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1 霊能

 アタシが5歳くらいの頃なんだけど、気がつくと病室で寝ていた事があったの。

 身体中を包帯で巻かれていて、少しでも動いたら痛かったし、体中に管とかコードがいっぱいくっついていた。

 腕と足と肋骨が折れて、意識不明で7日も起きなかったってお医者さんが言ってた。


 意識が無かったといっても、眠っている間のことは何となく覚えている。

 暗闇の中で、柔らかくて優しい光が見えて、それを抱きしめたいと思って一生懸命手を伸ばしていたの。

 ああ、これって天国への入り口なのね。もう少しで届きそう……ってところで、目が覚めてしまったのよ。


 入院していている間、婦警さんがアタシの話を聞きたいって果物を持って来た事があった。その時、初めてイチゴを食べたんだけど、美味しかったなあ。アタシってば単純だから、気分が良くなって両親の事を喋ったの。

 毎日、殴られていますって。

 

 親はアタシの事を「気持ち悪い」とか「悪魔の子だ」と言って嫌っていた。

 アタシが視える人間なのが気に食わなかったみたい。

 そう。物心ついた時から、あっちの世界の連中と(つる)んでいる事が多かったの。

 部屋の天井に浮かぶどっかの爺ちゃんとか、人語を話す二又(ふたまた)しっぽの猫とか、なぜかアタシの所にそういう人達が集まって来るから、自然に遊ぶことが多くなったというわけ。もちろん、それが幽霊だなんて思っていなかったわ。

 親はそんなアタシのことを「躾だ」なんて言ってゲンコツで殴っていた。ウチの由緒ある家柄に頭のおかしい人間はいらない、とも言っていたわ

 でも、躾が暴力に発展するまで、さほど時間はかからなかった。

 で、蹴られたり殴られたりして、瀕死の重傷を負っているところを児童相談所の人に発見されたの。


 それ以来、両親とは会っていない。

 二人とも逮捕されて塀の中へ入ったと聞いたけど、それ以上の詳しいことは誰も話さなかった。まあ、知りたいとも思わなかったけどね。

 その後、アタシは施設で過ごした。

 理不尽に怒る大人がいないというだけで快適だったわ。でも、人間の友達はあまりできなかった。だって、幽霊と喋ったり遊んだりしている子なんて不気味じゃん。きっと、虐待で精神を病んでいると思われていたんだろうな。


 小学校2年生くらいの時、いつものノリで道端に立っている真っ黒な人に声をかけて遊びに誘った。でも、よく見ると身体中に目があって、大きな口から長い舌がダラっと垂れ下がっていたの。

 今なら、こいつヤベーやつだと分かるんだけど、当時のアタシはピュアだったから何にも思わなかった。

 すると、そいつ急にデカイ口を開けてアタシを喰おうとした。

 ビックリして硬直していると、近所に住む幸子おばさんが助けてくれたの。悪い霊の気配がして来てみたらアタシが喰われそうになっていたから慌てて祓ったんだって。

「あんた名前は?」

「アオイ」

「誰にでも声かけちゃダメだよ。特にああいう怨念はタチが悪いんだから」

「へえ、あれってオンネンって言うんだね」

「自覚無かったのかい?あんたは霊能者だよ。しかも、めちゃくちゃ能力が高い、ほとんどミュータントレベルの人間だ」

 彼女も見える人で、会った時からアタシの事が分かったんだってさ。

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