第1話「異世界への甘い招待状」
初投稿です!
毎日11時、15時、18時で更新予定です(^^ゞ
温かい目で見守っていただけると幸いです<(_ _)>
「もう限界だ……」
日本の片隅にある小さなケーキショップで、パティシエの夏川翔太は、ふとつぶやいた。ここ数年、彼の店は繁忙期も閑散期も関係なく、売上が低迷し続けていた。かつては地元で愛されていたこの店も、最近では通りを歩く人々からほとんど見向きもされなくなっていた。
翔太は疲れ切った表情で、棚に並べられたケーキたちを見つめた。完璧に仕上げられたショートケーキやチーズケーキ、そして新作のキャラメルムース。見た目も味も自信があったが、どうしても客足が伸びない。悔しさと無力感が心の中で渦巻く。
「もう、やってられないな……」
そう思いながら、カウンターの奥にある小さな部屋へと戻り、疲れた体をソファに沈めた。窓の外を見ると、夕暮れの柔らかな光が街を包んでいる。静かに流れる時間の中で、翔太はまどろみ始めた。
——その瞬間だった。
目を閉じた次の瞬間、急に体が軽くなり、まるで宙に浮いているような感覚に襲われた。そして、目を開けると、見知らぬ景色が広がっていた。青空が広がり、草原が一面に広がっている。
「ここは……どこだ?」
翔太は目をこすりながら立ち上がった。自分のいた部屋は消え、代わりに見たこともない風景が広がっている。草原の向こうには、石造りの街並みが見える。
「もしかして……異世界に?」
パティシエでありながら、ファンタジー好きの翔太は、その瞬間に理解した。これはただの夢ではない。まさに、異世界に飛ばされたのだと。
「どうやって戻ればいいんだ……?」
途方に暮れる翔太。しかし、その時、彼の足元に何かが落ちてきた。それは小さなメモ帳のようなものだった。表紙には「パティシエのスキル書」と書かれている。
「スキル書? なんだこれ……」
疑問を抱きながらも、翔太はページをめくってみると、中には「基本スキル」「上級スキル」「伝説のスキル」といった見出しが並んでいた。さらに、それぞれのスキルには、材料や調理法が細かく記されている。
「これ、まるでゲームみたいだな……」
興味をそそられた翔太は、試しに「基本スキル」のページを読み進めた。そこには、「魔法のショートケーキを作る方法」が書かれている。材料には普通のものに加え、「風の精霊の粉」や「甘露のハチミツ」といった、見慣れない素材が記されていた。
「どうせなら、やってみるか……」
翔太は、周囲を見渡してみた。すると、奇跡的に近くにベリーの木や、流れる清らかな小川が見える。手元の材料も不思議と揃っており、翔太はさっそく手を動かし始めた。
まず、風の精霊の粉を小麦粉と混ぜ合わせ、軽やかな生地を作る。触るとふわりと風を感じるような感覚が手に伝わってきた。次に、甘露のハチミツをクリームに混ぜ、甘くとろけるような味わいのクリームを作り出す。その香りだけで、周囲に漂う風が一瞬止まったように感じられる。
「すごい……これが、異世界のスキルってやつか?」
驚きながらも、翔太はそのままケーキを仕上げ、目の前に完成した「魔法のショートケーキ」を見つめた。見た目は普通のケーキだが、その香りと気配は異世界ならではのものだ。
「これ……食べてみたいな……」
その時、後ろから足音が近づいてきた。
「ん? 誰かいるのか?」
振り向くと、そこには若い女性が立っていた。彼女は目を輝かせながら、翔太が作ったケーキをじっと見つめている。
「あなた、もしかして……このケーキを作ったの?」
「え? ああ、そうだけど……」
翔太は不安そうに答える。すると、彼女はにっこりと笑った。
「私はリリィ。この街でカフェを開こうとしているの。でも、どうしてもケーキの作り方が分からなくて困っていたのよ! あなたの腕前、すごいわね!」
「カフェを……?」
翔太は一瞬驚いたが、すぐに自分が異世界にいることを思い出し、状況を理解した。
「もしよかったら、私と一緒にカフェを開いてくれない? きっと、あなたのケーキならお客さんがたくさん来るわ!」
リリィの提案に、翔太は迷った。しかし、今の彼にはこの世界で生きるための手段が必要だ。そして何より、ケーキ作りに自信を取り戻すための新しい挑戦が欲しかった。
「わかった。俺もカフェを手伝うよ。でも、俺はパティシエだから、ケーキ作りは任せてくれ」
「もちろんよ! よろしくね、翔太!」
*****
こうして、異世界での新しい生活が幕を開けた。リリィと共に開くカフェで、翔太は異世界の素材を使った新しいケーキ作りに挑戦し、やがてその腕前が評判となっていく——。
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