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第二十三話 背教者狩り

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「ケホッ……。っぶねぇ……」

 俺は何とか落ちてきたドラゴンの巨体に押しつぶされることなく、生きていた。

「間一髪、間一髪だよホント……」

 ふと後ろを振り返ると、あのドラゴンは仰向けに倒れてピクリとも動かなくなっていた。

「だ、大丈夫か?」

 そして土埃の向こうから、土ぼこりをかぶってボロボロの状態のレイジがヨロヨロと出てきた。

「安心しろ、多分お前よりかは無事だ」

「そ、そうか……」

 

 しばらくして――

「ユウジ! レイジ! 大丈夫だった?」

 どこかへ行っていたサキが、森を抜けて戻ってきた。

「「…………」」

「どう? アタシ自慢の狙撃(スナイパー)技術は」

 ヘラヘラと笑いながら駆け寄ってきたサキに対して、何というかすごい腹が立った。

「どうじゃねぇよ! 死ぬかと思ったわ! ちゃんと下に人がいるかどうか安全確認しておけよ!」

「なっ、何よ! アタシがいなかったら、アンタ今頃黒焦げだったのよ!」

「今のでたたき肉になるところだったわい!」

「はいはい二人とも、そこまでだよ……」

 この時、一番満身創痍だったのにもかかわらず、俺たち二人の口喧嘩を止めていた、レイジはものすごく萎れた顔をしていたのは記憶に残った。


「ま、まぁいいじゃないか。結果的に助かったんだし……。それよりも……っ、サキ、さっきのは一体何だったんだい?」

「えっとねぇあれは……。簡単に言ってしまえば、魔法って呼ばれているものね」

「魔法……」

 俺は「魔法」という言葉を聞いて、俺はあることを思い出した。

 楽園へ行くため、その周りの霧を抜けている最中、この魔力を含んだ霧は魔法を使えない者にとっては毒であるとガルムから聞かされた時、サキが「私たちは魔法が使えるから問題ない」と言っていた。

「そう、魔法。私たち日本人……というか地球人には魔法を使うことができる力があるの。さっきのは私が放った銃に対して魔力を付与して放ったものなの」

「へぇー、そんな力がサキにあったなんて……。えっ、だったら俺もそんな力が使えたり?」

「うーん……まぁ多分?」

「よし、じゃあ先生よろしくお願いします」

「決断早くない? それに私はあなたに魔法を教えてもいいなんて言ってないわよ」

 と、きっぱり断られた。

 まぁ後から知った話なのだが、魔法を習うにはある場所で特別な手順を踏む必要があるらしいから、サキから断られたらしい。

「まぁ、いいや。あんまり俺には似合いそうにはないし……」

「そんなことより、早く帰って休まないか……?」

 そう満身創痍のレイジが言ってきた。

 レイジの祝福はものすごい才能を引き出せるものではあるが、自身の肉体の強化自体はできないから、スタミナが課題というのが、この前の修練で判明していた。

 いくらスポーツマンとはいえ、さっきの超人的な動きを長時間続けるのは、身体に中々の負担がかかってしまうのだろう。

「じゃあ目的も果たしたことだし、帰るとしますか」

 俺たちは最後にドラゴンの生死を再確認した後、その場を後にした。


     *


 濃い霧のかかった森の中を、白いローブを羽織った者たちが隊列を組んで突き進んでゆく。

 誰も一言も言葉を発することはない。

 否、許可されていないのだ。

 その人は騒がしいのが嫌いだった。

 部下たちはあくまで駒であり道具。

 それ以上でも以下でもない。

 自身の指示通り動くこと以上に、求めることは何もない。

「偵察隊、ただいま帰還いたしました」

 霧の中から気配を気取られぬよう、三人の白装束が現れ、集団の中心にいるある一人の人物に跪く。

「やはりこの先に……」 

「そうですか、それはご苦労様です。隊列に戻りなさい」

 柔らかい物腰、穏やかな口調、紳士的な立ち振る舞い。

 しかし、その優しそうな微笑みの下には、常人には到底理解しようのない狂気が潜んでいることを、彼の部下たちは知っていた。

 部下の一人が、その長身の男に尋ねた。

「マモン様、どうなされますか?」

 そして彼は両手を天に掲げ、部下たちに告げた。

「では……行きましょう。法皇の命に背く愚か者、背教者狩りの時間です」

 

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