第二十四話 襲撃
「あの三人、大丈夫でしょうか」
楽園のとある広場。
そう言って危険生物の盗伐に向かったという三人を心配しているのは、クラスメイトの一人でありこのクラス随一の金持ちお嬢様である久世露。
「心配ありませんよ」
そしてその隣で、非常に落ち着いた態度で無表情な黒髪ロングの女子の名は森野恵、久世お嬢様専属のメイドである。
まるで空想のような設定の二人だが、実際にそうなのだから仕方がない。
「なにせ、気合ド根性鋼の精神力のユウジさん、奇跡の天才と呼ばれるレイジ様、この世界で最も長い間経験を積んで、この世界の常識にも精通している安心のサキさん。このメンバーなら、基本何があっても大丈夫だと思いますよ」
「そうだといいんですけどねぇ……」
と、とても心配するようなことを口にしている彼女だったが、落ち着いて暖かい飲み物をたしなんでいて、行っていることと行動がまるで合っていなかった。
「ん? 何でしょうか? 外が騒がしいですわね」
急に多くの動物たちが鳴き始め、肉食系の動物たちが慌ただしく動き回っている。
そしてその時、扉が開いたかと思うと、鬼気迫った表情でガルムが入ってきた。
「あら、ガルムさん。どうされましたの?」
「大変だ……! 教会が……神聖樹教会の襲撃だ!」
ガルムはその後、クラスメイトを引き連れ、楽園の中央の大岩へ向かった。
「サエさん、みなさんご無事でしたか」
「ロギア様……」
そこには、精霊であるロギアが怪我をした者の治療を行っていた。
「ガルム、状況はどうなっていますか?」
「ただいま私の部下たちが交戦中です。しかし、相手の数が多く、あまり長くはもたないかと……」
二人の表情は暗く生徒たちから見ても、あまり状況がよくないということが一目で分かった。
「なぜこの場所が…。数百年以上、この場所が明らかになることはなかったのに」
その会話を聞いて、早水紗枝の脳内には一つの考えが浮かんだ。
「もしかして、私たちが原因なのでしょうか」
そう、それしか考えられなかった。
以前協会と接触し、さらに協会に所属していたサキを連れてきたのは自分たちであり、今回協会にこの場所がばれたのも――
「はい、おそらくそれ以外考えられないでしょう」
「っ……」
「ですが……」
ロギアは下を向く紗枝に近づき、その細い手で彼女の頬に優しく触れた。
「分かっています。これは決してあなたたちが望んだことではないということ、そして今回のことについて、あなたたちは何も知らなかったということ。私はあなたたちを責めません。しかし……きっとそれでは、あなたたちの気が収まらないのでしょう?」
早水紗枝は理解した。
なぜこの人物が多くの者に慕われているのか。
それは彼女が持つ純粋な優しさだけではなく、聡明で賢くて、そして何より人を疑おうとはしない。
この前彼女がサキに強く迫ったのは、きっとサキの覚悟を確認するためだったのだろう。
「はい、私たちにも何かさせてもらえませんか? 故意ではなかったとはいえ、この事態を招いたのは我々です。だからこそ、少しでも罪滅ぼしをさせてください……!」
早水紗枝は力強くそう言い切り、周りの生徒たちもそれに賛同するように首を縦に振った。
「では……少しの間時間稼ぎをお願いします。教会の僧兵がこの場所に近寄れないようにしてください」
*
「楽園にはあとどのくらいで着くの?」
「あと二十分かからないくらいかな。てかいい加減降りろって」
「功労者を労いなさいよ」
楽園に帰還中だった三人だったが、途中でサキがおぶってと言い出したので、仕方なく背にサキをかついでいる。
なんでも魔力を消費するととんでもない疲労感に襲われるらしく、サキはさっきの魔法のせいでこうなってしまったらしい。
「てか功労者って……俺たちは功労者じゃないってのかよ? 」
「アタシの攻撃でドラゴンを倒せたんだから、アタシが一番の功労者でしょう?」
いやそれまでの間時間稼ぎしたのは俺たちだろうが……
それにそんなに功労者っていうくらいなら、もっと早くあれを撃ってくれないかな……
「ん……?」
その時突然、耳鳴りのような音が聞こえた後、どこからか委員長の声がした。
「これは……委員長の情報網……」
「「「…………」」」
「早く楽園に戻った方がよさそうだね……」
「ああ、急ごう!」
「うん……!」




