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第15話:精霊王

 アイリスが3歳の誕生日を迎えた翌日、アイリスの父ロベルトとアイリスの祖父サザントは王城の陛下の私室に来ていた。

 そこには、近衛師団団長アッシュ、近衛師団副団長ハイマーン、宰相が陛下と共に待っていた。



「陛下、遅くなり申し訳ございません」

「気にするな。アイリスは息災か?」

「はい。昨日の誕生日会も楽しく過ごしていましたし、ケガや病気をすることもなく毎日元気ですね」

「そうか、それは何よりだな。それではアイリスの近況も聞いた事だし会議を始めるか」

「わかりました」


 極秘の会議のためロベルトとサザントのお茶をハイマーンが用意しテーブルを囲むように全員で座る。


「さて、とりあえずアイリスは、学校には通うことにはなるが、さらに家庭教師を着けて護衛術を教えてもらうことに決まっていたな」


 王国では8歳から12歳まで基礎勉学と冒険者や魔術師になるための勉強、12歳から15歳までは士官に成りたい者、冒険者に成りたい者、何らかの職人に成りたい者などそれぞれの将来にあわせた学校に進む。

 王国は子供を将来の国を支える者として考えているため、他国に比べても学校の種類は豊富である。


「陛下、そのことについて1つ報告があるのですが・・・・」

「なんだ?」

「それがですね、昨日のアイリスの誕生日会が終わり参加者の方達が解散して、家臣達だけで誕生日会を続けていたときに精霊王様が降臨なさってアイリスが10歳になった時に禁断の地に連れてくるようにと仰られたんです」

「はっ?」


 ロベルトが言ったことにサザントを除いた陛下達は唖然とした。


「えっ・・・ちょっ、待ってくれ・・・精霊王様が降臨なさったのか?」

「はい」

「そしてアイリスが10歳になった時に禁断の地に連れてくるように仰られたのか?」

「はい。その通りです」


 陛下はあまりの出来事にロベルトが言ったことをそのまま聞き返し確認した。


「マジか・・・」

「ええ、マジです」


 近衛師団団長アッシュの呟きにもロベルトは返事をする。


「はぁ〜・・・それはロベルトの家臣達も驚いたでしょうね」

「そうだな。まぁ俺の家臣達だけだったからよかったが、参加してた貴族達がいる時に降臨なさらずによかった。もし貴族達がいる時に降臨なさっていたら貴族達への説明と口止めがかなり面倒だっただろうしな」


 近衛師団副団長ハイマーンが呆れたように言うと、ロベルトが苦笑しながら返事を返す。


「それでエルドルド辺境伯よ、精霊王様が仰ったことはそれだけか?」

「そうですね。後こんなことも仰っておられました」


 ロベルトは昨日の精霊王の事について陛下に話始める。


――――――――――――――――――――――――――――――

 貴族達向けのアイリスの誕生日会も終わり、ロベルトの家臣達と親しい者達がアイリスに誕生日プレゼントを渡していた時の事である。

 最後にロベルトとイルミナからのプレゼントを渡し終え、ロベルトとイルミナの近くでプレゼントを嬉しそうに眺めていたアイリスの目の前に6色に光る球体が突如として現れた。


