209文字で切り取った世界 ―― 一番小さなストーリー ――
209文字で切り取った世界 ―― 一番小さなストーリー ―― 夏
藍色の木綿に生える、鮮やかな朝顔の花……
娘が袖を通した浴衣は、もう何年も僕の実家の箪笥に仕舞われていた、古い、古い、一着
朱色の帯が鮮やかに娘の腰を締め上げる
上機嫌に、彼女はくるくる回って見せて
僕の母はそれを見て微笑んでいた
その目はとても優しくて
けれど、悲しげで
姉が過ごした最後の夏から、20年
今も僕の胸には、彼女のその姿がくっきりと形を残している
藍色の袖。鮮やかな朝顔の柄
彼女が生きたかった夏の続きが、僕の娘と動き出す