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15 将来

「ねえねえ。来年は3年生でしょ。アオイって就職どうするの?」

 図書館でレポートを書いていると、美緒が小声で尋ねて来た。

 アタシは返答に困って美緒の顔をじっと見つめてしまった。なぜなら就職なんて考えていなかったからだ。

 霊媒師になるという理由のみで上京するのもつまらないから、ついでに大学も受けたというだけ。だから、勉強した事を就職に繋げようなんていう志は無かったし、例の死生観というやつが邪魔して将来の事まで想像するなんてできなかった。

 だって、一生懸命に生きても、逆にダラけた生活をしても、どうせ最後には死ぬ。無事にあの世へ行けたらいいけど、もし未練を残したまま死ねば、魂だけこの世を徘徊するかもしれないもの。

 将来かぁ。

 ……ってなぜ本庄さんの顔がチラチラ現れるの?

 そっか。本庄さんのお嫁さんになれば、永久就職って事になるわね。


 美緒が興味津々の眼差しでアタシの答えを待っているから、適当にはぐらかそうと思った。

「……えっと、アタシは大学に残ろうかな」

「ふうん。って事は、大学院へ進むって事よね?」

 もちろん、いま思いついた事なので真剣な考えじゃない。

「そういう美緒はどうするの?」

「私はコンサルか、広告代理店に入りたいなぁ。金持ちのイケメンがいっぱいいそうだから」

 と言ってケラケラ笑った。

 

 就職のことで悩む時間の方が多くて、レポートの提出が遅くなってしまった。

 すっかり日が暮れて暗くなった帰り道、コンビニに寄ってサラダとスイーツを買ってマンションまでの道を歩いていると、背後から誰かの視線を感じた。早歩きすると、相手も同じようにスピードを早める。

 何よこの状況、怖いんだけど。

 スマホを取り出してマップを開く。えーと、近くに交番は……1kmも先じゃん。

 そういえば、アタシってば国の安全とかに少しだけ関わっている人間だから、安易に近づいてくる者には気をつけるように言われていたっけ。


 駆け足で進み、角を曲がった所で塀の影に隠れた。息を殺して謎の気配が通り過ぎていくのを待つ。

 見あげると、街灯の明かりに虫達が群がっている様子が見える。遠くの方から車の走行音が聞こえた。

 5分ほど身を隠して、そろそろ大丈夫かなと顔を出し、辺りを伺う。不審な人影は見当たらない。急いで家へ帰ろう。

 歩き始めた時、背後から肩を掴まれた。

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