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第4話 残念美女だね、柊さん

 翌日、予定通り起きられた俺は、朝イチで学校へ行くため自転車を漕ぎ始める。


 またもや迷子になりかけたが、部活の為に早く登校している他の生徒がいたので俺はそれに倣った。


 流石に高校生にもなって、今後も一人で通学できないのはあまりにもお粗末すぎるので、途中に見えた色々な店の看板を記憶しながらペダルを漕いだ。


 約10分後、あっという間に学校に到着。

 初日の登校時間との落差に落胆したが、持ち前の図太さで初日の存在は無かった事にした……反省文も無くなってくれればいいのに。


 その後、靴を上履きに履き替え、教室に向かう。

 昨日、あれだけ学内で迷子になったせいか無事迷う事なく自分の教室に到着。

 自分の進化に自分で驚きながらも、ドアを開けるとまだ誰も来ていなかった。密かにガッツポーズする。


 カバンを置き、教卓を確認するもプリントが置いていな事に気づく。

「え!?なんで!?」

 俺は慌てて、教卓に飛びついた。

「嘘だよぉ!?俺昨日ちゃんとここに置いたのに!」

「向井くん」

 俺はその場で屈むと、教卓の中にプリントが丁寧にしまわれている事に気づく。誰かがしまってくれたのだろうか?


「まぁ、そんなことはどうでもいいや、中身を「……向井くん?」確認しないと」

「これもちがう、これも……”健康だより”ばっかりだな、当然だけど」

「そう言うプレイがお好みなのかしら」

「えぇ!?もう結構後半まできたのにないぞ!?」

「…………中原先生が見ているわよ」

「ごめんなさいっ! もう二度と女帝とか言いませんから、この命だけは!」

「嘘よ」

「え? え? ええええええええ?!なんでいるのっ!?」


 土下座の姿勢から顔を上げると、少しむくれ顔の柊さんがいた。

 むくれているのにその美しさたるや…………あ、意識飛んじゃいそう……。


「ずっと私が話しかけていたのに無視をし続け、最終的に他の女の名前で私に気づく。120点満点ね、向井くん」

「あ、お、お褒めいただき、ありがとうございます?」

「最低の返しだわ。0点よ」


 急に120点も失った。バスケだったらその点差は絶望的も絶望的だぞ。


「と、ところで、そのー、なぜ柊様はここへ?」

「……なんで急に時代劇の丁稚みたいな話し方になったのかはわからないけど、コレをあなたに渡す為よ」


 そう言って柊さんは俺の眼前に一枚の紙を突き出すと、そこには“反省文”の文字が。


「ありがとう!」

 そう言って俺は、自分の机を指差す。

「あそこに置いてくれればいいから!」

「……今、私から直接受け取ると言う選択肢は?」

「矢文でもいいよ!」

 精一杯のキメ顔でサムズアップする。ちなみに両足は産まれたての子鹿くらい震えているから見ないでほしい。


「ここまで来ると逆に腹も立たないわ」

 はぁ、とため息をつく柊さん。ため息つきたいのは俺の方です、はい。


「仕方ないわ。今回は私が折れてあげる」

 といってプリントを俺の机の上に置くと──《《彼女はその上に腰掛けた。》》


「どうしてえええええええ!!」

「あなたとの約束通りちゃんと置いたわ。それが飛ばないように私がプリントの上に乗ってあげたの。優しいでしょ?」

「汚されちゃった、俺の反省文……」

「失礼ね、ちゃんと毎日洗っているから清潔よ。ちなみに私は安産型だから安心してくれていいわ」

「聞いてもない情報提供助かるよ、柊さん。口を閉じてくれるともっと助かる」


 もうやだ、この残念美女。

 もはや、美女に対する恐怖よりもなんでこんなに俺に構ってくるのかわからない恐怖の方が優っていた。


「さーて、向井くんをオモチャにしたところで」

「……自覚はあったんだね」

 そういって、俺の席から降りると隣の席に座った。


「お隣さん同士よろしくね、向井くん」

「昨日欠席してたのって、まさか……」

「そうよ。 ふふ、運命かしら」

「だとしたら、俺は神様を呪うよ……」

「随分ひどい事をいうのね。 ほら、挨拶は?」

「……よろしくね、柊さん」

「向井くん、そっちは壁よ」

「……ヨロシクネ、ヒイラギサン」

「ふふ、よろしく」


 そう言ってニコニコ顔でこちらを見てくる、柊さん。

 あまりの顔面破壊力に、俺のライフはもう0になりそうだった。SAN値はとっくにピンチどころかマイナスであるが。


 俺は今後、最低限の会話だけで乗り切る事を決意し、壁側を向いて寝たフリを始める。

「無駄な抵抗よ、向井くん」


 うるさい、断固として俺は君を拒絶するぞ、柊さん。

 そんなやりとりをしていたら、他のクラスメイトが続々と登校してくる。

 耳には昨日休んでいた柊さんを心配する声が絶えず飛び込んでくる。

 やはり、クラスでも人気者なんだなと思ったが、先ほどまでの俺とのやりとりのような調子では無かった。

 彼女の声はむしろどこか遠慮しているような……そんな小さな違和を感じた。


 それでも俺はHRまで寝たフリを続けた。

 関わりは最低限。なんならもう2度と話さなくても良いのだから

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