14 直感
気がつくとベッドの上だった。
白っぽい部屋とカーテンの仕切り。右手には点滴。ああ、アタシってば病院に運ばれたのね。
何だか身体が重いので周りを見ると、ベッドに突っ伏して居眠りしている本庄さんがいた。
うとうとしている顔が可愛い。頭を撫でると、驚いたようにガバリと顔を上げた。
「ご、ご、ごめん。つい寝入ってしまった」
両手で顔をゴシゴシと拭く様子が子供のようで、つい笑ってしまった。
「君は貧血で倒れたんだ。もうあんな無理な戦いをしないでくれ」
「うん。ごめんなさい」
本庄さんは顔を真っ赤にして鼻の頭を掻いた。
「こ、今夜は大事をとって泊まっていくといい。手続きは済ませてあるから心配はいらないよ」
ベッドに置かれた彼の手を握ると、ドキリとしたようにこちらを向いた。
沈黙のまま見つめ会う。
その数秒後、シャッと開いたカーテンから安田さんが現れた。
「よう、姫。具合はどうかね」
右手に包帯を巻いた安田さんが籠に一杯のフルーツを掲げる。
「ほらよ。お見舞いの果物だ。これ食って血液ドバドバ作れ……」
彼はアタシ達の雰囲気を察して急にモジモジし、慌てて去っていった。
それから1週間ほど仕事の依頼は無く、平穏な日々が過ぎていった。
餓鬼の残した言葉が気になったアタシは、幸子おばさんに電話をかけて訊ねてみることにした。
「最近、地獄みたいなエグい白昼夢を見るんだけど、餓鬼を退治したときにも同じものを見せられたの」
「ちょっと待ってよ。アンタ、餓鬼とやりあったの?」
「こないだ初めてボコったわ。楽勝って訳にはいかなかったけど」
「あたしゃ気をつけるように言ったじゃないか。最弱といえども鬼は鬼なんだから、喧嘩売っちまうなんて無謀だよ」
おばさんのため息が聞こえた。
「アイツを倒した時に、病がどうたらとか俺たちの時代が来る的な事を言っていたから……気になって」
「うーん……ひょっとすると、餓鬼の言ってたのは予言で、アンタが見たのは透視か予知かもしれないねぇ」
「そんなすっごい能力、アタシにあったっけ?」
「東京で派手に仕事をしているんでしょ?経験値が上がったんじゃないの?あんたってばミュータントだから、ついに未来視の能力が開花したのよ、きっと。……知らんけど」
「えっ?ちょっと師匠。ちゃんと教えてくださいよぅ」
「そう言われてもねえ……あたしだって、予知とか予言なんか見たことないし、電話で説明されても、いまいちイメージが掴めないわ。でも———」
「でも?」
「自分の直感は信じた方がいいわよ」