自分以外を愛せない博士の話
彼は枯れ果てた。
自らとそれ以外では決定的な差があると思い込んだから。
それは例えば不敬、偏見、悪意、嫉妬
誰かれ構わず心の欲望を抑えずに周りに棘として向けて傷つける。
それが博士には理解ができなかった。
本来他人は尊重すべきもので、
媚びへつらい機嫌を取れとまでは言わぬまでも、
自己の膜を丁重に扱うことが必要最低限のモラルであると考えていた。
その為に博士は自分以外の全てに絶望して、
自分しかまともな人間はいないと確信した。
そして彼は自身のクローンを作った。
全く同じ見た目性格。
そうすれば自分を理解して愛してくれると思った。
だが、
博士は自分と同じ振る舞いをするクローンを見て悟った。
これは全く私が嫌悪する人間たちと同じような存在であると。
自分は周りを拒絶して、
最も愚かな部分のみをその人そのものの性であると断じて、
良い部分善性を見ようとしなかった。
怖かった。
良い部分悪い部分があるのが人間で、
それこそが尊く愛おしいものであったのに、
彼は良い部分を信じることができなかった。
勝手に期待して、
そんなものは無いと気がついて、
失望するのが、
されるのが恐ろしかった。
だから博士は他人を愛せないと言い聞かせた。
自分自身なら自分に失望も絶望もしない。
愛を持てる。
しかしもう遅い。
人生は短くもう先もない。
博士はクローンを残して自殺した。
そしてクローンはまた他人に絶望したふりをして、クローンを作り続ける。




