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第16話:鍛治屋ゴンゾー

 イズールドには奴隷制度が存在する。

 犯罪奴隷や借金奴隷など、奴隷になる理由はたくさんあるが、ゴンゾーは親に売られた奴隷であった。

 ゴンゾーの両親はドワーフであったが、この両親が二人ともクズな奴等であった。

 そこそこに器用だったゴンゾーの両親は鍛治屋を営んでいたが、武具が売れるとその金を博打に使い、金が無くなると武具を作るという生活を送っていた。

 しかし、武具を作るためには材料を買う必要があるために材料費まで博打につぎ込んだ時は、自分の子供を売って材料費を作る。

 ゴンゾーの両親にとって子供というのは愛する者ではなく、武具を作る材料費のための道具でしかないのだ。

 ゴンゾーはご飯や勉学なども普通に通わせて貰えていたために愛されていると思っていたが、それが奴隷商に少しでも高く売れるために行われている行為だと、ゴンゾーの両親から子供をよく買う奴隷商に聞いた時にゴンゾーは絶望した。

 さらにゴンゾーの兄や姉になるはずだった者が3人いる事を聞き、ゴンゾーの両親がとんでもないクズ野郎達だと思い知った。

 しかし、ゴンゾーがこの奴隷商に売られたのは不幸中の幸いという奴なのか、この奴隷商はエルドルド辺境伯専属の奴隷商であった。

 エルドルド辺境伯は毎月この奴隷商から奴隷を買いエルドルド辺境伯領の兵士に入れたりしていた。 エルドルド辺境伯は奴隷を使い潰すために兵士にしているわけではなく、奴隷が自分を買い戻すための給金を稼ぐ一番手っ取り早い道が兵士だからだ。

 エルドルド辺境伯は、ある意味奴隷のためにも毎月奴隷商から奴隷を買い兵士にして帝国との国境に配置する兵士を補充していた。

 そのためエルドルド辺境伯の兵士には奴隷がたくさんおり、自分を買い戻すために必死に働くため兵士達の間で奴隷を冷遇するようなことはない。

 奴隷を冷遇していざという時にピンチになるのは奴隷を冷遇していた自分自身になる事は想像に難くないからだ。

 まぁ奴隷を冷遇しているなんて事がエルドルド辺境伯に知られるのが怖いから冷遇しないという者もいるだろうが・・・・

 そんな理由でエルドルド辺境伯領の兵士になったゴンゾーであったがそこで兄2人、姉1人と出会う。

 兄達と姉は無事に自分を買い戻しそのまま兵士としてエルドルド辺境伯に仕えているといっていた。

 兄姉と一緒に幾度か魔物との戦争を経験し、3年程たったある日のこと、兄姉と一緒に非番の日に酒を飲んでいた時に、ゴンゾーは兄姉に相談事を持ちかけた。

 

「兄さん達は自分自身を買い戻した時は何でエルドルド辺境伯に残ったの?」

「そうだなぁ・・・俺は勉学は好きじゃないし、特に遣りたいこともなかったからそのまま兵士になったって感じだな。給金も高いし」

「おれっちも似たような感じさ。やっぱり給金も高いしさ」

「私は付き合ってる男が兵士だからさ。出来るだけ一緒にいたいじゃない」


 イズールドのドワーフの女というのはとても情熱的で、付き合う男の色に染まりやすいのだ。

 そのためドワーフの女というのは異種族の男にも人気である。

 どんな男でも1度は彼女を自分色に染めたいと思うものなのだ。


「なんでそんな事を聞くんだ?」

「実は、俺ももう少しで自分を買い戻せそうなんだけど、その後をどうしようかと思ってさ・・・」

「そうか・・・ゴンゾーも奴隷から解放されるのか。よかったな」

「「おめでとうゴンゾー」」

「ありがとう。でも買い戻した後をどうしようかと思ってね・・・」

「ゴンゾーは何か遣りたいことはないのか?」

「う〜ん、一応はあるんだけど・・・・」

「何だ?何がしたいんだ?」

「え〜と、鍛治屋なんだけど・・・」


 ゴンゾーが言いにくそうに伝える。

 それはそうだろう。

 自分達を売った親が鍛治屋なのだ、いい気分はしないであろう。


「ほぉ〜鍛治屋か。いいじゃないか。ドワーフは手先が器用だから基本的に鍛治には向いているからな」

「おれっちもいいと思うっすよ」

「私も賛成ね」


 だが、ゴンゾーの考えとは反対に兄姉達は3人共賛成した。


「えっいいの!?」

「んっ?もちろんいいぞ。何でそんなに驚くんだ?」

「えっ、だって俺達の両親だったクズ野郎達が鍛治屋だったから、反対されると思ってた・・・」

「はははっ、確かにあのクズ野郎達に怒りは覚えているが鍛治屋が悪い訳じゃないからな」

「そうよ。確かにあのクズ野郎達は鍛治屋だったけど、鍛治屋を恨んでたらキリがないわよ」

「そうっすね。あのクズ野郎達みたいな鍛治屋にならなければいいだけっすから」


 兄姉達は自分が思ってたより気にしていない事がわかり気が楽になる。


「俺は逆にあの奴隷商に売ってくれた事を感謝したいぐらいさ」

「なんで?」

「だって、あのままあの町にいても仕事がなかったかもしれないからな。売られはしたがエルドルド辺境伯の所で兵士になれたし、最初は恨みもしたが暫くたったらそんなに悪くないかと思うようになってな。それにエルドルド辺境伯領の奴隷の扱いは他の場所での奴隷の扱いとは天と地程の違いがある。一般人と変わらない扱いを受けれて高い給金を貰える兵士になれるんだから自分を買い戻しやすい。さらに自分を買い戻した時にはエルドルド辺境伯自らがお会いになって今後の事について相談に乗ってくれるしな」

「そうなの?」


 驚くゴンゾーであったがエルドルド辺境伯領は基本的に浮浪者がいない。

 国境を守るためには人は多すぎても困ることはなく、仕事はいくらでもあるからだ。

 

「まったくエルドルド辺境伯様々だよな。兵士以外になりたい者がいたら口利きもしてくれるから、エルドルド辺境伯に相談してみるといい」

「へぇ〜・・・」


 ゴンゾーが兄姉達に相談してから半年後、無事に自分を買い戻したゴンゾーはサザント・エルドルド辺境伯と話し、ある鍛治屋を紹介され、ゴンゾーは厳しくも優しい師匠に鍛えられメキメキと実力を伸ばすことになった。 それから20年後、鍛治屋をエルドルド辺境伯領で営んでいたゴンゾーはサザントとロベルトに頼まれてアーガント村に行くことになった。


「こんにちはゴンゾーさん、包丁を研いでほしいんですけど・・・」

「おぅアイリスいらっしゃい!すぐ研ぎ終わるからちょっと待ってな」

 

 今日もアーガント村唯一の鍛治屋からは刃物を研ぐ音や鉄を叩く音が響いている。

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