表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/29

25 犠牲

 アタシ達は廊下の途中にある、大きな観葉植物の影に隠れて周囲の様子を伺った。 

 壁の至る所に血しぶきが付着して、割れたガラスも散乱している。校舎のあちこちにゾンビが蠢いており、時々、遠くから悲鳴や呻き声が聞こえた。

 きっと、校舎を閉鎖する間も無く感染者がなだれ込んで来たのだろう。

「本庄さんと正門前で落ち合う手筈になっていたんですが、これでは外に出られませんね」

 忌々し気に美緒が言う。

「美緒。脚、刺されたのに、走って大丈夫なの?」

「平気……ではありません。けっこう痛いです」

 刺し傷から血がドクドクと流れている。

「やばいじゃん。止血しないと」

「その時間はありません。一刻も早くここを離れましょう」

 脚を引きずりながら歩く美緒。廊下には血が点々と落ちていた。


 とりあえず玄関へ向かったけど、途中、至る所にゾンビがいて何度も進路変更をした。

 廊下を歩いて柱の影に隠れる、を繰り返しながら先へ進み、やっと1階フロアに辿り着いた。

 でも、そこにもゾンビの集団がいて、とても先に進める状態ではなかった。

「2階へ行き、避難用ハシゴを使って脱出しましょう」

 そう言った美緒だったけど、すぐに立ち止まった。

 前方に数体のゾンビがいる。

 口の周りを血だらけにしたそいつらが、こっちを見ている。先頭にいるのは田中先輩だった。

「……あいつ、まだ追いかけて来るつもりなの?」

 彼らはアタシ達を発見すると、唸り声をあげながら近づいてきた。

 ゾンビなんだから、目の前にいる人間に片っ端から噛み付きたくなる筈なんだけど、彼の行動には明らかな拘りがある。

 狙いは間違いなくアタシ。

 

「アオイさん逃げましょう!」

 そう言う美緒の顔色は真っ青。血を流し過ぎて立っているのもやっとなのね。

 アタシは彼女の腕を掴んで、近くにある警備員室の中へ押し込めた。

「な、何を!?」

「アンタはそこにいて」

「何を考えているんですかアオイさん?!襲われてしまいます」

 美緒がドアを激しく叩く。

「奴の狙いはアタシよ。ここで食い止めなきゃ、どこまでも追いかけて来るわ。アンタは逃げて」

「ダメです!ここを開けてください!」

「SPだろうと何だろうと、アタシと友達になってくれてありがとね。マジ感謝」


 ぞろぞろと群れをなして迫ってくるゾンビ達。

 先頭を歩く田中先輩がアタシを襲おうと、血で真っ赤に染まった両手を伸ばしてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