第四十二話 貴族
あれ? おかしいな……
この金髪。
さっきまで他の生徒たちと笑顔で楽しそーに喋っていたはずなのに、俺が話しかけた途端、ゴミを見るような目で俺を見やがった。
「身の程を弁えろ、虫ケラの分際でこの僕に触るな、話しかけるな、僕の視界に入るな。僕はお前のような無礼な男が大嫌いだ」
あ、なるほど。俺コイツ嫌いだ。
「いきなり失礼じゃないか? 無礼って言ったって俺は君とは初対面だし、俺は君の名前も知らないんだけど?」
俺がそう言うと、彼は不機嫌そうにしながらも、長い前髪をキザに払い、それと同時に女子たちが黄色い声をあげる。
「全く……しょうがないから一度だけ名乗ってあげよう。僕の名はサック・ユービ。ユービ大公爵の一人息子で、いずれ大貴族の地位を手にする選ばれし人間だ。平民、首を垂れてつくばえ」
うん……初めてあった頃のルナといい、どうしてこの国のお偉い方はこうも高慢なんだ……
いや、ルナはまだいい。
今は仲直りできたと思うし、最初にこんな関係になってしまったのは俺の責任でもある。
しかしコイツは、俺のことを根本的に見下してやがる。
まるで絵に描いたような悪徳貴族だな。
だがここで俺がこのまま感情のままにコイツの顔面に拳をお見舞いしても、後でいいことにならないのは目に見えている。
だからこそ、ここは大人しく。
「大変申し訳ありません。俺はこの国の外から来た者であるので、あなたのことは存じ上げておりませんでした」
深く頭を下げておとなしく謝罪しておいた。
まぁこうしておけば、少なくとも後々面倒なことには――
「全くどういうことだ? 王族にため口をきく愚民と聞いてどんな奴かと期待していたのに、この様とはな」
「……へ?」
どういうことだ?
コイツがさっき話していた内容から察するに、俺を元から知っていて、まるで俺を試していた、ということか?
「それは一体どういう……」
「お前には失望した。もう僕に話しかけてくるんじゃない」
奴はそれだけ言い残すと、取り巻きの女子たちを連れてどこかへ去って行ってしまった。
何故だろう? 初日で嫌われ、何もしていないのに失望され縁を切られた。
え? これは……俺のせいじゃないよな。




