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魔王様、勇者の教育係になる。  作者: now here man


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8/8

第八話 勇者、暴走する。

「……やっと寝たか」


玉座にもたれた魔王ロゼは、天井を見上げて深く息を吐いた。

魔王城のあちこちから、まだパラパラと瓦礫が落ちる音がする。


「勇者というのは……扱いを間違えたら、災厄そのものだな」


そう呟いた瞬間、玉座の横に置かれた通信水晶が赤く光った。

『魔王ロゼ』

嫌な予感しかしない。

「は、はい! 大魔王様!」

『勇者はどうなっている』

「現在は――睡眠に成功しました。ただし、その過程で街の一部が半壊しました」


沈黙。


『……お前の管轄区域以外からも、被害報告が上がっておる』

ロゼはゴクリとツバを飲み込む。

『責任を取って、減給だ』

「ご勘弁を~っ!」

通信は一方的に切れた。


「来月の家賃……」


その時だった。

――ドン。

玉座の背後の壁が、内側からへこんだ。

「……まさか」

ドンドンドンッ!!


副魔王が扉を蹴破る勢いで飛び込んでくる。

「魔王様! 勇者が起きました!」

「なぜ起こした!」

「いえ、あの……寝言で『まおう……』と」


嫌な沈黙。


廊下に飛び出したロゼは、光景を見て膝をついた。

城の中庭が、更地になっている。


瓦礫の中心で、勇者が涙目で拳を振り回していた。

「……魔王さんが、いない……」


その一言で、地面がひび割れた。

「泣くな! 泣くな勇者! ここにいる!」


魔王軍の精鋭たちが一斉に飛びかかる。

だが次の瞬間、全員が吹き飛ばされた。


「くっ……!」

ロゼは歯を食いしばり、魔力を練り上げる。

「仕方ない……最終手段だ!」

赤い魔力が渦を巻く。

「炎熱獄流魔界煉――」

ガッ。

「――っ!!」

舌を噛んだ。


必殺技は不発。

代わりに、魔王はその場にうずくまった。


勇者が、ぴたりと泣き止む。

「……いた」

ゆっくりと、ロゼに近づく勇者。

「いた……」

ぎゅっ。

勇者は、魔王のマントを掴んだ。


「……いなくなると、こわい」

その瞬間、魔王城全体の揺れが止まった。


副魔王が、そっと囁く。

「……魔王様。勇者、落ち着きました」


ロゼは、噛んだ舌の痛みをこらえながら、勇者の頭に手を置いた。


「……そうか。次からは、ちゃんとそばにいる」

勇者は小さく頷き、再び眠りに落ちた。

壊滅した中庭を見渡し、魔王は呟く。

「……減給で済めばいいがな」


そして小さく、こう付け加えた。

「――育児手当、申請できないだろうか」

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