンクの時に使った時とほぼ同じ文になるため省きました。
次話は、明日投稿する予定ですが、携帯投稿の為に、少し指が痛いです。もしかしたら明後日になるかもしれません。
誰か良い指の休め方を知っている方がいましたら、感想にでも書いて下さい。投稿を遅くしない為に必ず実践させて貰います。