第三十二話 何かの割れる音
「見えたね」
「うん、あれが……」
「魔導王朝ヴェスパーニアの首都、『ヴェスパニア』」
魔導王朝ヴェスパーニア。
面積はこの世界の国の中でも小さいながらも、魔法という特殊な力の研究が盛んな唯一無二の国。
目の前に見える首都のヴェスパニアはまるで某ポッターの魔法学校のような城を中心に城下街が作られており、しかもあの城は王家が住むというだけでなく、魔法を学ぶための学校としての機能も備えているらしい。
自然と一体化することで、より強く魔法の力を受け入れることができると信じられていて、遠くから見た感じ、都市全体が苔やツタに覆われている。
まさにこれぞファンタジー世界と呼ぶにふさわしい光景だ。
「じゃあ行ってみるか!」
俺たちは目的地へ向けて歩き出した。
*
街の入り口にたどり着き、そこで見た光景はまさに夢のようなものだった。
映像のように動く新聞や文字、自動で掃除をする箒やひとりでに動き出す調理器具。
そして、街中を歩く人々は全員ローブを身にまとい、腰にはそれぞれ形の違う杖を携えていて、まるでファンタジー小説の世界にでも迷いこんでしまったかのような感覚だった。
「今俺かなり感動してる」
「同じく……」
感激して立ち尽くす俺とレイジに対して、過去にも来た記憶のあるサキは、どこか懐かしそうな表情で城の方を眺めていた。
何か思うことがあるのだろう。
今はそっとして──
「すごい……すごいですわ……! なんですのこれ!?」
何やら騒がしいと思っていたら、久世お嬢が露店のよく分からない怪しい商品を見て興奮していた。
せっかくの雰囲気を……
「光った! 光りましたわよこれ!」
「お嬢様、危険です。危ないものかもしれないのでまずは私にお渡しください」
いや自分が先に遊びたいだけだろ!
そうじゃなくて森野、お前はお嬢を止めろ。
こんなところにきて早々物を壊したとかシャレにならねぇぞ?
そんなことを思っていたその時──
ピキッ……
「あっ……」
何かが割れたような音がして振り返ってみると、あの二人が持っていた何かの道具が地面に落ちて粉々に砕け散っていた。
「何してくれとんじゃお前ら!」




