26 未来
ついにアタシも本物のゾンビになる時が来たんだ。
生きているはずなのに、最も死の世界の近くにいる。そんな自分にお似合いの最後ね。
世の中の役に立ちたくて、生きている実感を味わいたくて、祓う仕事をやってきたけど、結局、人の中に潜む醜い呪いを見ただけかもしれない。
願わくば、もっと美味いビールを飲みたかった。
ごめんね本庄さん。
あたしも好きだよ。もっとイチャラブしたかった。
その時、ふとあの光を感じた。
こんな時に予知夢なんて……どうしてこのタイミングで?なんて思っていると、光はアタシの目の前に降りて、よりいっそう眩しい光を放った。
その中に、可愛らしい瞳が見えた。優しく柔らかい肌とか、小さな手が見えた。
子供……赤ちゃん?
アタシの子供時代?
いや、違う。
アタシの赤ちゃんだ。
その時、理解した。
アタシ、近い将来に赤ちゃんを産むんだわ。
自分は半分死んでいるなんて言っているけど、未来を産み出すことができるのね。
実は、アタシって心の底では希望とか愛とか、そういうのを求めていたんじゃないの?
死の世界を潜り抜けて愛を手に入れ、その向こうにある、新しい命に触れたかったんじゃないの?
涙が出て来た。
やっぱり死にたくない。
その時、大きなアラーム音が鳴り響いた。ゾンビ達が一斉にそちらに向かっていく。
警棒を手にした本庄さんが田中先輩の頭を思い切り殴る。
騒ぎを聞きつけた玄関のゾンビ達がこちらへ向かって来たが、本庄さんが再び警報ブザーを遠くへ投げた。
「もう大丈夫だ!」