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第二十七話 共鳴と反響(2)

「何が慈愛だ。支配の間違いじゃないのか?」

「まだそんな戯言を言うような胆力が残っていたのですか? けれど貴方ももうわかっているはずです。今の状況がどれ程あなた方にとって不味いものなのか。私の能力は『共有』、この世界はあまりにも不平等です。自身が欲するものを他人が持ち、自身が放棄したいものは他人が欲しているもの。感情もそのうちの一つ……。だからこそ、私はそれらすべてを皆で分かち合おうと考えました。今貴方たちの体に流れている感情は全てこの場所にいる住民達のもの……。さぁ! 分かち合って下さい……! 恐怖を、絶望を……! そして感情は反響し、より強い感情となる……! みんなのために、そして私のために……!」


 何故だろう、なぜ俺はこんなふざけたやつに恐怖しているのだろう。

 今すぐに起き上がって、その口をふさぐついでに殴り倒してやりたい。

 しかし段々と気力と体力が削がれ、言い表すこともない絶望感が俺を襲う。

 このままだと、俺たちはどうなってしまうのだろう。

 ああ、想像するのが怖い……

 目を瞑ろう。

 見るのも怖い。

 聞くのも感じるのも、すべてが怖い。

 目を閉じてもそこに広がる暗闇が怖い。

 今すぐここから逃げたい。

 そしてこの恐怖から解放されたい。

 そうなれば、どれ程幸せなのなのだろう。

「俺は……もう……」

「ダメ。そんなこと……ない」

 暗闇の奥底から、一筋の光が見えた。

 それは閃光の如く真っ直ぐに突き進み、闇を切り裂いてゆく。

 ハッ、と視界が開け、そこに見えたのは拳銃を構えた乙女の姿。

 銃口からは細い白い煙が立ち上り、その先では左肩から血を流したあの男が、傷口をおさえてうずくまっていた。

「サキ……」

「なっ……! 何をするかっ! サキよ……なぜ恐怖しない……。 怖くはないのか……!」 

「怖い。確かに怖いよ。今だって本当は頭を狙ったはずなのに、だいぶそれちゃった。でもね、誰かが恐怖を感じているんだったら、何かを恐れてうずくまっているのなら、誰かが立ち上がって手を差し伸べてあげなくちゃならない。前は私が手を差し伸べてもらった……。だから……今回は私の番!」

 そしてその一瞬、体の奥底から体温が上がり、不思議な安心感と勇気を感じた。

「フンッ! ま、まぁいい……。たかが一人……それにお前は足も震えているじゃないか! やってしまえ!」

 マモンの合図とともにどこからかともなく白いローブを身にまとった僧兵がサキに向かって襲い掛かる。

 それらを順番にサキは撃ち落としていき、再びマモンに銃口が向けられようとした直前――

 背後からナイフを携えたもう一人の僧兵が襲い掛かる。

 サキはそれに気づくも、間に合いそうにない。


 でも――

「もう大丈夫だ。俺は……」

 不思議と足が軽い。

 さっきのドラゴン討伐での疲労もあって、全身が痛い、そして怖い。

 それでも、それでも不思議と動ける。 

 動かなくちゃならない、今――!

「ハァアアアアアアッ!!」 

 力を込めて振りかざした俺の一刀はサキの背後の敵を切り倒す。

「俺は諦めねぇよ! 怖くても痛くても、それだけで俺は倒れない……!」

「なっ……! 貴様もかぁあああ……!」

 マモンはこの状況に動揺を隠しきれず、目に見えるほどの多量の冷や汗を流しながら、ただ何もすることができずにその場で立ち尽くす。

「っ……! かっ、かかれぇ!」

 マモンのその合図と共に、今度は十人程の僧兵が俺たちに向かって襲いかかる。

「いいのかよ? 確かお前の能力は感情とかの共有なんだろ? だったら──」

 そして、その僧兵の殆どが振り回された槍と、鋭い爪によって切り裂かれた。

「本当にすごいね、やっぱり君たち二人は」

「ああ、私も今回は少し危なかったかな」

 ガルムとレイジ、そしてそれに加えて――

「ユウジ君、助かりました」

 委員長を先頭にクラスメイトのみんなが。

「無事だったんだな!」

「あら、無事ではいけませんか?」

「はは、安心したよ」

 似合わない彼女のジョークを聞いて、なんだかとても心強かった。

 これでもう、心配事はない。

「さぁ、かかって来いよ! たとえ次何をしてきても、俺たちは……乗り越えてみせる……!」

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