第三十五話 天人
ルナは顔を真っ赤にして俺をにらみつける。
「じゃあその理由を言おう。まずそもそもこの国の民でもない俺には、お前に従う理由がない。あとその常に偉そうに上から目線な話し方がムカつく。最も重要なのは俺にロリコン属性はないということだ。守備範囲外のお前に従おうとは思わないいかな」
このルナとかいうお姫様。
見た目のわりに大人びてはいるものの、年上属性の俺には彼女は刺さらなかった。
「ロリって……私はもう十四歳なのよ!?」
「悪いが俺は十七歳だ。俺に偉そうな態度をとりたいなら、俺よりも年上になってから出直すことだ。まぁ一生無理だろうがな!」
俺は高らかな笑い声をあげた。
「ユウジ、そろそろ王女様泣きそうだぞ。首が飛ぶ前にやめとけ、物理的に」
「それもそうだな、ハハッ……」
さて、話を戻そう。
「なるほど……。じゃあサキは教会のせいで、この世界での記憶に抜けがあるのね……」
王女様にサキが王女様のことを覚えていない理由とその経緯を説明し、彼女はこの状況を理解してくれた。
「そうなんです。俺たちは元の世界へと帰るため、そしてサキの記憶を取り戻すために各地を冒険しに出たんです」
「やっぱりあなたたちも世界樹を目指しているの?」
「あなたたちも」という反応からして、以前にも世界樹を目指していた者たちがいたのだろうか。
王女はレイジのその言葉を聞いて。
「やめておきなさい」
と、即答した。
「それでも、俺たちは――」
「無理よ」
王女はレイジが反論しようとしても、俺たちの意見を頑なに否定した。
「おいおい、そこまで言うことは――」
「あなたはどうして教会が世界各国から恐れられているのか知っている?」
「いや、そこまでは……」
今までガルムに聞かされてきた教会についての情報は、殆どが漠然としたものだけだったため、正直俺たちは協会について詳しくは知らない。
ガルムははたから見ればただの獣なため、町や村などには入れず、情報は限られているらしい。
「教会の兵は総勢六万、対して私たちの国『ヴェスパーニア』の兵は総勢十万。それに加えて強力な殲滅魔法を行使する魔法師団もいるから、数や兵力だけで見れば我が国の方が圧倒的に有利。でも今教会と戦えば、私たちは滅亡する」
正直、王女様に言っていることが理解できなかった。
二倍近くの兵力があって負けるなんて、普通は考えられない。
「教会の主戦力は『七天人』と呼ばれる七人の幹部」
「七天人……って、もしかして……その内の一人は『マモン』ってやつじゃないのか?」
俺の口からその名を聞いた瞬間、王女様は表情を強張らせる。
「もしかして……遭遇したの?」
「ん? ああ、まぁ。んで撃退した」
「はぁ!?」
突然の王女の驚きから発せられた高音が、俺たちの耳をつんざいた。
「そんなに驚くことかよ? 耳の奥がキーンってなったぞ」
「驚くも何も……彼は七天人ではありませんが、かなり特殊な位置にいる教会の重要人物よ? その能力はあまり知られていないけど、何か特殊な力を使って、今まで三つの国を一人で滅ぼした危険人物なのよ?」
嘘だろ、あの変なおっさんがかよ……
内心信じられないなと思いながら、俺たちがソイツをどうやって撃退したのかを説明してみたのだが。
「なるほど、マモンの力は感情や意志を他人と共有、それを共鳴させることで増幅させて、敵の脳を破壊する……。それをあなたたちは逆手にとって、希望という感情を増幅させた……。よくそんなことができたわね」
あの時はなんでもないことだと思っていたが、アイツの危険性を聞いて再び考えてみると、本当によくそんなことができて、生き残れたものだなと思った。
「まぁこの話はここまでとして……。とりあえず、商品の弁償は私がしてあげる。その代わり……サキ、あなた魔法学院
へ戻る気はないかしら?」




