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第三十話 一滴の濁った朝露

「それでは皆さん! お元気で!」

「頑張って下さい!」

「死ぬなよ、小僧!」

「ああ、必ず帰ってくるからな!」

 巨大な熊の背の上に乗って、離れてゆくみんなに向かって、精一杯に手を振る。

 そしてしばらくして、あれだけ大きな巨大熊の背も小さくなっていった。

「これでしばらく、あいつらともお別れか……」

 心に穴が開いたようで、寂しさがめぐる。

「大丈夫よ。きっとまたすぐに会える」

 サキの言葉に俺は小さく頷いた。


「さてとお前ら、冒険に出る準備はできてるか?」

「当たり前よ!」

「そうじゃなきゃここにはいないって」

「ワタクシはいつでも準備万端ですのよ」

「久世お嬢様と同じく」

「……うん!」

 それぞれはそれぞれの想いでここにいる。

 改めて見てみると、天才野郎とおてんばスナイパー、どこぞの金持ちパワフルお嬢と自称完璧メイドに限界人見知り少女。

 いや余りにも異色すぎるパーティー編成ではあるけど、これはこれで面白そうじゃないか。

「それじゃ……行こうか!」

 俺たちは、楽園のみんなとは反対方向に歩き出した。

 元の世界へ帰るため、世界樹を目指すため──

「そういえば、行き先はそうするんですの?」

 お嬢が俺に聞いて気が付いたが、そう言えば行き先を伝えていなかった。


     *


 俺的には、このまま世界樹を目指そうと思っていたんだが──

 あれは昨日のこと。

「だめだ」

 ガルムにそのことについて聞いてみたのだが、断固反対された。

 いわく、世界樹の根本には『神聖法皇国ヘルメシア』、つまり神聖樹教会の本拠地があるので、絶対に行ってはならないとのこと。

「そこでお前たちの行き先として、勧めたい場所があってだな……。お前たちはどうやら魔法を使う素質があるらしい。魔法というのは強大な力、故にそれを使えるかどうかで、その先の旅が大きく変わってくるだろう。だからこそ魔法を習って来い」


「国の名前は『魔導王朝ヴェスパーニア』、魔法使いの国だ」


     *


「はぁ……私も正直、付いて行きたかった気持ちはあるんですけどね」

 出発してからしばらくして、委員長ははるか後方を見つめながら呟く。

「いえ、私は私のやるべきことをやらなければ!」

 彼女の役目は、このクラスのみんなを導くこと。

「あの六人が抜けて寂しい気持ちはありますが、それでも私は……」

 彼女は雑談で盛り上がるクラスのみんなを眺めてふと、異変を感じた。

「抜けたのは六人でしたよね……。七人いない……?」


 その頃、久々に任務に失敗して機嫌の悪いマモンは、教会の基地の一室で酒を嗜んでいた。

「全く……あのクソガキども。私の力をあんな方法で……」

 ふと、外が騒がしい。

 マモンはうるさいのが嫌いだった。

 ただでさえ機嫌の悪い彼は、部屋から飛び出して外へ出る。

「一体何事だ! 何を騒いでいる!」

 怒りの感情はそれを見た瞬間、驚きと動揺に変わった。

「お前は……あのガキどもの──」

「よう、俺を仲間にしてくれよ」

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