20 告白
すぐに本庄さんから連絡が来た。
「やあ。今朝はごめんよ。バタバタと出て行ってしまって」
少し照れ臭そうに話す。電話の向こうで頭をボリボリ掻いている彼の姿が思い浮かんだ。
「今日は緊急会議が続いて身動きが取れないんだ。大学は通常営業かい?」
「ええ。いつもと変わらず普通よ」
「君も知っていると思うけど、隣国が騒ぎになっていてね。その関連で振り回されているんだ」
「ゴメン。忙しいかもだけど、大事な話だから聞いてほしいの」
アタシは自分と幸子おばさんの見た予知のイメージを話した。
「その感染症、そろそろ日本に上陸する。噛まれた人が他の人を次々に噛んで行って、猛烈なスピードで増えるわ」
「……うむむ。そんなにすぐ広がるのか」
本庄さんは電話口で唸った。
「感染者が他者を噛むという情報はチラホラと聞こえていたけど、真偽が掴めなかったんだ。なにしろ、C国では情報統制が敷かれていて、感染症の詳細が何も伝わってこないんだ。WHOの管理官も慌てていたよ。調査員が現地へ乗り込んでいるはずなんだけど、連絡が取れないって」
「皇居なら長く籠城できるでしょ?今のうちにできるだけ食糧を集めて、警備を厳重にしておいた方が良いわ、重要な人をできるだけ地下へ……」
「分かった。上官に話してみる。君は僕の部屋で待っていてくれ。1時間後に着くよう迎えをやる」
「待って」
「うん?」
「凶暴な感染者が溢れて、混乱した社会になったとしても、アタシって必要とされる人間なのかな?」
「いきなりどうしたんだ?」
「アタシの霊能力って必要とされるの?」
「なぜ、そんな話を……」
「気づいたのよ。アタシが子供の頃に親から虐待されていたって知っているでしょ?その鬱憤や怒りの発散を悪霊退治に利用していただけなの」
話しているうちに、悲しくなって涙が溢れて来た。
「呪いや悪霊が蔓延する世の中だから、アタシみたいな者が役に立つんでしょう?だったら、社会がぶっ壊れて誰もいなくなったら、アタシの存在価値なんてなくなっちゃう」
「……」
本庄さんが黙った。その直後、大きな声で怒られた。
「バカ!霊能力なんて関係ない。僕は君が好きだから無事でいてほしい!それだけだ」
「こんなアタシの、どこが好きなのよ」
「歴代の偉大な能力者以上の力を持ちながら、偉ぶる事も調子に乗る事もなく、淡々と仕事に向かう君はカッコイイ!そんな君に僕は惚れたんだ!」
「そ、そうなの……?」
「例え君に霊能力がなくても、その飄々とした生き方にはシビれる。そして時折見せる笑顔もかわいらしくて好きだ」
「……バカ」
「過去は変えられないけど、未来は一緒に紡げる。だから、そんなこと言わないでくれ」
「……うん」
「必ず迎えに行くから、待っていてくれ」
「うん……あ、あのっ!」
「どうした?」
「アタシも好きだからね。本庄さんのこと」
「お……おう!」
照れ臭くなって、2人で笑った。