「ふわぁ〜きれ〜い!!」


 アイリスの驚いた声に気付きロベルトとイルミナがアイリスの方を見るとアイリスが6色に光る球体に向けて手を伸ばしていた。


「アイリス!!」


 イルミナが慌ててアイリスを抱き抱え、ロベルトが庇うように二人の前に出る。


「何だこれは?」

『そう警戒せんでくれ。怪しいものではない』


 6色に光る球体が人形の形に変化しながら語りかけてくる。

 暫く待っていると、胸まで白い髭を伸ばし、腰まで伸びた髪の毛を腰の部分で結んで一纏めにした老人が現れた。

 服は神主の様な袴であるが、全身真っ白であり、右手には黒い杖を持っていた。

 その姿に神々しい程の力を感じたロベルトは少し気圧されながらも言葉を紡いだ。


「申し訳ありません、高名な御方だと存じますが、名前を存じ上げない無礼をお許し下さい」

『よいよい。儂がこの世に姿を表したのは1000年振りだからな。儂の名前は教えられないが、そなた達人間には精霊王と呼ばれているな』

「・・・」

『・・・』

「・・・・・・・」

『・・・・・・・・・・・・・・おい聞いているのか?』

「・・・はっ!?えっ!?精霊王様ですか?」

『うむ』


 ロベルトは余りの事に精神がどこかに飛んでいた様だ。

 もちろんロベルトだけでなくイルミナやサザント達も例に漏れず精神がどこかに飛んでいた。

 それもその筈で精霊王は存在が殆ど認知されていない伝説上の生物だからだ。

 イズールドでは度々神託が巫女に下るため、姿は認知されていないが存在自体は認知されている。

 しかし、精霊王が言ったようにイズールドに現れたのは1000年振りなのだから殆ど認知されていない。

 

「そ、それで精霊王様がなんの御用でしょうか?」

『うむ。そなたの娘アイリスのことでな。アイリスは将来どうするつもりなのだ?』

「アイリスですか?アイリスには出来るだけの力をつけさせようと考えてはいますが・・・」

『そうか・・・アイリスとそなた達には少々酷な事を言うが、アイリスがこのイズールドを守る最後の砦である以上、生半可な力では意味がないことは分かるな』

「・・・はい」

『邪神がどのように攻めてくるかわからん以上アイリスの身を危険にさらすような真似はできん。そのため、アイリスは出来るだけ一目を避け危険から遠ざけなければならん。そこでアイリスには禁断の地にて過ごしてもらおうと思う』

「禁断の地ですか?」

『うむ、あそこは普通の人間には辿り着けん場所だからな。そこに住むのがアイリスにとっては一番安全なのじゃ。アイリスとお主達には酷だとは思うが、儂らは個人よりイズールドを守る義務があるのでな』

「・・・はい」

『すまんな』

「わかりました・・・ただ、せめてアイリスが10歳になるまでは私達と共に過ごすことをお許し下さいませんか?どうかお願いします。それまでは私達が命を持って守りますので!!」


 ロベルトが頭を下げるとそれを聞いていたイルミナやサザント、家臣達も一斉に膝をつき頭を下げる。


『・・・・よかろう。ただ10歳になったら必ず禁断の地に連れてくるように』

「はい、願いを聞き届けて頂きありがとうございます」

『それと禁断の地にアイリスを匿う以上、村の様なものを作った方がよいだろう。そのための準備はお主達が用意するといい。ただしアイリスに危険が及ぶことは決してないようにな』

「それは勿論です。私達の娘に危険が及ぶことは私達自身が許しませんので」

『うむ。それでは、儂はそろそろ消えるがアイリスを禁断の地に連れてくる事は忘れぬようにな。さらばじゃ』


 そう言って精霊王は弾けるように消える。


「大変な事になった。すぐに陛下にお知らせせねば」

「まぁ待てロベルト」

「父上?」

「陛下達との会議はどうせ明日する予定であっただろう。幸いにアイリスをすぐにどうこうする話しでもないから、陛下に伝えるのは明日でもよかろう。まずは儂達がこれからどう動くか、と言うことをあらかじめ話し合っておいた方がいいであろう。とにかく落ち着くんじゃ」

「・・・そうですね」


 落ち着いたロベルトはとりあえず誕生日会を解散し、今後についてサザント、イルミナと話し合った。



――――――――――――――――――――――――――――――



「という感じでした。」

「ふむ・・・そうなるとアイリスを学校に通わせるのは無理だな」

「そうなりますね。とりあえず家庭教師をつけることは変更しないで、護衛術だけではなく一般的な教養の家庭教師も必要になります」

「それならアイリスが学校に行けない理由を適当に作って、教師をエルドルド辺境伯家に通わせた方が良さそうだな」

「そうして貰えるとありがたいです」

「うむ。その様に取り計らおう。そして、禁断の地にアイリスを匿うために必要な物だが・・・何が必要だろうか?」

「そうですね。とりあえず父上と話し合って決めた事は、高ランク冒険者を村人として同行させることや各ギルドの支店を作ることですかね。後、一応として結界を張れるようにするといった所ですかね。なにぶん時間がなかったのでたいしたことは決められなかったのです・・・」

「まぁ、それはしょうがなかろう。これからも随時会議を行っていくことにしよう」

「「「「かしこまりました」」」」


 こうして精霊王の言葉によりアイリスについて様々な事が決まっていく会議が頻繁に成されるようになる。

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