1話 Gは一匹100円です。
「くたばれぇぇぇぇぇぇぇえ!!」
僕が19年間生きてきて初めて吐いた全力の暴言。
まだまだ短い19年の人生で、平穏温厚をもっとうに生きてきた僕がまさかこんな言葉を全力で叫ぶ日が来るなんて。
続いて叫びながら同じく人生初めての全力の暴力をフルスイング。
ゴッツ!!
鈍い音とともに伝わってきたのは手の皮が剥ける位の反動。
「グギャゥ・・」
カラン!
短い悲鳴とともに反動が掌に伝わって思わず握っていた金属バットをとり落してしまう。
慌てて落してしまった金属バッドを拾い上げて、先程まで僕を小一時間近く追いかけまわしていた生き物を見つめる。
子供みたいな背格好に腰みのだけを纏った全身緑の醜い生き物。
ファンタジーでおなじみの所為「ゴブリン」
額から生えた小さな角に尖った耳に真っ赤な目に潰れた鼻に牙だらけの大きな口・・・
こいつの人類と違う場所なんて上げればキリがないほど上げられる。
あ、今は僕のフルスイングで鼻から下はぐちゃぐちゃだけど、こいつは21世紀の現代日本に生息していていいような生き物じゃない。
そんな化け物に僕は今まで自宅の地下でこん棒を振り回されながら追いかけまわされていた。
まぁ正確には大学への進学の為に引っ越してきたアパートの地下室なのだが。
「ギュオォォォ」
ゴブリンの呻き声でそれ掛けた思考を敵に集中する。
完全に顔の下半分が潰れていて蠢いているのでこのまま放置しても問題なさそうなのだが、散々追いかけられた恨みからか、まったく憐みの心は湧いてこない。
散々「やめてください」「助けて」「許して」と懇願したのに1時間もこん棒振り回しながら追いかけられていればだれでもそう思いますよね?
とりあえず止めを刺すべく拾い上げた金属バットを強く握りしめ頭上から潰れて居ない頭部めがけて振り下ろす。
ゴチャッ!
寸分たがわずゴブリンの額にヒットした金属バットはゴブリンの額を叩き潰してきっちり息の根を止める。
「はぁはぁはぁッ・・・・・ふっはっはっは!!」
生き物を殺した罪悪感なんて僕には浮かばず、困難を乗り越えた充実感からかあるいは純粋な暴力をふるった高揚感か思わず笑い声が漏れる。
自分ではもっと大人しい人間だと思っていたけど意外とドエスなのかも。
チャリン!
足元に転がる硬化を拾い上げる。所為百円玉。
先程まで確かにゴブリンが転がって居た場所に遺体に成った瞬間にやつの体はその噴き出した血や飛び散った牙まで収束して百円玉えと変貌を遂げた。
「管理人さんの言ってたこと全部本当だったんだ。」
拾い上げた硬化を眺めながら今に至るまでの経緯を僕は思い出した。