21 混乱
ニュースを見て不安に駆られた学生が騒ぎ出し、大学の中では混乱が起き始めていた。
学生課や学務課の窓口には、特別休講の手続きを申請しようとする学生でごった返し、軽いパニック状態になっていた。
二人に会う事を諦めたアタシは、本庄さんの部屋へ戻るため大学の正門へ向かった。
その時、誰かに呼び止められた。
「アオイさ〜ん」
双葉が手を振ってアタシを呼んでいる。
「実はアオイさんに相談したい事があるんですぅ」
丁度良かった。アタシは双葉に駆け寄り、彼女の両肩を強く掴んで言った。
「ごめん。先にアタシの話を聞いて。信じられないかも知れないけど、これから大変な事が起こるの。すぐに家に帰って。部屋から出ちゃダメよ」
「ええと。私の相談というのはですね、これから一緒にドライブへ行きたいなと思いまして」
「ちょっと待ってよ。今のアタシの話を聞いていた?」
「まあ、そう言わずに」
ニコニコとしている双葉。突然、その背後に黒塗りの高級車が停車し、スーツ姿の男が降りてきた。
「え、え?ちょっと……なに?!」
腕を強く引かれたので、アタシは激しく抵抗した。
「大丈夫。ドライブをするだけですよー」
相変わらず笑顔の双葉。一体なにが起こったのかさっぱり分からない。
その時、横から美緒が走ってきて、男の一人を目掛けてタックルした。吹き飛ばされた男は路上に転がった。
そして美緒は警棒を取り出すと、アタシの方を掴んでいるもう一人の男の膝を思い切り叩いた。
「ぎゃあ」
彼は叫び、脚を抱えたまま蹲った。
美緒は間髪入れずに警棒を横スイングし、双葉の脇腹を狙う。が、素早く動いた彼女はそれを躱し、バッグを盾のように構えた。
鋭い視線で睨む双葉の顔は、いつもの穏やかな表情とはまるで正反対だった。
「あんた、やっぱり普通の学生じゃなかったのね?」
警棒を構えた美緒も睨む。
「そう言うあなたはK国の人間ね?この混乱に乗じてアオイさんを誘拐するつもりなのでしょう?」
双葉がアタシを誘拐?って、意味分かんないんだけど。
「大学へ戻ります!走って!」
「え?え?!」
美緒がアタシの手を握って走り出した。




