第二十五話 祓魔師
「はぁ……はぁ……」
木と木の間を潜り抜け、草をかき分け、あの連絡からしばらくしないうちに俺たちは楽園へと帰還した。
「っ……! マジかよ……」
「ひどいな……これは……」
そこに広がっていたのはまさに惨状と言えるような光景だった。
あの美しかった楽園の木々は焼かれ、動物たちの住処は無残にも破壊されていた。
そして――
「おい、あれは……!」
視線の先には純白のローブを身に纏い、槍を携えて楽園を荒らしまわる者たち。
レイジから話だけは聞いていたが、その特徴からあいつらが何者なのかはすぐに分かった。
「神聖樹教会……!」
「嘘、どうして……」
目の前に広がる衝撃の光景に、俺は言葉を発することができなかった。
けれど……
「今は驚いている暇はないな。きっとみんなはどこかに避難しているはず」
「それなら、中央の大岩の周りじゃないかな。あそこにはロギアさんもいることだし……。とりあえず行ってみよう」
「……」
しかし、俺とレイジが走り出しても、サキは下を向きその場に立ち尽くして動こうとしない。
「サキ! おい、サキ!」
呼びかけても反応のないことから、俺はサキの腕を強く引っ張り大きな声で呼びかけると、サキは「ハッ……」と我に返った。
「確かにこの光景を見てショックを受けるのは仕方ない。けど今は、ただ絶望している場合じゃないんだ。今は俺たちができることをやろう」
サキは俺の言葉に、ただ首を縦に振るだけだった。
「おお、お前たち!」
大岩の前で俺たちを待っていたのは、ガルムだった。
「ガルム、これは一体どういうことなんだよ」
「教会の襲撃だ。まさかこの場所がバレるとは思わなかったが……」
「ほかのみんなはどうしたんですか?」
「安心しろ、非戦闘員の奴らはお前の仲間も含め、ロギア様のおられる精霊の御所にて匿っている。一部の志願者は、教会を足止めするために向かっているがな……」
俺は胸をなでおろした。
「それはそうと……」
その時、背後からゾッとするような気配を感じた。
「何者だ? お主」
ガルムの問いに対して聞こえたのは甲高い男の声。
「そう言うアナタはどちら様なのでしょう? まずは自分から名乗るのが礼儀というものでは?」
「ふん、名乗る程のものではない」
振り返るとそこにいたのは一人の長身の男。
スーツのような服を綺麗に着こなし、紳士的な装いで、第一印象は礼儀正しい貴族のような男だった。
縦長の顔はシルクハットで隠れ、全てを伺うことができない。
「私は神聖樹教会、祓魔師のマモンと申す」
彼はそう言って、裂けそうな程に口を横に開いて笑いかけた。




